おおさかナウ

2025年09月27日

大阪・関西万博建設費未払い
施工業者が語る現場で起きていたこと

 

開幕3週間前なのに基礎の土台もなく
食事もままならず仮眠取りながら工事
それなのに契約不履行とされ未払いに

高関千尋さん

高関千尋さん

 大阪・関西万博で相次いで発覚している海外パビリオン建設費の未払い問題。政府の発表によると、国、大阪府、万博協会に、未払いの相談があったパビリオンは計11に上ります。問題解決、被害者救済が進まない中、「建設現場で何があったのかを知ってほしい」と、名乗りを上げた施工業者がいます。「事務局J0K(ジェイゼロケイ)株式会社」社長の高関千尋さん(56)に話を聞きました。

 高関さんが万博の建設現場に入ったのは、今年3月21日。各国が独自に建てる「タイプA」の海外パビリオンのうち、最後に着工したマルタ館でした。

元請けは世界最大手なのに

「開幕3週間前とは思えない状況だった」と高関さんが語るマルタ館の工事現場=3月26日、大阪市此花区内【高関さん提供】

「開幕3週間前とは思えない状況だった」と高関さんが語るマルタ館の工事現場=3月26日、大阪市此花区内【高関さん提供】

 マルタ館は、フランス系資本で世界最大手のイベント会社の日本支社「GLイベンツ・ジャパン」が元請けとなり、関西の建設会社A社が一次下請けとして入っていました。
 パビリオンの前に設置する看板の工事を頼まれた高関さんは、下見で現場を訪れて驚きました。
 「基礎の土台もなく配線も引かれていない。もうぐちゃぐちゃで、内部も全然出来上がっておらず、開幕3週間前とはとても思えなかった」と言います。
 高関さんは、惨状を前に仕事を受けるかどうか悩みましたが、「オープンまでに完成させなければ」と思い、現場にいたA社の社長Bさんに事情を聞きました。

図面も内装も指示なく難航

 今年1月末、GL社が建物を建てた後、A社が外装・内装工事を開始しましたが、GL社が確定図面を示さず、内装塗装の仕様指示もしない中で工事は難航。3月に入ると開幕直前期間として工事車両が入れなくなり、さらに施工環境は悪化しました。
 開幕まで1カ月余りしかない中、GL社はA社に24時間体制で毎日働くよう求め、Bさんも会場内で仮眠しながら、食事もまともに取れない状態で、工事を進めていました。

パニック状態で顔色も悪く

 高関さんは、Bさんに初めて会った時の様子を「パニック状態で顔色も悪く、悲壮感を漂わせていた。周りからも万博工事なんかやめてしまえと言われていたようで、一番つらい時期だったと思う」と話します。
 高関さんは看板だけでなく本体工事にも参加。A社は開幕前にマルタ館を完成させ、4月13日開幕日、同館は無事オープンしました。ところがGL社は、途中工程の遅れの原因をA社の「契約不履行」にあるとし、請負代金、追加工事費の計1億2千万円を払おうとしなかったため、Bさんは6月、東京地裁に工事費の支払いを求めて提訴しました。

開幕日までに完成させたが

 「短い工期とさまざまな悪条件の中、A社は最後までやり切って、開幕日までにパビリオンを完成させた。工程内で間に合わなかったところがあると言うが、その原因をつくったのは、きちんとした図面作成もスケジュール管理もしなかったGL社」と、高関さんは断言します。

万博協会・府には責任がある

来場者でにぎわうマルタ館=9月18日、大阪市此花区内

来場者でにぎわうマルタ館=9月18日、大阪市此花区内

 GL社は、セルビア、ルーマニア、ドイツの各館でも未払いがあったと下請け業者が訴え、セルビア館の施工業者からも提訴されています。
 高関さんは、大阪府や万博協会についても、こう言います。
 「海外パビリオンが間に合わないとなった時、吉村知事は建築業者に頭を下げて回った。そうして間に合ったのだから、業者に感謝し、未払いが起きたことを謝罪するのが公人としての筋。協会は万博の主催者として全責任がある。国際機関に日本が認可されて進めているビジネスで、未払いが生じたとなれば世界的な問題。それを国も府も協会も『民民』の問題だと言って片付けようとするのは、おかしい」
 GLイベンツ・ジャパンは2016年に設立。その年に、2026年のアジア競技大会(愛知県)の開催が決まり、大会組織委員会は、同社と630億円で随意契約を結んでいます。
 「各国関係者と互いの知見、経験を交換し合いながら進める海外パビリオンの建設は素晴らしい。万博は成功してほしいけれど、未払い問題が解決しなければ、同じことが起こりうるし、こんな仕事は誰もしなくなる。万博でこんなことが起きた事実を、たくさんの人に知らせたい」

(大阪民主新報、2025年9月28日号より)

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