維新府政17年の転換を
暮らし守る府政へ
日本共産党大阪府議会議員 石川たえ
統一地方選まで1年半、大阪府政の現状と課題、府政転換の取り組みについて、日本共産党の石川たえ府議に寄稿してもらいました。
参院選で自公が過半数を割る結果となり、大阪でも自民・公明・維新が得票率で後退する一方、参政・国民が伸長しました。この根底には、府民の暮らしの困難と政治への強い不満があります。
維新政治が万博やカジノ誘致に熱中してきた結果、暮らしや地域経済が置き去りにされ、少なくない分野で行政水準の遅れが深刻になっています。統一地方選まで1年半、暮らしを守る府政へ転換する取り組みを呼びかけます。
物価高から暮らしと営業守る
大阪の物価は、今年に入ってからも食料品を中心に前年同月比3~4%増の高水準で推移しています。賃金の額面は多少上がっても、物価上昇を加味した実質賃金は減少が続いています。小規模な事業所ほど給料を上げたくても上げられず、人材確保や事業承継ができず廃業するケースが増えています。
ところが、府の物価高騰対策は、ほぼ国の施策と財源頼みです。賃上げ促進でも、岩手県や徳島県など、知事自ら最低賃金引き上げを要請し、県独自に中小企業への賃上げ直接支援制度をつくる例が広がっていますが、府は背を向けたままです。
大阪の労働者と中小企業の現実に見合った府独自の物価高騰対策、賃上げ直接支援策が急がれます。消費税緊 急減税とインボイス廃止を国に強く求めるとともに、光熱費・家賃などの固定費増加分など中小企業への直接補助制度が必要です。
〝医療・介護崩壊〟ストップ
維新主導の「医療費4兆円削減」自公維合意の狙いは、病床減らしとOTC類似薬の保険外しに加え、看護師な ど医療従事者の大幅削減、後期高齢者医療制度の負担増です。国民・医療関係者の反対 で容易に進まない自公政権の医療費抑制政策を、一気に加速させようとするものです。
大阪では、国民健康保険料や介護保険料など社会保障負担が全国で最も重い水準です。コロナで全国最多の犠牲者を出した責任に頬かむりしたまま、医療破壊・負担増へ拍車をかけるのは許されません。
府が行うべきは、独自の財政措置による国保・介護保険料軽減、「地域医療構想」に基づく病床削減中止、報酬 削減と物価高に苦しむ医療・介護事業所への緊急支援、保健所の増設・人員確保です。
教育環境向上 子ども守れ
国民・教育関係者の長年の運動が文科省を動かし、小学校で35人学級が実現し、2026年度から中学校でも段階実施される見通しです。
現在、ほとんどの都道府県がこれに先行し、中学校の少人数学級や小学校30人・25人学級へ踏み出しています。ところが、独自の少人数学級化を実施していない4府県の1つが大阪です。府内全公立小学校で30人学級、中学校で35人学級実施は予算的にも十分可能で、今すぐ実施すべきです。加えて、正規教員そのものを抜本的に増やし、「教育の穴」を埋めることも急務です。
府は昨年までの11年間で21校の府立高校の廃校・募集停止を進めています。さらに32校を2040年までに減らす新計画を示しています。「定員割れ」を名目に機械的に高校をつぶすのではなく、少人数学級化を進め〝自転車で通える〟学校を残し、学ぶ権利を保障すべきです。
子育て・教育の負担軽減を
給食費を恒久無償化する市町村は府内で小学校13、中学校12にとどまりますが、府が東京都のように補助制度をつくれば全市町村で恒久無償化できます。
維新の会は私立高校授業料「無償化」を自慢しますが、「隠れ教育費」=授業料以外の負担が私立高校では小さくありません。入学金、制服代、修学旅行費などの軽減が必要です。
子どもの医療費は、高槻市を除き受診1回500円が必要です。全市町村で18歳まで補助していますが、府の補助が全国最低水準の就学前にとどまり、所得制限もあるため、補助全体にかかる費用は約9割が市町村負担です。「子どもの貧困」解消のためにも府の補助を増やし窓口負担をゼロにすべきです。
不幸広げる大阪カジノ中止
万博が10月で閉幕します。跡地をサーキットなどカジノと一体の巨大娯楽施設とし、税金で造った「大屋根リング」などをカジノ客寄せの道具にする、カジノのために夢洲へ新鉄道を建設する計画も立てられています。
オンラインカジノやギャンブル依存症が社会問題となる中、人を不幸にするカジノから府は手を引き、依存症対策に力を入れることこそ大事です。
夢洲は、メタンガス等の安全対策を講じた上で、自然環境や生態系の保護・再生、廃棄物処分場としての活用などを検討すべきです。
「都構想」ではなく住民自治こそ
維新の会は、「都構想」3度目の住民投票への意欲をあらわにしています。「都構想」の目的は、府・市の機構と財政をまとめ、住民福祉を放棄し、維新流「成長戦略」=大企業にとことん奉仕し儲けてもらう大阪づくりにあります。
2度否決されても固執するのは、低下しつつある維新の求心力を取り繕う方策が他にないからです。府議会と大阪市会の過半数という「数の力」頼みの3度目の住民投票に大義はありません。
府は、自公政権の「地方行革」・地方再編の先駆けとして、市町村の施設・仕事の「広域化」や合併を、補助金までつけて誘導し、すでに南河内や泉州南部で「検討」の枠組みが作られています。府議会議員定数のさらなる削減も狙っています。
住民自治に背く「広域化」や、自治体・議会の機能縮小では生活向上は望めません。暮らしを守るために全力を挙げ、そのための市町村の取り組みを応援することこそ広域行政としての府の役割です。
公共工事防災・生活密着に
昨年開業した北大阪急行延伸に続き、モノレール、なにわ筋線、淀川左岸線2期・延伸部など総事業費1兆3千億円を超える巨大公共工事が進行し、うめきた2期、新大阪、大阪城東部開発も進められています。
開発は府内中心部に偏重し、周辺部の〝シャッター通り〟やバスの廃線・減便による〝買い物難民〟は放置されたままです。不要不急の巨大工事優先型から防災・安全・生活密着型へ公共事業の転換が必要です。
南 海トラフ巨大地震や豪雨対策、全国一多い老朽水道管の改修、温室効果ガス削減と再生可能エネルギー普及が急がれます。商店街・小売業の振興、安 全で暮らしに役立つ交通網整備、必要な人が入居でき住み続けられる府営住宅整備などに力を注ぐべきです。
財源はある 職員の力発揮を
府は昨年度まで17年連続「黒字」となり、財政調整基金(自治体が自由に使える貯金)は過去最高の2500億円を超える見通しです。
維新の会は「改革の成果」だと言いますが、実際は、リーマンショック(08年)で落ち込んだ法人税収の回復、職員リストラと府民福祉削減、消費税増税による地方増収分、コロナ禍で国による対策以外の独自対策をほとんど行わなかったことなどによるものです。
府民が納めた税金は府民のために使い、府民施策の遅れを取り戻すことが必要です。万博やカジノ誘致、「府市一元化」などに動員されている職員を府民福祉に呼び戻し、力を発揮してもらうべきです。
排外主義乗り越える改革提案を
現在の排外主義、対立と分断の煽動は、かつて大阪での橋下徹元知事による「慰安婦」正当化発言や職員の「思想調査」と共通の土台に基づいていると思います。それは行き詰まった自民党政治、府政においては破綻した「オール与党」政治の反動的打開と延命です。
「政治を変えたい」という府民の願いに応える道は、生活苦や閉塞感の真の原因と打開策を、事実と道理に基づいて示す政治改革の提案です。
私も、広範な府民と手をつなぎ、暮らしを守る府政へ転換する取り組みの先頭に立つ決意です。
(大阪民主新報、2025年9月7日号より)