発がん性指摘のPFOA 予防原則で対策を
摂津 住民団体が集会
空調大手のダイキン工業淀川製作所(摂津市)に隣接する同市一津屋地域で、発がん性などの健康影響が指摘される有機フッ素化合物・PFOA(ピーフォア)の深刻な汚染が広がっている問題で、地元の「公害問題を考える会」(和田壮平代表)が13日、住民集会を開きました。
汚染源・ダイキンの地元で
「公害問題を考える会」は、淀川製作所がある地域の地元住民が、PFOA汚染問題への理解を広め、ダイキン工業などに対策を求めようと、結成したもの。6月1日には大阪PFAS汚染と健康を考える会の協力も得て、一津屋地域の20~80代の住民62人を対象に、血液検査を行いました。
血液検査では極めて高濃度
住民集会では、小泉昭夫・京都大学名誉教授が、検査結果について報告。健康被害の可能性があるとして米国科学アカデミーが定めた基準(血液1㍉㍑当たり20㌨㌘)を超えた人は全体の3分2を超える41人(66・1%)で、より厳しいドイツの基準(同10㌨㌘)を超えたのも32人(54・8%)と、極めて高い血中濃度でした。
小泉氏は「高濃度のPFOA汚染が継続している」と指摘した上で、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、予防的に対応する「予防原則」に言及。「ダイキンはグローバル企業として、国外で順守している予防原則を、日本国内にも適用すべき」と強調し、汚染源対策や疫学的な健康影響評価などを実施することが求められると話しました。
希望者全員に無料で実施を
大阪PFAS汚染と健康を考える会の専門委員会の金谷邦夫委員長(内科医)は、PFOAは毒性があるからといって、暴露からすぐに影響が出るとは考えられない物質だと指摘。「行政やダイキンは、健康被害を認める世界の動向を無視せず、今からでも『予防原則』に立って、真剣に対応すべき」と力説しました。
大阪PFAS汚染と健康を考える会の長瀬文雄事務局長も、「病気が起きてからでは遅い。自分の体や家族への影響を知りたいというのは、当然の願いだ。国や自治体、ダイキンが費用を出し、希望者全員に無料で血液検査を行うべき」と語りました。
村松昭夫弁護士(大阪アスベスト弁護団長)は、「ダイキンは加害者。健康被害が出てからではなく、早く実態を明らかににし、対策を取るべき」と発言。池田直樹弁護士は、能勢町のダイオキシン問題で公害調停に取り組んだ経験に触れながら、「摂津市でも声を上げ、ダイキンの負担で大規模な血液検査を」と述べました。
党派を超えて取り組みたい
日本共産党の増永和起、大阪維新の会の塚本崇、公明党の南野直司の各摂津市議と、立憲民主党の阿部知子衆院議員が出席し、あいさつしました。増永氏は、以前は市議会でPFOA汚染問題を取り上げるのは日本共産党だけだったが、今では超党派で取り組めるようになったと強調。「未来の子どもたちにかかわる問題として、私たちの責任で追及していきたい」と決意を語りました。
参加した住民からは「相手はダイキン。住民同士がいがみ合わず、団結しよう」「加害者のダイキンを同じテーブルにつかせるためには、もっと多くの血液検査の結果が必要」「(きょうは)取り組みが大きく広がるスタートライン。一歩一歩解決を」などの声が上がりました。
PFOA使用し製造も――ダ イ キ ン淀川製作所
製造や使用は国際的に禁止
PFOAは1万種以上あるとされる有機フッ素化合物(総称はPFAS=ピーファス)の一種です。はっ水性・はつ油性があることから、調理器具や食品の包装紙などに使われ、世界中に普及。泡消火剤などに使われるPFOS(ピーフォス)とならんで、ワクチン効果を弱める作用や、腎臓がん、胎児や新生児の発育抑制などの健康被害が指摘されています。
世界的には2009年、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の規制対象にPFOSが追加され、同条約締約国である日本国内では原則として製造・輸入が禁止に。19年にはPFOAも同条約の対象物質となり、21年に製造・使用が禁止されました。
日本では厚労省が20年4月に、水道水の「目標値」をPFOSとPFOAの合計で1リットル当たり50㌨㌘(㌨は10億分の1)と設定。環境省は同年5月に同じ値を、河川・地下水の「暫定目標値」としました。
製造中止後も高濃度の汚染
ダイキン工業は1960年代後半から淀川製作所でPFOAを使用し、82年からは製造も開始。2012年に製造を中止しましたが、大阪府の調査(20年)で淀川製作所東の井戸から2万2千㌨㌘(暫定目標値の440倍)という、極めて高い濃度のPFOAが検出されるなど、深刻な汚染が続いています。
摂津市では22年、市民有志が「大阪・摂津市PFOA汚染問題を考える会」を結成し、ダイキン工業に情報公開や調査・対策を求める署名運動や学習会などに取り組んできました。
大阪府レベルでは23年に、大阪PFAS汚染と健康を考える会が発足しました。京都大学と共同で、同年9月から12月にかけて、摂津市はじめ1190人を対象に、血液検査を実施。摂津市と同市に隣接する大阪市東淀川区の住民のPFOAの血中濃度は、他の大阪の住民より高いことが明らかになっています。
(大阪民主新報、2025年7月27日号より)