おおさかナウ

2025年06月21日

万博パビリオン建設費未払い
万博協会は国家施策としての責任と救済を
被害受けた下請け業者が会見

 大阪万博のパビリオン建設を巡り、建設費の未払い問題が相次いで起きています。アンゴラ、マルタ、中国の各パビリオンの建設に携わった業者が13日、大阪市内で会見し、国家プロジェクトとしての責任と救済を、万博協会に求めました。

当事者間の問題だと冷たい対応

 万博協会は、パビリオンの建設費未払い問題を巡って、「参加国と建設事業者、元請けと下請けの関係は、当事者間の契約」(石毛博行事務総長)だとし、第三者機関や行政機関の紹介などの対応しか行っていません。
 「被害者の会」を立ち上げたAさんは会見で、アンゴラ、マルタ、中国のパビリオン建設費の未払いの影響を受けているのは、延べ150人に上ると報告しました。
 Aさんは4次下請けでアンゴラ館建設に関わりました。元請けを含め3社が建設業の許可を受けておらず、施工実績のない会社が受注したことで図面が不十分となり、何度も工事のやり直しが発生。未払いが発生した際の請求先も不明確だとし、行政が管理体制やルールを見直す必要を強調しました。

われわれは虫けら以下の扱いか

 Aさんは、「国家プロジェクトのために一生懸命働いたのに、『民民の問題』として切り離されている」とし、行政からの具体的な支援がないことを批判。万博工事が遅延する中、開催に間に合わせるよう国・府・協会から圧力がかかり、昼夜を問わない労働が強いられたことは、労働基準法違反だと指摘。建設業の許可も受けていない会社が労災を起こした場合、「誰が責任をとるのか」と問いました。
 さらに、ユスリカやレジオネラ菌問題でいち早く対策本部がつくられたことと、建設費未払い問題での対応を比較し、「われわれは虫けら以下か」と怒りをあらわにしました。
 マルタ館を担当したBさんは、契約金の一部と追加工事分の計約1億2千万円が未払いだとし、元請け会社を提訴したことを報告しました。
 元請けはフランス系企業で、今年1月ごろまで一括下請けだった会社が撤退した後、Bさんの会社が1次下請けになりました。

24時間不眠不休の過酷な状況で

 工事着工は昨年12月。各パビリオンの最後の着工となり、最も短い工期でした。Bさんは、「戦場と化した現場で『開幕までに間に合わせる』という大阪府の発言で、さらに過酷な状況に追い込まれ、24時間不眠不休で、睡眠も食事もまともに取れない状況だった」と述べました。開幕後、吉村知事が「遅れても仕方がない。そういう万博があってもいい」などと発言したことに、「命懸けで頑張ってきた努力は何だったのかと落胆し、万博のニュースなどを見ることができなくなった」と話しました。
 未払いの原因として、元請けが、工期に間に合わなかったことなどを主張していることに対し、Bさんは「指示通りの工事を期日までにした」と主張。「万博の工事は明らかに公共事業。いろんなことが水面下で発生していることに、しっかりと向き合っていただきたい」と述べました。

開幕前に対応してくれていたら

会見するアンゴラ、マルタ、中国のパビリオン建設業者=13日、大阪市中央区内

会見するアンゴラ、マルタ、中国のパビリオン建設業者=13日、大阪市中央区内

 中国館の電気工事を2次下請けで担当したCさんは、名古屋市本社の元請けから1次下請けの電気設備会社に対し1億1千万円、Cさんの会社には3700万円の未払いが生じていると報告。元請けが支払いを拒否し、1次下請けが元請けとの話し合いのテーブルにもつくことができない状態だと述べました。
 Cさんは、3月に大阪府のホームページを通して、知事宛てに相談し、府から万博協会を紹介されてやりとりをするも、何の進展もないと報告。「開幕前に対応してくれていたら、大事にならなかったのではないか」と訴え、「公共工事と同様の気持ちで参加した。未払いがあるなんて夢にも思っていなかった。こんなことがまかり通ることが恐ろしい」と語りました。
 現在の状況を記者から問われたBさんは、「銀行の融資も断られ、あるものはすべて吐き出したが、未払いの金額をとても補えない」と述べ、「吉村知事が『寄り添う』と発言しているが、具体的にどう寄り添い、救済や対応をしてくれるのか聞きたい」と話しました。
 Cさんも、関係各所からの連絡などで仕事が手に付かず、受注もできない状況だとし、早急な解決を求めました。
 会見では、他のパビリオンでも未払い問題が起きていることが報告されました。

(大阪民主新報、2025年6月22日号より)

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