大阪公立大 中百舌鳥・杉本町⇔森之宮
キャンパス間 移動は無料で
学生がネット署名提出
今秋に開設される大阪公立大学の森之宮キャンパス(新キャンパス、大阪市城東区)と、既存の主要キャンパスを結ぶ無料交通手段の確保を求めて、同大学の学生有志でつくる「大阪公立大学問題について考える会(考える会)」が16日、1841人分のネット署名を大学側に提出しました。
維新の府市政が大学統合を強行
大阪公立大学は、大阪府立大学と大阪市立大学を統合して2022年に発足。大阪府と大阪市の「二重行政の解消」を掲げる維新府市政が、統合を強行しました。新キャンパスは、JR大阪環状線の大阪城公園駅の東側に広がる「大阪城東部地区」(約53㌶)の再開発計画に位置付けられています。
新キャンパスは1、2年生の基幹教育と、文学部、生活科学部食栄養学科、医学部リハビリテーション学科が移転。中百舌鳥キャンパス(旧府立大、堺市中区)と杉本キャンパス(旧市立大、大阪市住吉区)に移動する2年次以降は、基幹教育科目の再履修や図書館の利用、サークルなど課外活動のために、キャンパス間を往来する必要が多くの学生、教員に生まれます。
シャトルバスは「運行しない」と
大学側は22年から、中百舌鳥キャンパスと杉本キャンパスとを結ぶ無料シャトルバス(定員28人)を1日往復8便運行していました。しかし現在は、委託費の高騰などを理由に往復4便に減らしています。
ことし3月、学生が大学の「ウェブ提案箱」で、新キャンパス設置に伴う無料の移動手段を保障するよう要望しました。ところが大学側は、シャトルバスでは渋滞などで移動時間が不正確になり、事業者の確保にも課題があるため、「運行しないこととなりました」と回答。課外活動は「学生の自主性を重んじた任意活動」だとして、移動にかかる費用は負担しないとしています。
生まれた負担は大学経営の都合
考える会は4月末からオンライン署名を開始しました。キャンパス間の移動で生じる時間的・空間的制約で、学習や研究の効率が悪くなり、学生・教員のコミュニケーションや課外活動に悪影響が及ぶと強調。再度、シャトルバスについて検討することを要望しています。
運行が無理だとしても、学生・教員のための別の無料の移動手段を確保するよう要望。具体的には、鉄道会社と交渉して、各キャンパスの最寄り駅間の運賃を大学が負担できるようにする制度の整備を挙げています。
さらに考える会は、府市主導の大学統合と、大阪城東部地区再開発計画という「大学経営の都合」で生まれた負担を、学生や教職員に押し付けるのはあり得ないと訴えています。
考える会の丸山泰誠さん(21)らが、杉本キャンパス内で署名を提出。応対した大阪公立大学の石田耕造総務部長は、「署名をきちんと受け止める。人格形成の上で課外活動は重要。『わが子が大学生だったらどうするか』という視点で、学生の皆さんと対話を続ける」と話しました。
移動手段の確保は大学設置者の責務
大阪市議会 財政総務委 井上浩議員が主張
考える会は、無料の交通手段の確保を求める陳情書を大阪市議会に提出。11日の財政総務委員会で審議され、日本共産党の井上浩議員は、採択を求めて質問しました。
井上氏は、大阪大学は豊中・箕面・吹田の3キャンパスを結ぶ「学内連絡バス」をきめ細かく運行していることを紹介。「キャンパス間の移動手段の確保は大学設置者の責務だ」と強調しました。
さらに府立大学と大阪市立大学の統合は、両大学関係者の「内発的な要求」でなかったにもかかわらず、強行されたと指摘しました。これに対し無料の移動手段を求める学生の署名活動は、まさに「内発的な要求」だと力説。「シャトルバスの運行は大学の発展に資する」と述べ、大阪公立大学を所管する副首都推進局に対し、運行のための検討を大学側に働き掛けるよう求めました。
(大阪民主新報、2025年6月22日号より)