おおさかナウ

2020年02月16日

3分の1が統廃合対象に
維新市政が小学校潰し条例案
大阪市 市民ら撤回求め運動

 大阪市(松井一郎市長)は、市内の公立小学校の統廃合を、地元の合意なしに教育委員会主導で一気に進められるようにするために、「大阪市立学校活性化条例改正案」を2月市議会に提案しました。17日の教育子ども委員会で審議・採決、21日の本会議で採決しようとしています。全国に例がない条例をつくってまで学校つぶしの強行を狙う暴挙に、市民から批判の声が上がっています。

無計画な統廃合で矛盾噴出

大型道路3本を渡って通学

 「これまでも無計画な学校の統廃合が行われてきました。こんな条例ができたら、画一的に学校つぶしがどんどん行われることになると思います」
 大阪市浪速区の塩草立葉(たてば)小学校(塩草1丁目)に、5年生の長男と2年生の次男を通わせる竹内祥倫(よしのり)さん(38)はこう言います。
 竹内さんは結婚後、子育て環境も考えて、妻の出身校でもある立葉小学校(立葉2丁目)の近くに居を構えました。ところが長男が小学校に入学する1年半前の2013年秋、立葉小学校が廃止され塩草小学校と統合されるとの話を聞き、驚きました。立葉小学校は当時すでに創立100年以上でしたが、比較的新しい校舎でした。
 竹内さんの自宅から塩草小学校まで通うには、新なにわ筋、なにわ筋、あみだ池筋と交通量が非常に多い道路を3本渡らなければなりません。信号の状況によっては、大人でも10分以上かかります。区に直接、異議を唱えましたが、「町会長もPTAも賛成した」の一点張りでした。
 統廃合後は、子どもだけの登校は危ないことから、PTA役員が持ち回りで集団登校に同行しています。

統合後3年で教室が不足し

 さらに驚いたのは、統廃合後わずか3年の17年、児童数増により、校庭に4階建ての校舎の新設計画が持ち上がったことでした。学校周辺には数年来、マンションが次々に建っています。
 後で分かったことは、統廃合前の保護者説明会でも、将来の児童数増への不安がたびたび出されていました。最後まで統廃合に反対した人がいたこと、統廃合の是非を問うアンケートが記名式で行われたために反対意見を出しにくく、泣く泣く賛成に回った人もいたことを知りました。
 竹内さんらは18年2月、校舎増設見直しと、立葉小学校跡地を売却しないよう大阪市に陳情しましたが不採択になりました。

運動会が開けない狭い校庭

無計画な統廃合が行われ、児童数増による新校舎増設が進む塩草立葉小学校=大阪市浪速区内

無計画な統廃合が行われ、児童数増による新校舎増設が進む塩草立葉小学校=大阪市浪速区内

 去年2月、塩草立葉小学校の増築工事が着工されました。もともと小さい校庭がさらに狭くなったため、第2校庭として近くの難波特別支援学校の校庭が使われるとされていましたが、ほとんど使われていません。
 校庭が狭いために運動会が開けず、去年は隣の難波中学校を借りて行われました。
 区内では日本橋、恵美、日東の3小学校も統廃合され、17年に日本橋中学校(日本橋1丁目)に小中一貫校が開校しました。中学校の敷地だけでは足りないことから、隣の公園が廃止され、新校建設用地になりました。保護者の十分な合意もないまま進められたため、開校1年目はPTA会長が決められず、当初約束されていたスクールバスも出ていないといいます。
 竹内さんは言います。

これのどこが教育的なのか

 「小学校の6年間は二度と帰らない。大阪市は児童の良好な教育環境のための学校再編整備と言いますが、学級数が少ないことが、なぜ子どもの教育環境としてよくないのかも分からないし、通学時間が長くなって危険な道を歩かされたり、無計画な統廃合の結果、狭い敷地に校舎が増設されて校庭が使えなくなることのどこが教育的なのか、全く分かりません」

合意抜きで統廃合が可能に

維新市政下で廃校が加速し

 2011年に橋下維新市政が誕生した大阪市では、橋下徹市長(当時)が「子どもたちの教育環境を整えるため、11学級以下の小学校については、喫緊の課題として統廃合に取り組む必要がある」と発言。これらを受けて大阪市教委が14年3月、「大阪市立小学校 学校配置の適正化の推進のための指針」を策定し、学校の適正規模を原則として12~24学級とすることや、「今後、7学級以上11学級以下の状況にあると見込まれる小学校」も統廃合の対象とすることが明記されました。
 大阪市の公立小学校は、1985年以降から2017年までの32年間に35校が廃校になりましたが、うち10校は、維新市政下のわずか6年間でなくなった学校です。
 市の計画では、昨年、生野区西部の12の小学校を廃校にする予定でした。ところが16年に計画が発表されて以降、統廃合を考える集会が開かれ、連合町会やPTAを中心に計画の再考を求める署名や陳情が繰り返され、新校開校の計画はストップしています。
 昨年の11月市議会では、維新議員が生野区での統廃合計画が進んでいないことを批判し、対策を求めていました。

「適正規模」へ機械的に統合

 2月市議会に提案された「条例改正案」には、現行にはない「小学校の学級の適正規模の確保」を追加。12~24学級を「適正規模」と規定し、教育委員会に対して、学級数の規模を適正規模にするための計画を策定する義務を課しています。
 大阪市教委は市議会で、「地域、保護者の合意抜きには統廃合は行わない」としてきましたが、条例改正案に合意形成の記述はありません。改正案の通りにいくと、現在287ある市立小学校の3分の1が対象になるといわれています。

教育条件の整備こそが必要

 全国に20ある政令指定都市の中で、大阪市は唯一、公立小学校の35人以下の少人数学級を実施していません。
 生野区西部で統廃合の対象となっているA小学校では、前の学年から1クラス40人の単学級となった中学年で、多人数の教育環境から来るストレスにより、児童間のけんかが多発しています。保護者らが、学校生活に支障をきたしているとして、来年度の新学年では、2クラスにするよう求める署名を集めています。

他の政令市は少人数学級が

 大阪市学校園教職員組合の宮城登委員長は、「大阪市を除くすべての政令市が何らかの少人数学級を実現しています。そうすれば市の言う『適正規模』の学校は増えます。“小さくても輝く学校”こそ大事にすべきです」と指摘します。

防災拠点減らす統廃合の愚

小学校や商店街に貼られている横断幕やポスター=大阪市生野区内

小学校や商店街に貼られている横断幕やポスター=大阪市生野区内

 災害時には防災拠点として、避難所としても重要な役割を果たす公立小学校がなくなることは、公的責任による安全・安心の町づくりの面でも、大きな損失になります。
 12日現在、大阪市議会議長に対して、条例制定を行わないことを求める陳情書は、大阪市教など206団体・1351個人から寄せられています。
 地域・保護者の合意がないまま「生野区西部地域再編整備計画(案)」に関する予算案を遂行しないこと、地域・保護者の合意を尊重することなどを求める陳情書は約5千人分集まり、区内の連合町会長、PTA会長らが名前を連ねています。

(大阪民主新報、2020年2月16日号より)

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