おおさかナウ

2019年08月11日

参議院選挙の結果と生かすべき教訓と課題
柳利昭日本共産党府委員長に聞く

 7月21日投開票の第25回参議院選挙の結果をどうみるか、今後の課題などを、日本共産党の柳利昭府委員長に聞きました。

参議院選挙の結果全体で確信にすべき点

柳利昭府委員長

柳利昭府委員長

――まずはじめに、今回の参議院選挙の結果全体で確信にすべき点は何ですか。

柳 今回の参議院選挙で、自民、公明、維新などの改憲勢力が、改憲発議に必要な3分の2を割ったことは重要です。この結果をつくる上で、1人区の統一候補が10選挙区で勝利したことは大きな成果で、改憲策動に痛打を与え、政治局面を変えました。自民党が改選比で9議席減らし、単独過半数を割り込んだことも重要です。

 野党共闘は選挙を通じて大きく発展し、市民連合と交わした13項目の共通政策が、国政の焦点の問題で共闘の旗印を示し、相互の共闘関係を築く努力が進められました。統一候補の得票が4野党の比例票合計を上回った選挙区は29選挙区にのぼり、勝利に至らなかった選挙区でも共闘効果が証明されました。

 日本共産党は選挙区で現有3議席を確保しました。比例で4議席への後退は残念ですが、直近の17年総選挙比例票から得票、得票率ともに前進させたことは、次の総選挙の躍進の足がかりとなるものです。野党の中での政党配置や力関係に大きな変化が起こった下での到達であり、次期総選挙を展望しても、全国でも近畿ブロックでも議席増を切り開くことができます。

大阪の結果についてどう見るか

――大阪の結果についてどう見ますか

柳 大阪の結果は、比例では33万4452票で、ベースとした17年総選挙比例票から1万7801票、得票率で0・54%前進、山下芳生さんの4選に結ぶことができました。しかし選挙区では辰巳孝太郎候補の議席を失う重大な結果になりました。

 13年参院選での15年ぶりの大阪選挙区の議席獲得は、数多くの府民要求実現と森友疑惑追及などでかけがえのない役割を果たしてきました。それは同時に、大阪の政治の中での日本共産党の位置と役割を大きく高め、大阪での「反維新」の共同と市民と野党の共闘を前進させる決定的な力となってきました。この宝の議席を失ったことは、まさに痛恨の極みで、大阪府委員会の責任を痛感しています。

 同時に、17年比例票で第5党、自民・維新とは3倍の得票差の力関係から出発し、統一地方選挙とダブル選挙で「維新大勝」という逆流が生まれたもと、全党の奮闘で辰巳候補を当落線上に押し上げて、自民・公明候補を脅かし、立憲の有力候補を上回ったことは重要です。

 比例代表でも、17年総選挙で後退した維新が今回は大きく得票を伸ばす一方で、自民と立憲は大幅得票減、公明も減らすなかで、わが党が得票・率ともに前進させたことも確信にすべきです。

大阪の「二重の逆流」とのたたかいについて

――大阪は、安倍政治と維新政治の「二重の逆流」とのたたかいだと言われてきました。この点についてはどうですか。

柳 最終盤の大阪府の活動へのメッセージで志位和夫党委員長は、「大阪の党は、安倍政治の逆流、維新政治の逆流という『二重の逆流』に抗して、日本政治の最前線でたたかってきました。それゆえの厳しさ、難しさもあり、そのたたかいの中で少なからず傷ついてきたことも承知しています」と大阪のたたかいを激励しました。

 安倍政権は、維新を改憲の最大のテコとして援助し、公明への揺さぶりにも利用してきました。また、維新は追い詰められるたびに安倍政権の力を借りてよみがえり、この両者は相互に補いながら大阪での支配を築いてきました。

 この「二重の逆流」を打ち破るたたかいは、安倍政権の命運とともに、大阪の明日を懸けたたたかいであり、まさに大阪の党の真価が問われています。

 ダブル選挙後「自民党府連執行部」と公明党府本部が維新に屈服して得票を後退させた下で、安倍政治にも維新政治にもブレずにたたかう共産党が、自公との力関係を縮めていることも明らかです。批判とともに希望を広げる取り組みをさらに強めて、自公に打ち勝ち安倍政権を倒すことが、維新とのたたかいにも新たな局面を開くことになります。

 この中で安倍政権の別働隊となりつつ「改革勢力」の幻想を与えている維新の本性を暴き、真の改革者である日本共産党の真価を知らせて「二重の逆流」を打ち破る、大阪の特別の役割を果たします。

 また今回、保守層を含む市民との共同がかつてなく広がり、「二重の逆流」とたたかう上でも、市民と野党の共闘を発展させる重要性が明確になりました。日本共産党が野党第一党になり、この共闘発展の要の位置と役割を担うことが浮き彫りになったことも重要です。

維新の得票増、辰巳票の後退、立憲との「共同」について

――「維新はなぜ得票を増やしたのか」「なぜ辰巳票が後退したのか」「立憲との『共同』はできなかったか」という疑問が出されていますが。

柳 維新は17年総選挙では16年参院選比例票を35万以上後退させましたが、今回は28万以上伸ばして大阪の第一党を回復しました。ここには、昨年末の追い詰められた状態からダブル選挙を仕掛け、「大阪を成長させた改革派」幻想を振りまいて勝利した流れがあります。ダブル選では「自民か維新か」の対決構図がつくられ、官邸の手助けによる自民党府連の「野合攻撃」への屈服が、維新の勢いを増幅しました。

 参院選では、維新は「安倍改憲」の別働隊の本性を示しつつ、演説などでは一切改憲には触れず、改憲賛成派と反対派の両方から支持を取り込みました。安倍内閣への態度でも、支持層、不支持層の双方から得票しています。

 わが党が、維新の巻き返しの中で総選挙比例票を前進させたことは重要ですが、16年、13年参院選比では比例・辰巳票ともに押し返せず後退しました。ダブル選挙からの維新の「風」が党前進の逆流になるとともに、支持拡大が16年・13年参院選の8割にとどまるなど、党の自力の後退が根本の要因になっています。

 辰巳さんの得票後退の土台には比例票の後退があります。比例独自の情勢判断と対策など、「比例を軸に」を貫く努力がさらに求められています。

 「立憲候補との『共同』」については、「二重の逆流」を打ち破る上で共産党の論戦と議席獲得は決定的であり、辰巳勝利目指すたたかいは大義のあるものです。大阪の市民と野党の共闘は「二重の逆流」を打ち破るものであり、定数4で2議席以上を獲得するところまで前進させてこそ本物という立場での探求が求められます。

 今回の結果は残念ですが、今後の市民と野党の共闘前進の妨げにはならず、総選挙での共闘の機運を高めています。今後も大阪の野党共闘の姿を府民に示すため、ふさわしいイニシアチブを発揮していきたいと思います。

総選挙の勝利・躍進に向け、生かすべき教訓と課題

志位委員長と支持を訴える日本共産党の辰巳氏=7月20日、大阪市浪速区内

志位委員長と支持を訴える日本共産党の辰巳氏=7月20日、大阪市浪速区内

――今後、総選挙の勝利・躍進に向け、生かすべき教訓と課題は何ですか。

柳 参院選では打開すべき課題とともに、多くの新しい挑戦が進められました。

 春の統一地方選とダブル選挙、衆院12区補選の「維新大勝」の結果を乗り越え、参院選で安倍政権と維新に審判を下すため、統一地方選挙「中間総括」を議論し、選挙戦の教訓を明らかにしながら参院選必勝作戦に取り組みました。並行して堺市長選挙を新しい市民共同の力でたたかい、メディアの予想を覆す善戦・健闘の結果をつくったことは、大阪の政治情勢を変化させ、わが党への新たな信頼と期待を生み出しました。厳しさを直視するとともに、大阪のたたかいで切り開いた前進・躍進の条件に確信をもって、全党が「二重の逆流」に立ち向かったことは重要でした。

 宣伝では、6中総の政治論戦の2つの力点――希望を語り党の魅力を伝えることが有権者と響きあい、「消費税に頼らない別の道で、くらしに希望を――3つの提案」「減らない年金」「ジェンダー平等をめざす提案」などに大きな反響がありました。シールボード対話など街頭での対話宣伝も広がりました。

 対話・支持拡大では、支持拡大目標比で54%、16年参院選の80%、13年の78%にとどまったものの、最後4日間で18万伸ばし17年総選挙比101%の到達を築いたことは重要でした。

 大阪で「20万人の担い手」をとの方針は積極的に受け止められ、「ミニビラ・後援会ニュース」を3枚、5枚と後援会員に渡して協力を呼び掛ける活動や、比例の選挙はがきを党員や後援会員が初めて知人に出すなどの経験が大阪中で生まれました。3万人以上が参加した屋内外の演説会、1万8千人以上が参加した支部の「集い」も、「担い手」広げに力を発揮しました。

無党派層への働き掛け

 「たつみ応援チーム」、JCPサポーターによる独自の宣伝や、無党派弁士による市民街宣が取り組まれ、無党派層への働き掛けに力を発揮しました。電話掛けやビラ折り、街宣活動などに500人を超えるボランティアの方が駆け付けていただききました。山本太郎氏や小林節氏など多くの著名人が街頭に立ち、また支援を寄せたことも大きな力になりました。

 さらに今回、辰巳候補の動きや政策、魅力を動画で発信するSNSの活用に、本格的に取り組んだことも重要でした。特に山本太郎氏との街宣の動画や、辰巳候補の「涙の動画」が「5日間で90万回再生」とメディアでも注目され、「支持政党無しのうち、最多の18・9%が共産現職の辰巳氏に投票」(「毎日」)と報道するなど、SNSの発信が無党派層に浸透し、新たな投票につながりました。さらに発展させ、日常的に強化を図ります。

 また、コンビニや森友追及、生活相談など辰巳候補の実績を生かした「たつみウイング作戦」での新たな支持の広がりを得票に結び付ける対策をとりました。

 学費半額や最低賃金1500円などの党の提案が、かつてなく若い世代と響き合いました。大阪の7割以上の大学で対話・宣伝に取り組み、67%の民青同盟班が「変えよう決議」を力に参加を広げ、7月に7人の同盟員を増やしていることは重要です。

 こうした参院選の教訓を生かし、8、9月に選挙でつながった方と対話し、党勢拡大に取り組んで、来るべき総選挙の躍進を目指します。


(大阪民主新報、2019年8月11日・18日合併号より)

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