おおさかナウ

2019年07月14日

朝礼で〝日の丸が行くぞ〟の歌
泉尾北小学校 公募校長が歌手招き

 大阪市立泉尾北小学校(大正区泉尾2丁目、小田村直昌校長)で5月、「愛国の歌姫」と呼ばれる歌手を招いて天皇即位と改元を記念する児童朝礼が行われていたことがこのほど分かりました。同校に子どもを通わせる保護者は、「戦前に逆戻りしたような内容の教育はやめてほしい」と話し、市民団体も抗議しています。

天皇即位・改元を記念して

大阪市立泉尾北小学校(大正区)

大阪市立泉尾北小学校(大正区)

 5月8日、同小学校で、定例の全校朝礼が行われました。同校ホームページによると、朝礼では小田村校長が、「天皇陛下がお代りになった話と126代目であること、元号も日本古来から続いているお話」をしました。
 朝礼ではさらに、「愛国の歌姫」と呼ばれ、「教育勅語」も歌にしてきた女性歌手が登場。“ああ勇ましく 日の丸が行くぞ 白地に赤く 日の丸が行くぞ”などと歌う「行くぞ!日の丸!」や「令和の御代」などの自作曲、「神武天皇」、「仁徳天皇」など明治の小学校唱歌を歌いました。

五輪の応援歌と聞かされて

 「子どもたちが家で、“行くぞ行くぞ日の丸が行くぞ”と歌っているのを聞いて、びっくりしました。覚えやすい歌ですぐに覚えたようで。『戦争の歌?』と聞くと、オリンピックの応援歌と聞いたそうです。でもまるで戦前に戻ったみたいな歌詞で、怖いなあと思いました」と、2人の子を同校に通わせる母親のAさんは言います。
 Aさんによると、朝礼の内容は保護者には事前に知らされず、児童らもその日の朝礼で校長から聞いたといいます。

憲法に反する内容押し付け

 市民団体「子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会」は、校長が新天皇を「126代」と紹介したのは「歴史的事実に反する」とし、歌われた歌も「神話上の天皇を賛美し、国民主権に反する」と指摘。「憲法に反する内容を子どもたちに押し付けた」として校長と、校長を任命し児童朝礼を実施させた大阪市教委に抗議しています。

多面的指導を市教委が指導

 大阪市教委によると、歌手を招いたのは校長で、歌手への謝礼は支払われていません。
 市教委からの聞き取りに対し小田村校長は、一面的な指導はしていないと回答。市教委は「引き続き多面的に指導を」と指導し、今回の問題で「処分は考えていない」としています。
 区内の別の学校に子どもが通うBさんは、「弟が戦死した沖縄出身の祖母は、気がついたら戦争になっていた、『日の丸』、『君が代』は、悲惨な戦争を思い出してしまうとよく話していました。それを思うと、学校や幼稚園でも国旗や国歌が付きもののようになっていることにも、疑問を感じます。戦争への道は教育を変えることから始まるとも聞くし、おかしいと思ったことに声を上げていきたい」と言います。
 小田村校長は元銀行員。府、大阪市の公募民間校長で採用され、大東市立小学校長を経て、泉尾北小校長になりました。

戦後民主教育攻撃する校長

 小田村校長は昨年12月、元吹田市議のインターネット番組で、「君が代」を歌わない保護者を「わけの分からない」呼ばわりし、「戦後教育でなっちゃった」と発言。元市議は、「国歌を歌わない人は全員イスラエルに送り込んで、イスラエル人と対話してほしい」「国歌を歌いたくないという人は、災害とかがあっても、自衛隊とかに助けもらったら駄目」などと語っています。
 Aさんは、「私は国旗や国歌には抵抗ありません。だけど、今回のように戦時中かと思うようなものを、子どもたちに教えるのはやめてほしい」と話しています。

あってはならないこと 憲法に基づく教育こそ
背景に安倍政権と維新政治

大阪教育文化センター 山口隆事務局長

 この問題は、文部科学省通知をも逸脱し、特定の考え方を子どもたちに押し付け、子どもたちの内心の自由を侵害するという大きな問題を持っています。憲法に基づく教育が求められているもとで、教育の場にあってはならないことであると考えます。
 こうした問題が引き起こされた背景には、2つの問題があります。
 1つは、現行学習指導要領で、伝統・文化が強調され、国語では神話を教えよとされたことです。現行学習指導要領は2008年につくられたものですが、その2年前に第1次安倍内閣の下で、教育基本法が改悪され、第2条で、教育の目標として、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とされたことが反映しています。
 2つは、いわゆる「君が代強制条例」があります。維新政治が進められてきた大阪では、大阪府でも大阪市でも、維新の会によって、2011年にこの条例が強行されました。
 つまり、教育に対する政治介入を強める安倍政権と維新政治が背景を形づくっているのです。教育に対する政治の介入を許さない取り組みを強めることが重要です。

(大阪民主新報、2019年7月14日号より)

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