おおさかナウ

2018年10月14日

「慰安婦」像の設置めぐり
60年の歴史無視して姉妹都市解消
吉村大阪市長 サンフランシスコ市に通知

サ市長「一人の市長が一方的に関係を終わらせることはできない」

米サンフランシスコ市のセント・メアリーズ公園に建つ「慰安婦」像

米サンフランシスコ市のセント・メアリーズ公園に建つ「慰安婦」像

 吉村洋文大阪市長は、米サンフランシスコ市に設置された旧日本軍「慰安婦」像をめぐり、60年以上にわたって続いてきた両市の姉妹都市関係を解消することを2日、サ市のロンドン・ブリード市長に通知しました。

 「慰安婦」像は、中国系・韓国系米国人らの民間団体が、昨年9月、同市内の民有地に設置。10月に市に寄贈され、サ市議会が全会一致で寄贈を受け入れる決議を可決しました。吉村市長は、像の碑文に「数十万人の女性が性奴隷にされた」と書かれていることなどについて、「日本、大阪に対するバッシング」と主張し、サ前市長が決議を承認したことを受けて、姉妹都市関係の解消の意向を示していました。

 吉村市長は、サ前市長の急死で解消の手続きを延期していましたが、今年7月、前市長の方針への見解を質す書簡を現市長に送り、9月末までの回答を求めていました。書簡では、「設置された碑文には不確かで一方的な文言が含まれており、歴史の直視ではなく単なる政治的な日本批判であり、サンフランシスコ市の現地コミュニティーに分断を持ち込む」「貴市の決定に依り、長年にわたって築き上げてきた友好関係の礎である両市の信頼関係は根本から崩れた」と述べています。

 吉村市長の書簡を受け取ったロンドン・ブリード市長は、4日、声明を発表しました。

 声明では、「一人の市長が一方的に、我々2つの都市の人々の中に、60年以上にもわたって存在してきた関係を終わらせることはできない」とし、「『慰安婦』像は、性奴隷制や性売買の恐怖に耐えることを強いられてきた、すべての女性たちのたたかいを象徴するもの。この碑によって、私たちは忘れてはならない出来事や教訓を思い起こすことができる」と述べています。

「言語道断」よくする会が声明

 大阪市をよくする会は9日、抗議声明を発表しました。

 声明では、「60年にわたって両市の市民が、文化、経済など様々な分野で交流を重ねてきた関係を、自らの『歴史認識』に基づいて一方的に姉妹都市関係を解消するなど言語道断」だとし、「世界の流れを見るならば、吉村市長の態度はまことに恥ずべき行為であり、国際感覚が全く欠如している」と指摘しています。

 今後とも両市の市民レベルでの交流が発展することを願うとともに、「次期市長選挙では、再び姉妹都市提携を結ぶ市長の誕生を目指して奮闘」するとしています。

「慰安婦」像めぐる動き

 「慰安婦」像をめぐっては、2015年に橋下徹大阪市長(当時)が、サ市の「慰安婦」の碑または像の設置を支持する決議案に対して反発。以来、像と碑の設置や公有地への移管を行わないよう求めてきました。

 国会でも、安倍首相がサ市への寄贈について、「わが国政府の立場と相容れない極めて遺憾なこと」とし、サ市に対して拒否権の行使まで求めていました。

 姉妹都市解消問題では、サ市と交流してきた市民団体をはじめ、多くの大阪市民から反対の声が寄せられました。解消撤回を求めるインターネット署名なども取り組まれてきました。

 市議会では、共産、自民、公明が反対を表明してきました。

(大阪民主新報、2018年10月14日号より)

月別アーカイブ