おおさかナウ

2018年07月01日

声を届けて
たつみコータロー参院議員の国会論戦
貧困の連鎖断つために
 生活保護制度の運用改善求める

 「学びたいという学生を応援するのは厚労省だけの問題でなく、文科省の役割も大きい」「進学を希望する学生が経済的理由で諦めざるを得ないということがないよう文科省、国が支援するべきだと思います」

 たつみコータロー議員は2014年4月7日の参院決算委員会で、生活保護制度に関する枚方市の資料などを示し、高校生のアルバイト収入の未申告が不正受給と扱われる問題を取り上げました。

 質問の中で、生活保護世帯や低所得世帯の子どもに対する高等教育進学を支える予算が少ないと指摘。親から子への貧困の連鎖を断ち切る重要性を強調し、大学授業料の引き下げや無償化に踏み出すべきだと政府を質しました。

バイトが「不正」に

Aさん母娘を紹介した「守る会」の機関紙「かけはし」

Aさん母娘を紹介した「守る会」の機関紙「かけはし」

 生活保護制度は、世帯収入が最低生活費を下回った場合に、その差額を保護費として支給します。

 このため受給者は世帯構成員すべての収入を申告する必要があり、世帯収入の変動によって保護費は増減される仕組み。高校生のアルバイト代は用途によって「収入認定」されて、保護費が減額されてしまいます。

 高校生が親に内緒でアルバイトをしたケースや、規則を知らず収入が未申告になった場合など、不正の意図がなくても税務調査などの手続きを経て、収入分の保護費返還を求められることもあります。

 厚生労働省は2012年、会計検査院の指摘も受けて、不正の意図があったかどうかにかかわらず、未申告収入を「不正受給」とし、収入額を全額費用徴収する方針を示しました。

 13年、枚方市のシングルマザーA子さんは、高校生の長男のアルバイト収入が未申告だったとして、保護費の返還を求められました。高校では吹奏楽部に所属しフルートを演奏。働き詰めの母を気遣い、料理を覚えたという長男。仕事で母の帰宅が遅れる夜、お腹を空かせた妹のため夕食の準備を欠かさなかったといいます。

 家計を支え将来のために貯金しようと長男が得たバイト代は、月額数万円。基礎控除と上積みされる未成年者控除を考慮すれば「収入認定」から除外され、全て手元に残る金額でした。

 しかし収入を申告しなかったことが、生活保護法78条違反の「不正受給」と扱われ、A子さん世帯はその後1年半にわたり、毎月1万円を保護費から返還しました。

教育の機会を奪う

 「不正受給に関しては稼働収入の無申告が一番多いわけですが、高校生のアルバイトの収入申告漏れはどのくらいあるのでしょうか…」

 政府担当者が「アルバイト収入漏れの、ちょっと件数は把握していないという現状です」と答弁したのに対し、たつみ議員が示したのが枚方市の資料。2011年に同市が「不正受給」として返還徴収を適用した就労収入の未申告103件のうち、高校生アルバイトの申告漏れは27件で26・2%を占めていたと述べました。

 たつみ議員は、「つまり4人に1人が高校生の申告漏れだった」と強調し、ケースワーカーの人員不足や多忙化を背景に、アルバイト代を収入申告しなければいけないことが周知徹底されていない問題があると指摘しました。

自立支える制度に

 「兄妹は、経済的な困難を乗り越えようと頑張る母の姿を見ながら、頼もしく成長していました。心の優しい長男は、まさかアルバイト収入が不正受給になるとは知らなかったと思います」

 自立に向けた親子の暮らしを見守り支援してきた枚方交野生活と健康を守る会事務局次長の森田みち子さんはそう話し、A子さん親子と出会った日を振り返ります。

 長男が中学進学を控えた09年3月29日。リーマンショック後の厳しい社会環境の中、守る会や日本共産党枚方市議団などが街頭で実施した相談会に、「入学式に着る制服が用意できないんです」と駆け込んできたのがA子さんでした。

 校区の学校関係者とも連携し、背丈に合わせた制服が親子に届けられ、無事に入学式を迎えることができました。

 その3年後の春。A子さんと長男が、「高校入学式の帰りです」と守る会事務所を訪れたのです。

 再び森田さんが語ります。「詰襟の学生服を着た長男の弾ける笑顔が印象的でした。働いたお金と生活保護で家計を維持するA子さんにとって、子どもの成長は何よりの喜びだったと思います。高校生が制度を十分理解せずに働いた収入を『不正受給』として全額返還させるのは、あまりにも酷な扱いではないでしょうか」(この項続く)

(大阪民主新報、2018年7月1日号より)

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