おおさかナウ

2014年02月09日

「区割り」とん挫で橋下氏辞職
都構想の破綻背景に

大義も道理もない出直し市長選 

 橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)が3日、辞職して出直し市長選に再出馬すると正式表明しました。「何の意味があるのか」など市民から出る疑問や怒りの声を意識して、記者会見では「大義がある」「民意の後押しを得る」と繰り返した橋下氏。本当にそうなのか。この間の言動から、「大阪都」構想が破綻し、追い詰められた中で自らの野望をあくまで押し通そうという、危険な狙いが見えてきます。

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「住民投票」のウソとペテン 都構想の是非は問わない?

 なぜ辞職して、出直し選なのか。橋下氏は3日の記者会見で、選挙は「都構想の是非について民意を問うものではない。都構想の是非は住民投票で決まる」と語りました。大阪市を廃止し、特別区に分割する「大阪都」構想。それ自体は争点ではないというのです。
 来年4月の「大阪都」移行に固執する橋下氏は、特別区設置の協定書(設計図)を夏までにまとめたいと主張。「設計図を示して徹底して説明に回る。その上で住民投票をやってほしい」といいます。
 「住民投票は究極の民主主義」と橋下氏。ところが国会で「大阪都」法が成立した12年8月に何と言っていたか。ダブル選で「大阪都」構想の方向性は民意を得ている以上、問題になるのは区割りだけで、「(住民投票で)過半数取れるまでは区割りを変えまくる」とうそぶきました。
 「設計図をつくらせてほしい」という橋下氏の「大義」とは、何が何でも「大阪都」構想への道に市民を引き込もうということでしかありません。

橋下・維新の行き詰まりが

 橋下氏は「住民投票で決まる」という理屈を、「大阪都」構想が一大争点となった昨年の堺市長選で何度も使いました。しかし選挙結果は「堺は一つ」「都構想は百害あって一利なし」を掲げた竹山修身市長が維新候補に圧勝。「都構想ノー」の意思が示されました。
 今回の〝辞職劇〟の発端は、橋下氏が狙った「区割り案の絞り込み」が、1月31日の法定協議会で、維新以外の各党の反対で否決されたことにあります。それまで維新と協力関係にあった公明党も、区割り案の絞り込みに反対。橋下氏は1日の日本維新の会第2回党大会で「約束違反」「宗教を説く前に、人の道に反している」などと叫びました。

追い詰められた橋下・維新

 「暗礁に乗り上げ、法定協議会が動かない」(松井一郎知事)のは、「慰安婦」暴言への怒り、堺市長選の審判、維新政治に反対する市民的な共同の広がりの中で、大阪市議会でも地下鉄・市バスの民営化案が3度にわたって継続審議になるなど、市長肝いりの重要議案が暗礁に乗り上げ、橋下氏が追い詰められているからです。

「民意」の名で無法な暴走へ

 法定協議会の終了後、橋下氏は「非常識な議論」「都構想のプロセスづくりの戦略だ」などと非難。記者会見でも「議員は(「大阪都」構想の)設計図づくりを放棄した」と攻撃し、「法定協議会が反対なら、民意、大義を得るしかない」と再出馬を正当化。同時に、再選された場合、法定協議会が反対でも「一案に絞った設計図づくりを大都市局に指示する」とまで明言しています。

民主主義踏みにじるやり方

 住民投票を実施するには府議会・大阪市議会で協定書の議決が必要ですが、維新の会が過半数に達していない中で否決されれば、「ありとあらゆる手段を考える」とも発言。「民意」を語りながら、議会も民主主義も踏みにじるやり方に、大義も道理もありません。

共同できる全勢力と総力で 共産党府委が声明

 日本共産党の山口勝利府委員長は1日、橋下氏が辞職する考えを表明したのを受けてコメントを発表。党利党略の「出直し選挙」に反対し、強行するなら市民の厳しい審判を突き付けるために、一致点で共同できるすべての勢力と共に総力を上げるとしました。
 その中で山口氏は「大阪都」構想の破綻は堺市長選での審判が下り、府民世論も「反対」が「賛成」を上回っている中で、橋下氏が民意に背いて無理に無理を重ねてごり押ししてきたと指摘。自らの政治が行き詰まった果てに市政を投げ出し、再選挙に多額の血税浪費を行うことに到底市民の理解は得られないとしました。

潔く断念せよ

 また同党の山下芳生書記局長は橋下氏の辞職表明を受けて3日、国会内で記者会見し、今回の事態の背景には「大阪都」構想が二重三重に破綻していることがあると指摘。「橋下市長は『都』構想を潔く断念すべき」と強調。「市長選に打って出るというのは極めて無責任だし、市政に新たな混乱をもたらすものだ」と厳しく批判しました。
 日本共産党府委員会は、橋下氏の野望を許さず、市民共同の力で断固として打ち破り、「大阪都」構想をストップさせようと呼び掛けています。

各団体が声明 党利党略の姿勢だ/新たなたたかいへ

 橋下氏の辞職・再出馬表明を受け、大阪市をよくする会の福井朗事務局長は3日発表したコメントで、橋下氏が仮に再選されても議会や法定協議会の構成は変わらず、任期も来年12月までしかないと指摘。道理もなく税金を浪費し、市政と議会に混乱をもたらす橋下氏の党利党略の姿勢を厳しく指弾すると共に、明るい民主大阪府政をつくる会と合同で設置した共同闘争本部を中心に、「大阪都」構想ストップ、維新政治打破へ幅広い共同をつくり上げ、全力を尽くすと表明しています。
 新婦人府本部は4日アピールを出し、「慰安婦」暴言で内外の批判を受けても居直り続ける橋下氏をあらためて批判。「『都構想』がとん挫し、思い通りにいかないことで『出直し市長選』をするという今回の暴挙は、何の道理もないばかりか、ひらきなおりのわがままそのもの」と強調。大阪の市民パワーで維新との新たなたたかいに臨むと表明しています。
 大阪府関係職員労働組合(府職労)執行委員会も4日、声明「無責任な辞職表明に抗議し、『大阪都』構想の断念、府民・市民の願いに応える府政・市政の実現を求めます」を出しました。

 

(2014年2月9日付「大阪民主新報」より)

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