おおさかナウ

2017年04月02日

大阪市議会
市営交通廃止を強行
山中議員 「何の道理もない」

反対討論に立つ山中氏=3月28日、大阪市議会
反対討論に立つ山中氏=3月28日、大阪市議会

 大阪市議会は3月28日、吉村洋文市長(大阪維新の会政調会長)が提案した公営としての地下鉄・バス事業を廃止する条例案と、民営化のための議案を維新、自民、公明などの賛成多数で可決しました。日本共産党大阪市議団を代表して山中智子議員が討論に立ち、条例案は市バス事業を切り捨てると同時に、1600億円もの現金・預金をもつ超優良企業である地下鉄事業の株式上場・売却を図るものだと批判。「市営交通事業の廃止には何の道理もない」と反対しました。

〝超優良企業〟なぜ売却

バス路線や便数維持の保証なし

 山中氏はバス事業の1927年以来90年の歩みに触れ、一般会計からの支援とバス・地下鉄一体の交通ネットワーク構築の観点から地下鉄の支援を受けて、市民の要望・期待に応えるべく努力を積み重ねてきたと振り返りました。

 その上で、橋下徹前市長の民営化方針で地下鉄からの支援の打ち切り、路線・便数の大幅削減が強行され、土地信託事業「オスカードリーム」の失敗の責任を押し付けてバス会計を破綻に追い込んだことは暴挙だと批判。民営化後は530両のバス車両を地下鉄新会社から賃借し、現在の路線や便数が維持される保証もないとし、「バスの民営化は一片の道理もない」と断じました。

1600億円の資金使い果たす

 地下鉄の民営化について山中氏は、バス事業を支援する責務を放棄し、株式上場・売却に向けた利益の最大化、有利子負債の低減のために、輸送の安全・安心を置き去りにし、今里筋線の延伸の事実上の中止など、公営地下鉄事業の責務を投げ捨てるものだと力説。交通局職員の退職金1千億円の支払いなど民営化の諸費用で、1600億円もの手持ち資金を70億円を残して使い果たしてしまうことは、「最も許しがたい」と強調しました。

 さらに民営化で新会社から一般会計への固定資産税の納付や株式配当などがあるものの、地方交付税の減少などがあり、財政上の貢献はわずか40億円にすぎないと指摘。公営企業として、地方公営企業法に基づいて一般会計からの出資金に対する納付金(60億円)を納めた方が、あらゆる面でプラスになるのは明白だと述べました。

新会社の経営は綱渡りの可能性

 最後に山中氏は、交通局による公営・民営の収支比較試算でも、公営のままで問題がないことを示し、「70億円の運転資金しかもたない民営のほうが大変。まさに綱渡りともいえる厳しい経営状況に立たされる可能性が十分ある。公営事業として引き続き発展させていくことが市民にとって、あらゆる面でプラスになる」と主張しました。

来年4月に新会社

廃止条例の可決で、大阪市は来年4月に地下鉄・市バスを民営化します。民営化は橋下前市長が、公営としての事業を廃止する条例案を2回提案しましたが、可決には市議会の3分の2以上の賛成が必要で、いずれも維新以外の反対多数で否決されました。

 その後、民営化の内容を議会の議決事項とする「手続き条例」を制定。橋下氏の跡を継いだ吉村市長は地下鉄・バスの「民営化基本方針」を提案し、バスは昨年3月、地下鉄は同年12月に可決されました。

 廃止条例の可決で鍵を握っていた自民党は、「基本方針への賛成は廃止条例とは別」としていましたが、民営化後に交付税措置が継続されることが明らかになったなどとして、賛成に転じました。

完全民営化が理想
吉村市長

 新会社は大阪市が株式を100%保有。吉村市長は「任期中の上場・売却は考えていない」とすると同時に、「将来的には完全民営化が理想」と公言。株式上場・売却は議会の過半数の賛成で可能になります。

(大阪民主新報、2017年4月2日付より)

 

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