おおさかナウ

2017年01月29日

「部落差別解消法」強行と大阪のたたかい
時代錯誤、有害無益の「部落差別解消法」

 

日本共産党国会議員団の論戦を力に悪法実行ストップを

 第192臨時国会で成立した「部落差別の解消の推進に関する法律」の問題点と日本共産党国会議員団の論戦、実行を許さないたたかいについて、党府委員会自治体・地方議員相談員の丸野賢治さんの寄稿文を紹介します。

日本共産党府委員会自治体・地方議員相談員 丸野賢治

丸野賢治氏

丸野賢治氏

 昨年の第192臨時国会で、自民などの議員立法で「部落差別の解消の推進に関する法律」が成立しました。同法は「現在もなお部落差別が存在する」(第1条)するとして、国に「部落差別の解消に関する施策」を、自治体に「地域の実情に応じた施策」として「相談体制」「教育啓発」「実態調査」の実施を求めるものです。

 これは、解決段階にある部落問題を国と行政が掘り起こし、永久・固定化する時代錯誤、有害無益の法律です。同時に、「解同」(部落解放同盟)による、自治体と教育介入、同和行政復活、同和特権拡大の新たな”根拠”とされる重大な危険性を包含しています。

 部落差別解消法の誤りを府民的に明らかにし廃案を目指すとともに、府下自治体で同和行政、「同和特権」の復活を許さないたたかいを強めることが求められています。このたたかいを進める上で、躍進した力を大いに発揮した、党国会議員団の国会論戦が大きな力となります。

同和問題の到達点から逆行

部落差別解消推進法案を廃案にと開かれた学習会=2016年7月、大阪市西区内

部落差別解消推進法案を廃案にと開かれた学習会=2016年7月、大阪市西区内

 「部落差別解消法」は第1に、同和問題の到達点を乱暴にひっくり返した立法です。

 同和問題は、1969年の同和対策事業特別措置法以来2002年まで実施された同和対策事業によって、環境など地域内外の格差は解消され、同和地区内外の混住も大きく進み、「旧身分」にこだわらない意識の大きな変化などで基本的解消段階に至っています。

 大阪では2兆円に近い同和対策事業が実施され、同和地区内外の格差は解消されました。住民の意識の変化もあり、もはや「同和地区」という実態は崩壊しています。2000年に府が調査した1991年以降の婚姻では「夫婦とも同和地区出身者」は12・2%であり、近年では、大阪府もこのような調査そのものを「不適切」としているほどです。
 大阪府は「民主主義と人権を守る府民連合」(民権連)に対し、2007年時点で「同和」「同和地区」という呼称は「極力使用しない」と約束。同様に教育委員会も「被差別部落はあるのかと聞かれたら、今、被差別部落なんてないよと答える」と回答しています。

 2002年の同特法以来の法終了に当たって政府審議会は、これ以上の同和特別対策の継続、「解同」の差別糾弾など誤った運動団体の行動、「解同」言いなりで主体性を放棄した行政のあり方こそが、「差別解消の新しい阻害要因」と認めました。今回の法制定は、こうした部落問題、同和行政の到達点を否定するもので、全くの時代錯誤の代物です。

何が「部落差別」かも定めず、「解同」の逆流策動の口実に

 第2に重大なのは、法律で初めて「部落差別解消」とうたいながら、何をもって「部落差別」かということを全く規定していないことです。このため、何が「部落差別か」をめぐって出身地を先祖にさかのぼって判断という事態すら起きかねません。しかも同法は、これまでの同特法などが「時限を切った法律」によるものであったのに、期限を切らないものです。民権連などが「部落差別永久化法だ」として、満身の怒りを込めて批判したのも当然です。

求められる行政の主体性

 かつて「解同」は、部落差別について「部落にとってのいっさいの不利益は差別」という規定をして、逆差別といわれるまで同和特権を肥大化させました。また、「同和行政は窓口一本化」などとし、行政へ暴力的介入を行い主体性を奪ってきました。しかも「解同」は「差別糾弾闘争」について反省をしていません。法制定によって「部落差別は現存し、地方公共団体は地域の実情に応じた施策を推進する」という法文を〝根拠”にして、啓発、教育、実態調査を手がかりに同和行政の復活策動が予想されます。行政の主体性の堅持が厳しく求められています。

日本共産党国会議員団の論戦の到達点を生かして

 同法はそもそも、第190回国会の閉会まじか、“どさくさまぎれ”に議員立法として提案され、しかも国会審議抜きに一気に成立が狙われたものです。

 これに対して日本共産党の清水忠史議員が抗議して徹夜の準備で質問を行い、継続審議に追い込みました。さらに192国会では他党も質問をせざるを得なくなり、日本共産党は衆院で藤野、参院で仁比両議員が質問に立ちました。また、民権連や自由法曹団を含む参考人の意見聴取も実現しました。躍進した党議員団の論戦が大きく国会を動かしました。

 その結果、今後の事業について「この法律の中で再び財政出動を復活させるというようなことを…全く考えておりません」、「解同」の差別糾弾、行政介入は「差別意識の解消を阻害し、そしてまた新たな差別意識を生む要因となり得ると強く認識」など提案者に答弁させています。

 また、法律には「部落差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議」が付けられ、実施に当たっての3項目の留意事項が付けられました(別項参照)。そこでも、国民の理解が求められ、運動団体の行き過ぎた言動への対策、教育、啓発、調査が新たな差別を生まないように注文を付けています。

 このような付帯決議を付けざるを得ないという事実が、この法案の危険性も浮き彫りにしています。各自治体の到達点を踏まえながら、部落差別解消法の誤りを明らかにし、府下自治体で行政の主体性の堅持、同和行政の復活を許さないたたかいを強めることが新たな課題になっています.

(まるの・けんじ)

 

別項
部落差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議

 国及び地方公共団体は、本法に基づく部落差別の解消に関する施策を実施するに当たり、地域社会の実情を踏まえつつ次の事項について格段の配慮をすべきである。

1、部落差別のない社会の実現に向けては、部落差別を解消する必要性に対する国民の理解を深めるよう努めることはもとより、過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講ずることも併せて、総合的に施策を実施すること。

2、教育及び啓発を実施するに当たっては、当該教育及び啓発により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等に配慮すること。

3、国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等について慎重に検討すること。


(大阪民主新報、2017年1月29日付より)

 

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