おおさかナウ

2016年11月06日

民営化は歴史に禍根
地下鉄は公営で維持・発展を
大阪市議会 井上共産党市議団政調会長が追及

 10月26日の大阪市議会本会議で日本共産党の井上浩政調会長が一般質問に立ちました。焦点になっている市営地下鉄の民営化問題で井上氏は、黒字の地下鉄を投げ出すことに道理はなく、民営化すれば可動式ホーム柵も進まないと追及。吉村洋文市長はまともに答弁せず、民営化方針の破綻と行き詰まりが浮き彫りになっています。

吉村市長 まともに答弁できず

貴重な公有財産 投げ捨てるのか

 「地下鉄民営化の、市民にとってのメリットは何か」――井上氏が単刀直入にただしたのに対し、吉村市長は「経営の自由度を向上し、経営力を強化する」「交通事業以外の新規事業を展開することも可能になる」と答弁しました。

維持・発展させることに全力を

一般質問に立つ井上議員=10月26日、大阪市議会本会議場

一般質問に立つ井上議員=10月26日、大阪市議会本会議場

 井上氏は、地下鉄は2011年度に全国の市営交通で初めて累積赤字を解消し、いまや累積黒字は1186億円、純資産は5382億円に達していることを示し、「好調な経営は都市の発展の象徴であり、これを維持・発展させることに全力を傾注するのが市長の責務だ」と強調しました。

 さらに16年度の純利益は374億円に上るとして、「市営交通は市民の公有財産。民営化は企業活動(地下鉄事業)の権利・義務・資産の所有権を放棄すること。民営会社からの納税や配当のおこぼれを『ちょうだい』する関係に大きく後退するもので、市財政にとっても重大な損失だ」と述べました。

可動式ホーム柵設置は進まない

 井上氏は、地下鉄事業を実施する政令市8市中、仙台・横浜・福岡の3市はすでに全駅に可動式ホーム柵を設置している一方、大阪市の設置率(39%)はワースト2だと指摘。19年度までとなっている御堂筋線全駅への設置を計画通り行うべきだが、民営化すれば多額の資金問題に直面し、予定どおり進まないのではないかとただしました。

もうかるところに投資する民間

 吉村市長は「安全輸送への投資は公営・民営を問わず、交通事業者の責務」などの答えに終始。井上氏は、民営化後の新会社の建設改良計画には可動式ホーム柵の事業費をまったく見込んでいないことや、民営化を前提にしたことで設置を止めた現実があると批判しました。

 また南海電鉄の大阪市内18駅中、8駅が無人駅となっている問題を紹介。南海側は安全対策を求めても「経営が厳しい」の一点張りで改善しない一方、有料老人ホームの経営を行っているとし、「もうかるところに投資するのが民間会社の宿命だ」としました。

新会社の経営は資金繰りに汲々

 井上氏は、「民営化プラン案・改訂版」の資金計画は、現在の地下鉄会計から新会社の運転資金として70億円だけ残し、民営化の移行処理のために交通局職員への退職金などで1492億円もの現金を使い果たし、企業債の一括返済のために市中銀行から4719億円も借り入れるものだと指摘。プラン案への自民党の賛成を取り付けるために吉村市長が突然提案した「交通政策基金」(100億円)は、「改訂版」で想定されておらず、試算の前提が崩れているとして、練り直して市議会に諮り直すべきだと主張しました。

議論に堪えられない数字合わせ

 吉村市長は答弁でプラン案の「修正」を表明しましたが、井上氏は、「(新会社は)資金繰りに汲々(きゅうきゅう)とし、安全対策もおぼつかないからこそ、可動式ホーム柵の事業費が見込めない。こんな数字合わせのシミュレーションは到底議論に堪えられない」と断じました。

 

(大阪民主新報、2016年11月6日付より)

 

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