おおさかナウ

2016年09月11日

大阪府福祉医療費助成制度
患者負担増なしでの制度拡充を

 日本共産党大阪府委員会が8月25日開催した「地方議員研修会」で、くち原亮府議が大阪府福祉医療費助成制度について発言しました。その発言を紹介します(一部加筆)。

日本共産党大阪府議団幹事長 くち原 亮

 大阪府は今、乳幼児・ひとり親家庭・障害者・老人が対象の福祉医療費助成制度の改定を進めています。助成対象を一部拡大するものの、必要経費は患者負担増や対象者の一部を外すことでまかなう方向です。

制度改定の方向
患者負担増と対象者外し

府会東大阪市_くち原亮 現行の福祉医療費助成制度は、1回かかれば患者の窓口負担は500円、1医療機関あたり月1千円の負担上限です。複数の医療機関にかかったとしても月2500円の負担上限で、超えた分は患者に還付されます。
 ところが現在、この制度の改定案が、府と市町村の代表による「研究会」を踏まえて、まとめられつつあります。

 その内容は、第1に、これまで対象になっていなかった精神障害者1級と重度難病患者を対象に加えます。精神障害者は入院も3カ月までは助成します。医療機関が行う訪問看護はこれまでも助成対象でしたが、訪問看護ステーションによるものも2017年1月から対象に加えます。
 一方で「老人医療費助成制度」を実質廃止し、65歳以上で精神1級以外の精神通院患者や重度以外の難病患者など約3万6300人が対象外になります(18年8月までは経過措置を設ける)。

 第2に、対象拡大によって増える費用は、府が負担するのではなく、患者の負担増でまかないます。
 現在の患者の窓口負担額は、1回通院して調剤薬局で薬をもらっても500円です。ところが見直し案では、1回500円は変わりませんが、病院の窓口だけでなく調剤薬局でも負担が必要になります。1医療機関あたり月2回分(1千円)の負担上限もなくなります。複数の医療機関にかかった場合の月2500円の負担上限も、具体的な数字は示されていませんが、平均すれば4500円程度に引き上げられるとも言われています。
 ひとり親家庭や乳幼児医療費助成制度利用者の受診日数は月平均3・7〜4・3日です。これまでは1医療機関なら何度受診しても月々の自己負担は1千円以内でしたが、3千円、4千円とかかることになります。ある難病患者の方は、「還付されるとはいえ上限が4500円に上げられれば、通院交通費の負担もあり、受診抑制につながりかねない」と述べていました。
 なお、各助成制度の対象者の所得制限基準は変更しない方向です。

 府は、早ければ17年11月にも見直しを実施したいとしており、市町村でも来年度予算、あるいは補正で提案される可能性があります。

福祉医療費助成とは
制度をめぐる経過

日本共産党府委員会が開いた地方議員研修会=8月25日、大阪市内

日本共産党府委員会が開いた地方議員研修会=8月25日、大阪市内

 福祉医療費助成制度は、72年に全国に先駆けて黒田革新府政が実施した老人医療に始まり、スタート時期はそれぞれ違いますが、府民福祉の制度として定着してきました。

 04年11月に一部自己負担が導入されるまでは患者の窓口負担は無料でした。

 09年2月議会で橋下知事(当時)は、1回500円の自己負担を800円にしようとしました。医師会や歯科医師会などの運動、府民世論や議会論戦によって、議会最終日に提案が取り下げられ、改悪を阻止しました。

 その後、府は国の動きを見極めていこうと、特に大きな動きを見せませんでしたが、乳幼児医療費助成制度は、府民要求や議会論戦、維新の〝実績づくり”の意図もあり、15年4月に「拡充」されました。これまで通院は0・1・2歳だけの助成だったものを就学前まで拡充する一方で、所得制限を厳しくし、従来は4人世帯で年収860万円未満が対象だったものが514万円未満に引き下げられました。

 この結果、乳幼児医療費助成への府の補助額は、14年度36・6億円あったものが15年度は34・3億円に減少しています。大阪市への補助も約6千万円、堺市へも約800万円減っています。府はこの補助にプラスして「新子育て支援交付金」年間約22億円を創設し、一定の拡充としましたが、「就学前までの拡充を」という府民や市町村の期待に十分応えたものとはいえません。

負担増許さない論戦と共同の
運動を

 府が新たな負担をすることなく制度を見直す、費用増は患者負担でまかなうというのが府の考えです。しかし、府に財源を負担する能力はあります。

 今回の見直しでの府の費用増は20億〜30億円程度です。府の一般会計予算は年間約3兆円ですから、家計にたとえれば月にコーヒー1杯分のやりくりで可能な範囲です。

 この間、維新府政では太田府政時代に取り崩してきた「減債基金」=借金返済のための積立金を復元していくということで、毎年数百億円規模で積み立てています。これを4年先延ばしするだけで、年間約95億円以上の財源確保が可能です。用途が限定されない基金も約1600億円あります。要は、暮らし優先の立場で財政運営をおこなうかどうかです。

 福祉医療費助成は市町村と府の折半です。各市町村で、財源の裏付けも具体的に提案し、負担増なしでの制度拡充を求める論戦と共同の運動を強めていただきたいと思います。
 党府議団としても、9月府議会に向け、医療・福祉関係団体との懇談なども進めながら、府民世論で負担増計画を阻止する決意です。

(大阪民主新報、2016年9月11日付より)

 

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