おおさかナウ

2016年05月29日

「大阪都」構想 住民投票から1年
日本共産党大阪市議団 山中幹事長に聞く

上からの制度論ではなく
真の自治へ市民的議論を

日本共産党・山中幹事長(交通水道委員)

日本共産党・山中幹事長(交通水道委員)

 大阪市を廃止して特別区に分割する、いわゆる「大阪都」構想の是非を問う住民投票(昨年5月17日)から1年が経ちました。特別区設置は反対多数で否決され、大阪市の存続が決定。ところが昨年11月のダブル選で当選した維新の松井一郎知事、吉村洋文大阪市長は「副首都」構想の名で「大阪都」構想の復活を狙うと同時に、「総合区」(注)の検討も進めています。こうした動きをどう見るのか、日本共産党大阪市議団の山中智子幹事長に聞きました。

「ノー」の判断が明確に

昨年5月の住民投票では「大阪市なくすな」「維新政治ノー」の歴史的な府民・市民共同が広がり、「都」構想否決の審判が下りました。(写真は15年5月10日に大阪市北区・扇町公園で開かれた市民集会)

昨年5月の住民投票では「大阪市なくすな」「維新政治ノー」の歴史的な府民・市民共同が広がり、「都」構想否決の審判が下りました。(写真は15年5月10日に大阪市北区・扇町公園で開かれた市民集会)

――住民投票から1年が経ちました。
山中 住民投票では「大阪市の廃止・分割ノー」の判断が明確に示されました。いまこの審判の意味をきちんととらえることが大切だと思います。
 橋下前市政の4年間は「大阪市をなくす、なくさない」に明け暮れ、市民の暮らし・福祉の向上、南海トラフ巨大地震対策など、基礎自治体本来の役割を果たす議論がまともにできず、文字通り「失われた4年間」でした。
 大阪市政に求められるのは、住民投票の結果を受け止め、市民の声を聞く仕組みを充実させつつ、市民の暮らしを応援するよう市政の中身を転換させることです。

 しかし吉村市長らは昨年11月のダブル選を前に、「都」構想再挑戦を掲げました。吉村市政の施策には5歳児教育費無償化など一部の突出したものはありますが、橋下市政時代の「市政改革プラン」による切り捨てを元に戻すことなどには、冷たく背を向けています。
 一方でカジノ誘致やなにわ筋線建設はじめ不要・不急の大型開発路線を続け、さらに橋下氏ができなかった地下鉄・市バスの民営化や大学統合などを強行するため、なりふりかまわぬ議案修正や議会との駆け引きを行っているのが、吉村市政の現状です。

根本的欠陥変わらない

――吉村市長らはダブル選での維新勝利で「都」構想再挑戦は「民意を得た」と言いますが。
山中 まったく道理がありません。ダブル選の争点は「都」構想だけではないし、「都」構想のみを問うた住民投票の結果がすべてです。橋下氏や維新の会自身が住民投票当時、「ラストチャンス」「二度とやらない」と叫んでいたではありませんか。
 維新の会は「都構想の設計図をつくり直すため」として、2月から各行政区でタウンミーティングを開いていますが、「都」構想の根本的欠陥は何も変わりません。
 大阪市は廃止され、特別区は財源・権限ともに一般市にも及ばない半人前の自治体である上、新庁舎建設によるコスト増で住民サービスの悪化は避けられないなど、市民にとって「百害あって一利なし」であることは、「都」構想論議を通じて明白になっています。「バージョンアップ」といっても、特別区の数や区割り、区の名称を変える程度のことです。
 吉村市長や松井知事は、「都」構想を進めるための新たな旗印として「副首都」構想を打ち出し、昨年末に府市で「副首都推進本部」を発足させ、ことし4月からその事務を担う「副首都推進局」を設置しました。
 「副首都」といいますが、そもそも「首都」自体に法律の定めがありません。推進本部では「副首都」の定義から議論しているありさまです。「副首都」をつくる必要があるのか、仮につくるなら、どこにつくるのかといったことは国政レベルの問題で、基礎自治体である大阪市が重点施策として取り組む課題ではありません。

「総合区」議論を道具に

――「副首都推進局」は「都」構想の「設計図」のつくり直しとともに、「総合区」案の検討を進めています。
山中 「総合区」は、公明党が積極的に検討していることをとらえて、吉村市長らは「都構想」の対案のように扱い、「副首都推進局」の所管事項とし、5区・8区・11区の3つの「総合区」案をつくるよう指示しました。ことし8月以降に全行政区で住民説明会を開く計画です。
 吉村市長らは〝「特別区(都構想)」か「総合区」かの是非を問う住民投票〟の実施にも言及していますが、こんな二者択一を迫ることはナンセンスです。大阪市廃止が前提の「特別区」は自治体ですが、「総合区」は大阪市の中で区の権限を拡充する一つの手段です。
 橋下氏はかつて、「総合区はお金がかかりすぎる」などと「特別区」の優位性を主張し、松井知事は「(住民投票で)仮に総合区が勝っても通過点であり、都構想を目指す」と公言しています。「総合区」議論を「都」構想復活の道具にするのが、維新の会の狙いです。

制度いじりに終止符を

――「特別区」か「総合区」かの制度論に終始してはいけませんね。
山中 その通りです。「都」構想自体、市民が求めたものではなく、橋下氏や維新の会が市政に持ち込んできたもの。住民投票の結果を受け止め、そうした「上から目線」の制度いじりに終止符を打つべきです。
 振り返ると、住民投票では府市合わせて約31億7千万円もの税金が使われました。「都」構想の設計図をまとめた府市大都市局の職員の人件費23億5千万円、住民投票経費6億3千万円、住民説明会資料作製1億5千万円などです。法定協議会の議論が行き詰まる中で橋下氏が仕掛けた出直し市長選(14年)には、5億2600万円がかかっています。
 いまの「副首都推進局」は府市の職員各30人の体制で、今年度予算は約7億円。不毛な「都」構想議論で税金を浪費することは許されません。
 住民投票後、市民の間では大阪市の歴史を学び、将来を考える取り組みや共同の動きが続いています。私もできるだけ参加していますが、これまでにはない市民参加の土壌が生まれているのを実感します。
 こうした環境も踏まえ、現在の区政会議や地域活動協議会、町会、地域コミュニティのあり方や、活動拠点の提供、人材配置などについて市民的な議論を積み重ねることが、真の住民自治と都市内分権を充実させることにつながると思います。

維新に参院選で審判を

――おおさか維新の会は、「大阪での維新改革を全国に広げる」と叫ぶとともに、改憲などで安倍政権の補完勢力ぶりをあらわにしています。
山中 「大阪での維新改革」とは何だったのかが問われます。大阪市政ではすでに述べたように「統治機構改革(都構想)」をめぐる不毛な「政争」に明け暮れる一方、敬老パス有料化や市バス路線の削減、国民健康保険料の連続値上げや新婚世帯への家賃補助廃止など、あらゆる世代の施策を切り捨て、市民の暮らし・福祉を破壊してきました。
 維新が「都」構想に固執するのは、それが唯一の存在理由だからです。このまま「都」構想議論を続ければ、市政の「失われた4年」は「失われた8年」になってしまいます。7月の参院選は維新とその政治に、大阪からきっぱり審判を下すチャンス。私たち議員団も、市政の転換と住民自治の発展へ「反維新」の共同を広げるとともに、参院選勝利のために全力を挙げます。

 

総合区 2014年の地方自治法改正(ことし4月施行)に伴い、政令市が現在の行政区に代えて新たに設置できるようになったもの。行政区長が一般職なのに対し、総合区長は市議会の同意を得て選ばれる特別職に格上げし、総合区内のまちづくりの権限や人事権などを持ちます。

 

(大阪民主新報、2016年5月29日付より)

 

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