おおさかナウ

2016年03月13日

貧困と格差拡大で苦しむすべての
府民を視野に要求実現を

教育・福祉・防災に背を向ける
大阪府2016年度予算案(下)

日本共産党大阪府議会議員団

医療・福祉
患者負担増は中止を

図1)府内特養定員数と    待機者数

図1)府内特養定員数と
   待機者数

 2月に福祉医療費助成制度(子ども・ひとり親・障害者・老人)に関する研究会(府と市町村の代表で構成)の報告書が公表されました。対象を精神障害者や難病患者、訪問看護ステーションが行う訪問看護などにも拡充するとしていますが、対象拡充で増える費用は子ども・障害者・ひとり親家庭などの患者負担増で賄うというものです。

 現在の自己負担は、1医療機関当たり入通院1日、500円以内(月1千円限度)、1カ月2500円を超える額は償還され、院外薬局での負担はありません。しかし今回の報告書では、院外薬局でも負担を求め、また1回の負担を500円・800円・1割にする選択肢を示すとともに、1カ月の負担上限を2500円から引き上げることも検討するとしています。

 精神障害者や難病患者への拡充は当然ですが、それに必要な財源を現在の対象者の負担を2倍以上にして賄うなどはとんでもありません。拡充に必要な費用は年間20~30億円程度で、3兆円を超す財政規模の大阪府なら財源確保は十分可能です。

 ことし8月頃に府の案が示され、17年度府予算で具体化されます。実施は早くて17年11月ですが、市町村議会でも並行して議論されます。今後、精神障害者への通院と一定期間の入院への助成を拡充するとともに、患者負担は増やさないよう求める大運動が必要です。

 児童虐待対応件数は5年連続全国ワースト1です。府子ども家庭センターの児童福祉司も増員されてきたものの、1人当たりの対応件数は141件と維新府政前の1・5倍になっています。年間1千時間を超える時間外勤務も珍しくありません。新年度から「軽度」事案の一部を外部委託しようとしていますが、専門職員増員で対応するべきです。また、児童福祉司配置への国補助の大幅な引き上げを国に求めるべきです。

ezpdf.snapshot.10 要支援1・2の訪問介護と通所介護を保険から外し、市町村の「新総合事業」に丸投げする介護保険改悪が進んでいます。国が「介護離職ゼロ」を掲げてつくった基金を活用し、新年度予算と15年度補正予算の合計147・2億円で、地域密着型サービス施設等の整備(約127・8億円)や介護人材確保等(約19・4億円)を進めるとしています。

 また新年度は、地域密着型特養609人分、認知症グループホーム969人分の整備を予定しています。しかし特養ホームは維新府政の7年間(08年度~14年度)で広域型・地域密着型あわせて5923人分しか増えていません。大阪の特養待機者は、国基準より厳しい要介護4・5を主な対象としているにもかかわらず8601人もいます(15年5月)(図1)。1人分当たり100万円も削減した広域型特養建設への補助を段階的に復元しつつ、国補助の強化を求めるべきです。さらに、大阪ではすでに定員18人以下の通所介護事業所が減り始め(昨年4月~今年1月の廃止件数は前年同期の1・6倍)、通所介護事業所の定員数は横ばいです。高齢化に伴い介護のニーズが年々高まっているなか、通所施設が足りていないことが懸念されます。

 また、介護職などは他職種より月平均11万円も賃金が低く、この改善なしには施設を増やしても人材不足が解消できません(図2)。

 保育所や認定こども園、小規模保育施設を15年度の2倍以上つくり、保育士の給与を1・9%引き上げるとしていますが、〃焼け石に水〃で、人員不足、とりわけ経験豊かな保育士の不足を解消できる見通しはありません。

 大阪市立住吉市民病院を廃止し、地域の産科・小児科病床削減や2次救急廃止につながる大阪市南部の病院再編計画が、松井一郎知事が塩崎厚労大臣に直訴し、厚労省への申請が認可されました。住民や子育て世代、地元医師会がこぞって反対し、府医療審議会でも賛成は維新府議1名のみの反対多数だった計画が認められるのは前代未聞です。介護・医療などの安倍政権と維新府政の一体となった悪政ストップが必要です。

雇用・経済
府民の懐温めてこそ

図3)削減されたものづくり・小売商業支援予算

図3)削減されたものづくり・小売商業支援予算

 中小企業や商店街は大阪経済を動かし支え、また雇用やまちづくり、地域コミュニティを形成する重要な役割を担っています。ところが維新府政以降、ものづくり中小企業支援予算や商店街振興予算は大幅に削減されてきました。

 ものづくり支援関連予算は、維新府政発足前は約9・2億円(07年度)だったものが、新年度予算では約2・4億円と15年度予算よりもさらに削減され、維新府政前の約4分の1となっています(図3)。厳しい経済環境で後継者不足も深刻化する中、大阪の強みであるものづくりの高い技術力と集積の力を守り発展させていくためにも、大幅な予算拡充、支援強化が求められています。

 また、商店街振興のための小売商業関連予算も、新年度予算では約3千万円と今年度よりも削減され、維新府政前(07年度)の約2・1億円の7分の1へと激減しています。市町村と連携・協力した抜本的な支援強化が必要です。

 中小企業向け制度融資の「開業サポート資金」の金利が0・2%引き下げられますが、さらに引き下げるとともに、中小企業への金融支援をさらに強めるべきです。

 アルバイトで違法性のある働き方をさせられている大学生等が6割近くに上っている(厚労省調査結果・15年11月)など、ブラック企業やブラックバイトが社会問題となっています。府の労働相談窓口は平日は夕方まで、夜間相談は月4回8時までと極めて不十分です。

 新年度は「OSAKAしごとフィールド」での青年や女性の就業支援拡充、中小企業の魅力発信、合同説明会開催などが国の補正予算も活用して実施されます。しかし全体の規模も府独自の上乗せもわずかです。

 労働相談の人員増やメール相談も含めた拡充、雇用・労働法制の周知、ブラック企業の実態把握や「規制条例」制定などの対策を抜本的に強化することが求められています。

 また、個人消費を引き上げ景気回復させるためにも、賃上げなどを行う中小企業への支援を最賃引き上げとセットで進めることが必要です。

くらし応援・防災と
財政健全化の両立を

図4)借金返済の積立金年度初めの予定より積立額が多い

図4)借金返済の積立金年度初めの予定より積立額が多い

 地方自治体は、「実質公債費比率」(収入に対する借金返済の割合)が18%を超えると「起債許可団体」となり、新たに借金をするには総務大臣の許可が必要になります。大阪府では2011年度から実質公債費比率が18%を超えています。しかしこの段階で直ちに府民が不利益を被るわけではありません。

 府は新年度以降、借金返済のための積立金を毎年280億円ずつ増やし、20年度には実質公債費比率が16・7%に下がり「起債許可団体」でなくなり、24年度には積立金不足を解消するとしています。「次世代にツケをまわさないためにはこれが必要」というのが維新の会の主張です。

 しかし、毎年の積立額を185億円に減らせば、年95億円の財源が生まれ、暮らしや福祉にまわせます。この場合でも、20年度には「起債許可団体」でなくなり、28年度には積立金不足が解消します。毎年280億円も積立金を増やす根拠はありません。しかも府はこれまでも、年度初めの予定よりも実際には多額を積み立ててきました(図4)。

 現在の府の借金の多くは90年代の大型公共事業の失敗によるものです。りんくうタウンだけでも損失額は4千億円以上にのぼります。維新の会の府政はそのツケを府民に押しつけてきました。「身を切る改革」はそれをごまかすためのものです。暮らし応援、防災型公共事業への転換で大阪を活性化しながら府財政健全化をはかることが大切です。

 松井知事は、来阪する外国人観光客の増加を自慢しますが、これは円安にもよる全国共通の現象です。円安は物価を上げ、くらし悪化につながっています。また日本人の関空からの海外渡航者数は、暮らしと経済の困難を反映し、この3年で16%も減っています。観光業振興は必要ですが、府民の暮らしの応援こそが府の最も大事な仕事です。

 安倍政権の暴走にブレーキをかけるどころか府民いじめやカジノ誘致など悪政の先兵となっている維新府政ストップのためにも、日本共産党府議団は参院選での前進に全力をあげる決意です。

(大阪民主新報、2016年3月13日付より)

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