おおさかナウ

2016年02月28日

「副首都」の名で都構想推進
府・大阪市が当初予算案

 大阪府が18日、来年度の当初予算案を発表。翌19日には大阪市が当初予算案を発表しました。大阪維新の会の知事・市長の両予算案は、いずれも「副首都」の名で「大阪都」構想を推進するものとなっています。

カジノに固執し開発優先

大阪府 〝二重庁舎〟そのまま

 大阪府は2016年度当初予算案を18日に発表しました。予算規模は一般会計3兆2772億円、特別会計1兆4830億円で計4兆7602億円。松井一郎知事は記者会見で「西日本随一の都市としての大阪のポテンシャルを生かし、日本の成長をけん引するために副首都大阪を確立する」などと述べました。

なにわ筋線の検討を進める

 猪瀬直樹前東京都知事や堺屋太一元経済企画庁長官らを特別顧問に迎えた副首都推進本部の下、大阪市と共同で職員60人程度で設置する副首都推進局に3億8千万円を計上。
 2025年の万博誘致に向け約2千万円。カジノを中心とする統合型リゾート(IR)誘致に検討費などを盛り込みました。
 都市インフラ整備では、北大阪急行の箕面市までの延伸に2020年度までに100億円を負担(新年度は10億円)。大阪モノレールの門真市駅―東大阪市瓜生堂区間の調査設計に3億円。
 総事業費2500億円ともなる関空へのアクセス鉄道「なにわ筋線」の検討も進めています。今後は夢洲(大阪市此花区)のIR誘致候補地までのアクセス鉄道にも数千億円の事業費が見込まれます。
 リニア中央新幹線の全線同時開業実現、大阪市と共同でのうめきたまちづくりの推進予算も計上します。

中小企業支援は削減される

 新エネルギー・ライフサイエンスなど「成長分野」を対象に計6億6千万円の税優遇制度を創設。一方で中小企業支援では、ものづくり支援などの継続事業の予算は前年度から減っています。
 海外の利用者を当て込んだ国際医療交流拠点づくり促進に、3年間で1億6千万円を限度に補助しようとしています。大阪市立住吉市民病院(大阪市住之江区)の廃止を前提にする府市共同住吉母子医療センター(仮称)の整備に11億4千万円を計上しています。

学力テストに「教育庁」構想

 府立高校統廃合を強行し、高校進学の評価に使うチャレンジテストを中学校全学年で導入(2億6510万円)します。私立学校を担当する部署を教育委員会事務局の一部とし、教育長の指揮監督下に置く「教育庁」構想を提示しています。
 校内暴力が多発するなど生徒指導に大きな課題のある学校50校に、スクールカウンセラーなどの支援態勢をつくり、その学校名を公表するとしています。
 私立高校の授業料無償化は新年度以降3年間は継続しますが、全額免除になる世帯年収基準を現行の610万円未満から590万円未満へと引き下げ、年収800万円未満世帯の負担は現行の10万円から20万円へと増やし、多子世帯への助成制度をあらたに設けます。35人以下学級の拡大には背を向けたままです。

児相の業務を一部外部委託

 児童虐待の対応件数が増大し、児童相談所の職員の負担が増す中、休日夜間の受電対応や軽度事案の安全確認業務を外部委託します。府は「より重篤な事案にマンパワーを割く」としていますが、児童の家族との信頼関係を損なわないかなど、懸念されます。

防災関連事業に力を入れず

 南海トラフ巨大地震などによる防潮堤の液状化対策に前年度並みの約212億円。治水対策費は前年度から約2億円減の565億6千万円を計上しています。
 咲洲庁舎は引き続き使用するとして改修などに3億5千万円を計上しています。
 府債発行残高は全会計で6兆2647億円と前年度から減少しましたが、08年度の5兆8400億円からは膨らんでいます。

市営交通など民営化推進

大阪市 市大府大統合目指す

 大阪市の吉村洋文市長(大阪維新の会政調会長)は19日、2016年度当初予算案を発表しました。「副首都・大阪」の名で昨年5月の住民投票で否決された「大阪都」構想を推進し、橋下前市政でできなかった市営地下鉄・バスの民営化、水道民営化、大阪市立大と府立大学との統合などを強引に進めようとしています。
 予算規模は一般会計1兆6509億円(前年度比757億円減)で、特別会計を含めた全会計は3兆6793億円(同2985億円減)。

府市大都市局後継する組織

 市税収入は、企業収益の増加に伴う法人市民税や固定資産税・都市計画税の増加により、6481億円(同83億円増)。市債発行額は1245億円(前年度比6・0%減)、全会計の市債残高は4兆3831億円(同1359億円減)となっています。
 吉村市長は、「大阪都」構想の制度設計を担った「府市大都市局」(昨年廃止)の後継組織として府市共同の「副首都推進局」(約60人体制)の設置条例案を16日に提案。当初予算では設置のために3488万円を計上しています。

医療費助成と中学給食改善

 5歳児の教育費無償化では幼稚園保育料の無料化などで25億2千万円を計上しています。
 長年の市民運動や日本共産党の論戦も反映して、子ども医療助成は対象年齢(現行15歳)を2017年11月から18歳に引き上げるとし、その経費75億9千万円を計上。
 中学校給食の改善では、温かい給食の提供などに対応できるよう、学校調理方式(自校または小学校の親子方式)を19年2学期までに全校で実施するとして、関連予算を盛り込みました。

橋下前市政の削減そのまま

 一方、橋下前市政が「市政改革」プランで強行した市民施策削減はそのまま。国民健康保険料は「負担感を府内市町村並みとする」として1%値上げし、賦課限度額は52万円から54万円(医療分)となります。橋下前市長が始めた塾代助成事業は、市内在住の中学生の5割に拡充するとして、26億3900万円を計上しています。

淀川左岸線や港湾の開発も

 開発関係では、大阪港の人工島・夢洲にカジノを核とした統合型リゾート(IR)を誘致するための調査費6300万円、淀川左岸線2期事業14億3300万円、国際コンテナ戦略港湾建設51億3300万円などを計上しています。

「一元化」に反対

岩井大私教書記長

 大阪府が「教育行政の一元化についての基本的な考え方」を府議会各会派に示したことについて、大阪私学教職員組合小中高校専門部の岩井繁和書記長が19日、見解を発表しました。
 「考え方」は教育委員会事務局に私学課を設置し「教育庁」とし、私学行政に関わる事務を担う「教育監」を設置、来年度実施するというもの。
 「見解」は、「一元化」の必要性が明らかにされておらず、私学助成拡充や私学教育充実など「私学の保護者・教職員、私学経営者の切実な願いの実現が展望できる内容ではない」とし、自主性や中立性などの危惧などを指摘。議論が必要で、新年度からの実施は拙速だとした上で、「一元化」に反対、公教育を担う立場での私学教育の充実、子ども・生徒の学ぶ権利の保障の立場に立ち、私立高校の学費無償化、私学助成の拡充を求めて奮闘すると述べています。

(大阪民主新報、2016年2月28日付より)

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