おおさかナウ

2015年06月07日

廃案しかない
「戦争法案」3つの重大問題
日本共産党 山下書記局長が訴え

「戦争法案」の3つの問題点について講演する日本共産党の山下書記局長=5月31日、大阪市福島区内

「戦争法案」の3つの問題点について講演する日本共産党の山下書記局長=5月31日、大阪市福島区内

 安倍内閣が「平和安全法制」の名で一連の法案を国会に提出し、5月26日から本格的審議が始まりました。名前は「平和安全」でも、正体は日本を「海外で戦争する国」につくり変えてしまう「戦争法案」です。日本共産党の山下芳生書記局長(参院議員)は5月30日と31日、大阪市内で4カ所の対話集会を行い、志位和夫委員長を先頭にした国会論戦で明らかになった3つの重大問題を分かりやすく説明。「日本の命運がかかった歴史的なたたかい。『戦争法案反対』の一点で世論を高め、阻止・廃案に追い込もう」と訴えました。その大要を紹介します。

重大問題1
9条踏みにじる違憲立法——「戦闘地域」に派兵

 第1は、アメリカが世界のどこであれ、かつてのアフガニスタン戦争(2001年)やイラク戦争(2003年)のような戦争を引き起こしたとき、自衛隊が、従来の「戦闘地域」にまで出掛けて米軍を軍事支援するという問題です。

これまでの歯止め外し

 これまでの自衛隊の海外派兵は、「非戦闘地域」に限られていました。テロ特措法やイラク特措法では、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる…地域」(第2条)と規定していました。

 「戦争法案」(重要影響事態法案、国際平和支援法案)では、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しないものとする」(第2条)だけになり、後半が抜け落ちています。いつ戦闘が行われるか分らなくても、いま目の前で戦闘が行われていなければ自衛隊が行ける。「非戦闘地域」の「歯止め」を外し、政府がこれまで「戦闘地域」としてきたところにまで行けるように変えようとしているのです。

イラクでも一歩手前に

 イラク戦争では自衛隊を「非戦闘地域」に送りましたが、実際に危なかったのです。陸上自衛隊はイラク・サマワで給水活動にあたりましたが、2年半活動する間に自衛隊の宿営地にはロケット弾や迫撃砲弾など14回、23発が撃ち込まれました。当時の陸上自衛隊トップは、NHKテレビ番組でひつぎを約10個持って行っていたと証言しました。

 航空自衛隊もクウェートからイラク・バクダッドまで、C130輸送機で武装した米兵を何度も運びました。空自のC130輸送機がバクダッド空港に駐機中、4発の迫撃砲弾が頭上を飛び越えたり、ミサイルに狙われたという報告もあります。「非戦闘地域だから安全」と言っていましたが、戦死者が出ず、1発の弾も撃たなかったのは奇跡に近い状態だったことが明らかになっています。

 5月27日の特別委員会で志位委員長が「攻撃を受け、戦闘に至る、その一歩手前が現実だったのではないか」と迫ったのに対し、安倍晋三首相は「そういう状況になれば退避、避難をする」などと答え、事態を深刻に考えていないことがはっきりしました。

国際社会で通らぬ理屈

 「戦争法案」では自衛隊は「戦闘地域」に行くわけですから、危険性は格段に高くなります。米軍が戦闘をしているすぐ近くまで行って武器を輸送し、弾薬を補給するのです。米軍と闘っている相手からすれば自衛隊は敵であり、攻撃の対象になるではありませんか。

 安倍首相は「その可能性が100%ないと申し上げたことはない」と言いました。自衛隊が攻撃されることがあり得るということです。さらに安倍首相は、攻撃されれば武器を使用すると認めました。武器を使えば相手は撃ち返します。まさに戦闘になります。

 イラク・サマワに自衛隊が持っていったのは110ミリ対戦車弾、84ミリ無反動砲、12・7ミリ重機関銃などの重装備。撃たれたらこれらの武器で撃ち返すことになります。

 安倍首相は「自衛隊員などの生命や身体の防護」、つまり自分の身を守るための武器の使用だと言いました。しかし国際法上、「武力の行使」とは別に、「武器の使用」という概念・定義そのものはないと外務省も回答しています。「自分の身を守るための武器の使用は戦闘ではない、武力の行使ではない」という理屈は、国際社会では通用しません。自衛隊員から戦死者を出し、他国の人々の命を奪うことになる。そんな日本にしていいのか。このことが、「戦争法案」で問われています。

武力行使と一体不可分

 戦闘している米軍に武器・弾薬・兵員を輸送し、壊れた戦車の修理や傷病兵の医療などの活動を「戦争法案」では「後方支援」と呼んでいますが、これは日本政府だけが使っている造語で、世界では「兵たん」と呼ばれる活動です。

 志位委員長は国会質問で米海兵隊の『海兵隊教本』を示しました。現在も海兵隊で使われている戦争マニュアルですが、「兵たん」の本質が記されています。「兵たんは、軍事作戦のいかなる実施の試みにおいても不可欠な部分」「兵たんなしには、計画的で組織的な活動としての戦争は不可能である」。

 さらに「兵たんの部隊、設備、施設は……軍事攻撃の格好の標的であることを認識することが重要である」「兵たんは戦闘と一体不可分である」「兵たんはいかなるまたすべての戦争行動の中心構成要素である」と書いてあります。

 自衛隊が「非戦闘地域」ではなく、「戦闘地域」まで行って米軍の「後方支援」をすることは、武力の行使を禁止した憲法9条1項に反する違憲立法であることが鮮明になりました。絶対に許すことはできません。

重大問題2
殺される危険と殺す危険——PKO法改定案

 「戦争法案」の第2の問題は、アメリカが起こした戦争の後始末のために、自衛隊が危険な任務にあたることになるということです。これは国連平和維持活動(PKO)法を改定し、①国連が統括しない活動にも自衛隊が参加できるようにする、②自衛隊の業務内容に「安全確保業務」(治安活動)と、「かけ付け警護」を新たに行えるようにする、③任務遂行のための武器使用を認めるというもの。形の上では「停戦合意」はあるが、なお戦乱が続いているような場所に自衛隊を派兵し、治安維持活動をさせる仕掛けづくりです。

ISAFで多数の死者

パネルを使って「戦争法案」の問題点を語る山下氏=5月30日、大阪市都島区内

パネルを使って「戦争法案」の問題点を語る山下氏=5月30日、大阪市都島区内

 2001年から2014年までアフガニスタンに展開した「国際治安支援部隊(ISAF)」には世界中の兵士が集まりました。治安維持が目的ですが、戦乱が残っている中で、監視や巡回中に攻撃を受けたり、自爆テロが仕掛けられるなどにより、13年間に約3500人の兵士が死亡しています。

 米兵は2331人と多いのはもちろんですが、イギリス453人、カナダ158人、フランス86人、ドイツ55人の兵士が死んでいます。

 昨年6月の「朝日」に、亡くなった各国の兵士の遺族にインタビューした記事が載っています。25歳で亡くなったカナダ兵士の父親は「ジョークだと思った。息子は戦争に行ったのではなく、治安維持に行ったのだから」と語っています。平和貢献や復興支援、治安活動のつもりでISAFに参加したのに、実際は「戦闘状態」に巻き込まれて死んだということです。

 安倍首相は志位委員長の質問に、自衛隊のISAF型の活動への参加を否定しませんでしたが、自衛隊員が「殺される」危険とともに、相手の民衆を「殺してしまう」危険もきわめて深刻です。この点でも憲法9条に反する違憲立法であることは明らかです。

重大問題3
米国の無法な戦争に参戦——集団的自衛権発動

先制攻撃は国際法違反

 第3の問題は、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動してアメリカと一緒に海外での武力行使に乗り出すということです。これは「後方支援」とは違い、戦争そのものです。

 どういうときに集団的自衛権を発動するのか。衆院本会議(5月26日)の代表質問で志位委員長は、アメリカが先制攻撃の戦争を行った場合でも集団的自衛権を発動するのかとただしましたが、安倍首相は答弁しませんでした。

 アメリカは先制攻撃を何度もやっていますが、国際法違反の侵略行為です。そこで志位委員長は5月28日の特別委員会で再度質問しました。安倍首相は「わが国が、自衛権を発動してそのような国を支援することはない」と一般論でごまかそうとしたので、それではアメリカのやった戦争に日本は一度でも反対したことがあるのかと迫りました。

 アメリカは数多くの先制攻撃の戦争をしてきました。1983年のグレナダ侵略、1986年のリビア爆撃、1989年のパナマ侵略に対して、国連総会は3回にわたってアメリカを名指しで国連憲章違反、国際法違反と非難する決議を採択しています。日本はグレナダ問題には棄権、リビアとパナマの問題には反対でした。

米の戦争に反対できぬ

 特に第2次世界大戦後の大きな戦争であったベトナム戦争とイラク戦争を、日本政府は支持しました。小泉純一郎元首相はイラク戦争が始まった時に、世界で一番最初に支持しました。「大量破壊兵器をフセインが持っている」という理由でしたが、後になってイラクに大量破壊兵器がなかったことをブッシュ米大統領も、ブレア英首相も認めました。

 ところが日本政府はいまだに誤りを認めず、反省もせず、アメリカ政府に問い合わせもしていないのです。アメリカの戦争は正しい戦争だと信じて疑わない、これが日本政府の一貫した姿勢です。

 こういう日本政府が、アメリカがまた侵略戦争を始めて、集団的自衛権の発動を求めてきたときに、「ノー」と言えるでしょうか。言えないでしょう。

 ベトナム戦争では、日本の協力は在日米軍基地の提供にとどまりました。イラク戦争では自衛隊を派兵しましたが、「非戦闘地域」での支援にとどまりました。しかし「戦争法案」が通れば事態は根本的に変わります。アメリカの無法な戦争に自衛隊が参戦し、武力行使するということです。こんな道に進むわけにはいきません。

世論を高め必ず廃案に

派兵隊員の自殺54人も

 戦争になれば戦地に行くのは誰でしょう。安倍首相は行きません。大臣も、自民党や公明党の国会議員も行きません。戦場に行かされるのは、いつでも若者です。若者を海外の戦場に送るな——この一点で力を合わせようではありませんか。

 イラクに派兵された自衛隊員から戦死者は出ませんでしたが、帰国してから心の病になっている人はたくさんいます。志位委員長の質問で、アフガニスタンでの給油活動、イラクでの「後方支援」に参加した自衛隊員で自殺したのは54人に上ることが明らかになりました。この上、「戦闘地域」に行けば、戦死者が出ることは間違いありません。

立憲主義に反する内閣

 戦後、憲法9条の政府解釈の根本は、日本への武力攻撃がなければ武力行使は許されない、海外での武力行使はできないということで一貫していました。

 ところが安倍政権は昨年7月1日の「閣議決定」でこの解釈を変えました。どのようにでも解釈できる「新3要件」に合致すれば、海外での武力行使を認めるというものです。従来の政府見解を180度転換する乱暴な解釈の変更を、「閣議決定」だけで変えたのです。憲法を憲法とも思わない、立憲主義違反です。

 安倍首相は国会に法案を出す前に、米議会で8月までに「戦争法案」を成立させると約束しました。まさに究極の対米従属があらわになっています。この法案を許すかどうかは、文字通り日本の国のあり方、日本の命運がかかった歴史的たたかいです。

一点で世論を広げよう

 私たちは国会論戦で「戦争法案」の危険性を明らかにして奮闘します。元自民党幹事長の野中広務さんや古賀誠さんら、保守の人々も反対の声を上げています。国会でも、ほとんどの野党は徹底審議と今国会での採決強行に反対という点で、一致できる流れになっています。「戦争法案反対」の一点で世論を広げ、国会の力関係を乗り越えて、何としても阻止・廃案に追い込もうではありませんか。

(大阪民主新報、2015年6月7日付より)

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