おおさかナウ

2020年09月07日

大阪市廃止の「特別区」
財政試算でたらめ
議会論戦でますます鮮明

 大阪市を廃止して4つの「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想を巡り、維新や公明などは府と大阪市の臨時議会で「特別区設置協定書案(協定書案)」の採決を強行し、11月1日の住民投票実施へ暴走しています。ところが、コロナ禍の影響で「特別区」の財政は成り立つ保証がないばかりか、住民サービスの切り捨ては避けられないことが、臨時大阪市議会の論戦で鮮明になっています。

メトロの配当など〝カラ計上〟
「特別区は黒字」とだます

コロナ以前の経済や税収で

質問する山中議員=8月24日、大阪市議会都市経済委員会

質問する山中議員=8月24日、大阪市議会都市経済委員会

 「特別区」の制度づくりを担う副首都推進局は8月11日、財政シミュレーションの「更新版」を発表しました。「特別区」設置の日を2025年1月1日とし、25年度から39年度の15年間について試算したものですが、学校給食無償化(77億円)以外はコロナ対策での市負担を加味せず、経済や税収の見通しはコロナ以前のままになっています。
 一方で収入面では、地下鉄・バスの民営化などの「改革効果額」(15年間で1547億円)を上積みすることによって、「特別区」では「収支不足は発生しない」、つまり「黒字になる」と結論付けています。

大阪メトロの業績は「未定」

 「改革効果額」の約7割(1047億円)を占めるのは大阪メトロからの配当金や税収で、25年度には53億円、その後は毎年71億円を試算に上積み。毎年度の黒字(17~77億円)と同程度か、上回る額です。
 ところが当の大阪メトロはコロナの影響で乗客が激減するなど、経営は急激に悪化。「更新版」の発表と同じ11日に大阪メトロが出した4~6月期の決算報告では、営業収益は前年同月比42・2%減で、最終損失は39億円でした。コロナの収束時期が不明な状態が続いている中、今年度の業績予想は「非常に困難」で「未定」と記しています。

上積みないと大赤字になる

 8月26日の大阪市議会都市経済委員会で、統一会派「日本共産党・市民とつながる・くらしが第一大阪市議団(共産・市民)」の山中智子議員は、「(改革効果額の)上積みが実現しなければ、『特別区』はずっと大赤字になる」と述べました。
 配当や税収があるという前提は、大阪メトロがコロナ以前の昨年4月に出した「中期経営計画」だが、ことし5月の改訂版では収支見通しや、「大阪市への財政貢献」の項目も削除したと指摘。「カラ計上と言ってもいいようなやり方で、『特別区』は黒字だという。こんな状況で住民投票に持ち込むことは絶対に許されない」と断じました。

理解できない住民投票実施

 8月31日の財政総務委員会では、維新と公明の賛成多数で「協定書案」を可決しました(共産・市民、自民は反対)。質問に立った共産・市民の武直樹議員は、財政シミュレーションを作り直すよう主張。「正確な情報の開示と住民参加の担保という、究極の民主主義の根幹を無視し、何より市民の暮らしや命より優先して、住民投票を急いでしてしまうことは理解できない」と力説しました。

「住民サービス維持」は大うそ
市民プールなど大幅削減

橋下市政期の計画が今ごろ

質問する武議員=8月31日、大阪市議会財政総務委員会

質問する武議員=8月31日、大阪市議会財政総務委員会

 「特別区が黒字になる」という財政シミュレーションの「改革効果額」には、「市政改革プラン分」として市民利用施設を大幅に削減することまで盛り込みました。現在24区にある市立屋内プールを9カ所に、スポーツセンターを18カ所に減らすなど、計約17億円を計上しています(表)。
 これらはもともと、橋下市政時代の「市政改革プラン」(12~14年度)で大阪市廃止を前提に打ち出されたもの。存続を求める市民の世論と運動や日本共産党などの論戦で廃止や削減に「待った」がかかり、ことし4月に市がまとめた「市政改革プラン3・0」(20~25年度)では項目が消えていた代物です。

削減が前提の許せない手法

「特別区」の財政シミュレーションでは施設の大幅削減が盛り込まれています(写真は大阪市天王寺区の真田山プールと天王寺スポーツセンター)

「特別区」の財政シミュレーションでは施設の大幅削減が盛り込まれています(写真は大阪市天王寺区の真田山プールと天王寺スポーツセンター)

 住民サービスについて維新や公明は、「特別区」設置の際は「内容や水準を維持する」、それ以後は「維持するよう努める」と「協定書」に書き込んだことで「バージョンアップした」などと宣伝。しかし、市民サービスを削減しなければ「特別区」はやっていけないことが、財政シミュレーションではっきり示されています。
 8月24日の都市経済委員会で山中氏は「市民には『住民サービスは一切変わらない』と言いながら、プールなど市民利用施設を17億円も削ることを前提にしているのは、許せない手法だ」と批判しました。

「特別区」財政試算で大幅削減が盛り込まれている施設

項目事業概要削減数削減額
市民プール管理運営温水プール(各区1館)24カ所→9カ所12億1600万円
スポーツセンター管理運営スポーツ施設(各区1館)24カ所→18カ所 1億9000万円
老人福祉センター生活相談・教養講座・レクリエーションの場の提供(原則各区1館 北・中央2館)26カ所→18カ所 1億6500万円
子育て支援活動情報提供・子育て支援講座・遊び場の提供など24カ所→18カ所1憶2800万円
合 計  16億9900万円

(副首都推進局の資料などから作成)


(大阪民主新報、2020年9月6日号より)

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