おおさかナウ

2020年07月18日

新型コロナ対策
現場の実態とあまりに乖離
専門家の知見で「大阪モデル」を
日本共産党府議団 府などに申し入れ

 大阪府は12日、新たに32人の新型コロナウイルス感染を確認し、独自基準「大阪モデル」に基づいて、府民に警戒を呼び掛ける「黄信号」を点灯しました。しかし「大阪モデル」は基準を緩和する修正を重ねてきています。日本共産党府議団(石川たえ団長)は9・10日、吉村洋文知事と府の関係部署、大阪労働局宛てに新型コロナ対策強化を申し入れ、「大阪モデル」を当初の基準を基本に、専門家の知見を最優先に踏まえ再設定することなどを求めました。府への申し入れは5回目。10日行われた府商工労働部と大阪労働局への申し入れには、同党の清水忠史衆院議員と宮本たけし前衆院議員(衆院近畿比例・大阪5区候補)、辰巳孝太郎前参院議員が同席しました。

共産党府議団の第5次申し入れ=10日、府庁内

共産党府議団の第5次申し入れ=10日、府庁内

「大阪モデル」に黄信号が点灯し

 現行の「大阪モデル」は3日の第20回対策本部会議で修正されたものです。会議では専門家の委員から厳しい意見が出されています。
 黄信号の点灯から25日以内に重症者向け病床の使用率が70%以上になると「非常事態」を意味する赤信号となります。この基準に対し茂松茂人府医師会長は、第1波の際、病床使用率30・2%(4月19日)で現場の医師からマンパワーの限界に達したという話があったとし、「あまりにも現場の実態と乖離(かいり)しているのではないか。70%に達する以前に、医療崩壊は始まっている可能性が高い」と意見しています。
 10日の申し入れで石川氏は府健康医療部に対し、専門家の意見を尊重するよう求め、「元の基準なら、すでに『黄信号』が点灯しているはず。命の危険をいち早く府民に知らせるため、基準を元へ戻すべきだ」と指摘しました。

介護・保育などにPCR検査を

 石川氏は、医療や介護、支援学校、保育などの現場でクラスターが発生すれば重大だとし、それらの従事者は感染の疑いがあるなしに関わらず、PCR検査が必要と指摘しました。公共交通機関や警察、消防、流通関係者など社会生活になくてはならない職種も、PCR検査が受けられるよう要請。第1波ではごみ収集に携わる労働者がマスクや手袋の支給もなく、カラスに散らかされた使用済みマスクを含むごみを拾い集め、感染の危険にさらされたといいます。

必要な人に救済の手届くように

 大阪労働局に対し石川氏は「生活苦に陥っている人がどれくらいいるのか、掌握した上で手立てを打たなければ、救いきれない」と主張し、リストラや雇い止め、非正規労働者の休業手当不支給などの実態をつかみ、対策を講じるよう求めました。
 清水氏は、アルバイトなどが勤務シフトを組まれないことにより仕事を奪われているケースがあると指摘し、「これに対して制度が使えなければ、必要な人に救済の手が届くことにならない」と強調して対策を広げるよう求めました。

共産党府議団の申し入れ項目

 日本共産党府議団が9、10の両日、吉村洋文知事と関係部局、大阪労働局宛に行った申し入れの主な内容は次の通り(抜粋)。

「大阪モデル」緩和を見直せ

 「大阪モデル」の「府民に対する警戒の基準」は、7月3日に緩和した以前の「自粛要請等の基準」を基本に、感染症の専門家の知見を最優先に踏まえ再設定する。
 1日当たり3500検体としているPCR検査能力拡充目標を1万~2万検体に引き上げ、早急に拡充する。
 PCR検査の対象を無症状を含むすべての濃厚接触者に拡大し、該当者がただちに検査を受けられる体制を取る。
 診察~検体採取~PCR検査までの機能を備えたPCR検査センターを、府内18の全保健所所管区域に整備する。
 原則としてすべての医療、介護、福祉、保育従事者及び入院患者・入所者にPCR検査を実施する。公共交通、警察・消防、ごみ収集、流通など社会生活の維持に不可欠な仕事を担う労働者への検査を計画的に行う。

病床確保と医療機関の支援

 重症・軽症中等症を合わせた感染患者入院病床確保目標は引き下げず、政府専門家会議の試算を踏まえ、早急に3千床を確保する。
 病床を確保する病院の減収・負担増へ十分な補償を行う。地域医療を担う診療所・病院・歯科医院や、介護事業所・障害者福祉事業所への減収補償を行う。
 人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)について、政府専門家会議の試算に見合った台数と専門スタッフを計画的に確保する。マスク、防護服、フェイスシールドなどの医療用資材を府の責任で計画的に確保し、市町村と協力して医療機関への供給体制をつくる。

保健所の人員と体制の補強

 保健所への財政措置を少なくとも2007年度の水準までただちに引き上げ、医師・保健師・看護師などの専門職および行政職の人員・体制を緊急に補強する。
 大阪健康安全基盤研究所への運営費交付金、感染症部門をはじめとした専門職員等の体制を抜本的に拡充する。
 清掃・消毒など教師等の業務をサポートする「スクール・サポート・スタッフ」を、国の計画に上乗せし全公立小中学校に複数配置する。同事業の市町村負担はなくす。

教職員の増員を早急に行う

 教室での身体的距離を確保するため、府内すべての公立小中高校で20人程度の授業ができるように、府として小中高校の教員を増員する。
 養護教諭を、児童生徒数が400人を超える府内すべての公立小中高校に複数配置する。
 支援学校の、プレハブ建設などによる教室確保と教職員などの増員を早急に行う。過密過大を解消するため、知的障がい支援学校整備の「基本方針」を抜本的に見直し、新校建設を大幅に増やす。

チャレンジテストの廃止を

 「中学生チャレンジテスト」は廃止する。来年度公立高校入学者選抜への、中学2年時の「チャレンジテスト」結果転用はやめる。来年度からの「小学生すくすくテスト」は中止する。
 私立学校の少人数学級化や教職員増員へ補助を行う。私学授業料補助金について、新型コロナにより収入減となっている世帯の生徒が対象となるよう、またすでに対象となっている世帯の生徒が減収に応じた補助を受けられるよう、所得判定の特例を設ける。

事業者・労働者に給付金を

 休業要請支援金・休業要請外支援金は事後審査とし、いったんすみやかに支給する。休業要請外支援金の申請期間をさらに延長する。6月以降も減収が続く業者に対し、再度の支援金を支給する。減収要件を30%以上に緩和する。
 収入が減少した非正規労働者に1人5万円の「くらし支援緊急給付金」を給付する。
 雇用調整助成金の申請手続きを簡素化し、すみやかに支給するために、緊急に事後審査に切り替えるとともに、休業手当支払い前でも支給する。
 減収が続く業者へ、第2次・3次の支給を行う。

(大阪民主新報、2020年7月19日号より)

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