おおさかナウ

2020年06月21日

医療・暮らし・学校 府の対策は不十分
府民の実態から見る 新コロナ対策の課題
日本共産党地方議員団懇談会 石川府議団長の報告(大要)

 日本共産党大阪府委員会が6日、大阪市内で開いた新型コロナ関連対策地方議員団懇談会での石川たえ府議団長の報告(大要)を紹介します。

石川多枝府議

石川多枝府議

 大阪府のコロナ対策は、大きく分けて、①感染防止・医療体制(28事業、352億円)、②暮らしと営業(28事業、4390億円)、③子どもと教育(12事業、48億円)で、吉村府知事は計4800億円の財政出動をしたと言っています。
 しかし実際はどうでしょうか。4800億円という金額は各事業の総合計に過ぎず、国支出分などを除くと、府の実際の負担額は780億円です。
 しかも国会審議中の第2次補正予算が成立すれば、増額される地方創生臨時交付金や地域包括交付金で、大部分が戻ってくると見込まれます。
 大阪府は、府支出分780億円の大部分が最終的に戻ると計算して、事業計画を立てているのです。
 もちろん、府民の願いが支援策として実現した内容も部分もあり、これ自体は評価できます。しかし府民の暮らしや営業の実態から見れば、はなはだ不十分だと言わざるを得ません。

(1)感染予防・医療体制

 感染予防、検査と医療体制ですが、PCR検査の1日当たりの検査能力は、最大1430検体です。
 コロナ患者の入院ベッド確保数は1151、軽症患者向けの宿泊施設の受け入れ可能人数は1504人です。
 大阪はPCR検査数が他県よりも多いと言われますが、実際は「保健所に電話してもつながらない」と悲鳴が上がり、検査を受けたいのに受けられないという人が、最後まで多数残されました。
 府議会質問で内海公仁議員が「PCR検査数が少ない」と指摘すると、「大阪は全国で3位です」と吉村知事は答弁しました。
 大阪のような大都市で、人口規模に比例し検査が増えるのは当然のことで、そんなことを質問したのではありません。検査が必要な人の立場で考えたときに、検査数が圧倒的に少ないとの認識さえ持ち合わせていないのが、今の府政です。
 帰国者・接触者外来での電話相談や24時間コールセンターの対応もありますが、最終的に検査オーダーを出すのはあくまで保健所です。ドライブスルー検体採取(府内9カ所)のオーダーを出すのも保健所です。
 結局は保健所につながらない限り、PCR検査機器を備えた医療機関が増えても、検体採取可能な場所が増えても、検体採取でさえしてもらえないという状況が残されたと言えると思います。
 病床確保の目標はピーク時3千床ですが、軽症者宿泊施設を合わせても、3千床には届きませんでした。
 ピーク時に病院に入れたのは重症患者で、軽症者の場合、宿泊施設にも行けず自宅療養する人が多数でした。それでも大阪府は病床逼迫率が7%切ったとして解除の方向に向かいました。「大阪モデル」は、数字の見方がバランスを欠いています。第2波を想定するとしながらも、病床確保の考え方は十分示されていません。

第2波に備えて実効ある対策を

府内自治体の支援策や、各議会の論戦と課題などを交流した懇談会=6日、大阪市中央区内

府内自治体の支援策や、各議会の論戦と課題などを交流した懇談会=6日、大阪市中央区内

 第2波、第3波の感染拡大に対応するために、保健所オーダーがなければ検査を受けられないという状態をクリアしなければなりません。
 大阪府は今後、地域検査センターという形で整備を進めると言っています。民間病院で、そこの医師が判断すれば、保健所を通さなくてもその場で検査が受けられるというものです。
 700万円とされるPCR検査機の購入費用は国が半額を補助し、残る350万円が病院負担になります。
 内海議員の質問では、国の2分の1補助制度を周知すると言うだけで、大阪府が差額を補助しますという姿勢はまったく見られません。あくまで民間医療機関まかせの状態です。
 「再陽性」「再々陽性」の患者が出た問題では、軽症で宿泊施設に滞在し、自宅療養した人の最後の「陰性確認検査」があいまいだったという指摘があります。
 保健所からの電話確認だけで判断し、宿泊施設で2週間経過観察し、最期の陰性確認検査が不十分だった実態も指摘されています。PCR検査だけでなく、LAMP法による陰性検査など、あらゆる形態の感染検査を実施することが必要になってきます。
 コロナ患者を受け入れるために既存の病床を開けて対応した医療施設に、手厚い損失補てんを行う必要があります。
 大阪府は、ピーク時3千床確保を目標に、2400床確保の経費補助を行います。しかし、コロナ患者を受け入れた病院も、それ以外の医療機関も大幅な減収となっているにもかかわらず、補償はありません。
 病院側は多くのリスクと向き合いながら、患者の生命を守るための努力を続けています。府が患者受け入れを要請した医療機関と、そうでないところも含め、損失補てんが実現するよう求めていきたいと思います。

(2)暮らしと営業を守る

 大阪府と市町村が費用を折半する「休業要請支援金」(事業費400億円)は、減収50%などの条件があり、受付はすでに終了しました。手続きが非常に煩雑と問い合わせが殺到し、なにより府内に30万事業所がある中で、たった6万8千しか対象にしていないという問題がありました。
 府が単独で実施する「休業要請『外』支援金」(事業費300億円)も、みんながみんな受けられるわけではありません。減収50%以上が条件です。
 府が支給を見込んでいるのは6万件で、個人事業主はこの6万のうちの1万です。個人事業主やフリーランスの人たちみんなを救う内容ではありません。
 府議会の議論では、固定費支援は重要だという認識を当局も示していました。ところが実際に出てきたのは、固定費支援とはほど遠い1回限りの給付金でした。
 私のところに問い合わせが来ます。事業者の皆さんは、給付制の支援制度と併せ固定費を継続的に支援してほしいという願いが強いです。
 カンフル剤として緊急に立ち直る資金として支援金を出す必要があるし、継続的に支払いが続く固定費は、固定費として独立して支援する必要があります。
 内海議員の質問では、休業要請支援金も「外」支援金も、対象拡大と期間延長を求めましたが、やりませんと一言だけの答弁でした。
 内海質問の到達点として、「外」支援金で申請枠を超過した場合の再補正について、当局は「その時点で検討する」と答弁しています。追加補正の可能性に道を開いた論戦ですから、府民みんなでさらに支援を求めていきたいと思います。

(3)子どもと学校の課題

 突然の臨時休校は、子どもたちに計り知れない影響を与え、6月から3カ月ぶりに喜びと共に、不安を抱えての再開になりました。
 コロナや健康問題で悩んでいる子、受験で不安な子、いじめに苦しんでいる子、不登校になってしまった子、元気に通えている子も含めて、みんなをどう守っていくのかを、真剣に考えてなくてはなりません。
 休校中にLINEなどSNSで水面下のいじめにあった子は、「さあ学校だ」と言われても登校できません。そうした子どもを救わないと駄目です。
 いまの体制では、不安やストレスを抱える子どもを支えられないのが現実です。府議団としてケースワーカーの全校配置、学習支援、カウンセラー配置を要求しています。6月第1週に、20人学級でスタートしたのだから、このまま20人学級で行けばいい。それを一気に40人に戻すというのは問題です。
 夏休みについて府教委が期間短縮の指針を出しましたが、これは教育行政として本来やってはいけないことだと考えています。
 学校教育の裁量権は本来、学校長にあります。文科省が年度内履修にこだわらないとする通知を出しているのですから、府教委が現場を縛るようなことは、絶対にしてはいけないことなのです。
 小中学校は市町村の管轄なので、夏休み期間は各市町村が自主的な判断で決めるべきことですし、最終的な児童・生徒の履修は、各学校長が現場の先生と一緒に判断していけばよいことです。
 大阪府教委が平均モデルを示すことで、実際に多くの市町村が準じてしまいました。これは単に夏休み期間が減ったとか、日数だけの問題ではありません。子どもたちを絶対に追い立ててはいけないし、子どもたちの声にどれだけ丁寧に応えられているのかが大事だと思います。

支援緊急給付金を非正規雇用に

 今後、失業者が増えると指摘されています。大阪では実際に求人数も求人倍率も下がっており、コロナ禍で8万人ぐらいの失業者が出るとの推計もされています。
 8万人もの失業者を出していいわけはありません。絶対に雇い止めはしないと関係機関に働き掛けていきたいと思います。
 内海議員の質問で、共産党府議団としての提案を行い、非正規雇用の人に対し、府として「くらし支援緊急給付金」を出すよう求めました。5万円を給付するという内容で、少しでも急場をしのげるようにと提案したものです。
 吉村知事の答弁は、困っているのは非正規だけではないなどとし、緊急貸付で金は貸すが給付制はやらないという内容の冷たい答弁でした。
 この課題は引き続き実現に向けて取り組みたいと思っています。共産党府議団として、常に府民の暮らしの実態を踏まえ、一歩も二歩も先を見据えて新しい提案をしていきたいと考えています。

(大阪民主新報、2020年6月21日号より)

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