おおさかナウ

2020年05月31日

コロナ禍でも「都」推進の異常
法定協委員が動画で意見表明

「都」構想議論は打ち切り
新型コロナ対策に総力を
日本共産党 山中智子大阪市議団長がきっぱり

 大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想の制度設計や協定書案を話し合う大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)は22日、法定協の委員が制度案について意見を述べる動画を、府と大阪市のホームページ(HP)で公開しました。新型コロナの感染拡大の影響で中止された4月と5月の「出前協議会」の代わりに、11月の住民投票実施に固執する維新が主導して企画されたもの。日本共産党大阪市議団の山中智子団長は、新型コロナで市民が先の見通せない深刻な状況にある中、大阪市廃止の議論をしているどころではないと、きっぱり主張しました。

11月の住民投票狙い維新が強行

市民が収入や職を失う中で

法定協の動画で訴える山中氏(動画投稿サイト「ユーチューブ」より)

法定協の動画で訴える山中氏(動画投稿サイト「ユーチューブ」より)

 山中氏は「感染の恐怖だけでなく、お店、イベント、学校、介護サービスなど、あらゆるものが自粛の対象となり、収入や職を失い、明日食べていけない、長年築いてきたお店をたたまなければならないという方もたくさんおられます」と市民の苦境を代弁しました。
 学校に行けない子どもたちや、理由がわからないまま外出できない認知症の方の心のケアをどうするか。「家族はもちろん、行政にとっても大事な問題だ」と問い掛けました。
 「今みんな、生きることに精いっぱいです。『大阪市をなくしたらこうなります』『知って下さい、考えて下さい』、そんなことを言っている場合では絶対にない」と断じました。

コロナ以前の財政収支試算

 山中氏は、協定書案の土台になっている大阪市の財政収支試算は新型コロナ以前のものだと指摘しました。今後、大阪市の税収は確実に落ち込む一方、生活支援や景気対策などで支出は増えて財政状況が大幅に変わるため、「今の協定書案を説明することには意味がなく、逆に『この収支でいける』と説明するのは虚偽でさえある」と強調。大阪市廃止・分割の作業や議論はいったん打ち切り、新型コロナ対策に総力を挙げるべきだと述べました。
 「大阪市廃止・分割は百害あって一利なし」と訴え続けてきた山中氏は、大阪城公園など大規模公園、天王寺動物園、博物館、美術館など市の貴重な施設を府に移しても予算は増えないと指摘。住民に身近な消防、上下水道は「特別区」に分けられないので府に移り、府は「特別区」についてだけ基礎自治体の役割も担うという、いびつな組織になると語りました。

市独自施策は削るしかない

 一方「特別区」は、設置時のコストや職員増の負担がのしかかる上に、主要な収入は府にいってしまい、自主財源に乏しい「半人前の自治体」に成り下がると力説。大阪市が独自に行ってきた敬老パスや子どもの医療費助成は削減するしかなく、住民にとって良いところは一つもないと批判。東京の特別区長会が、「特別区廃止」の運動を長年続けていることも、軽視してはならないとしました。
 山中氏は、「特別区」に庁舎を造らず現在の大阪市役所本庁舎を共同で使う「合同庁舎案」に、「それで地方自治体と呼べるのか」と批判が出ていると紹介。「大阪市廃止・分割の狙いは、ただただ、大阪市をつぶして権限や財源を府に奪い取ることであり、『特別区』や『特別区民』はどうでもいいということが、ますますはっきりしている」と語りました。
 山中氏は、新型コロナのような感染症は今後も起こりうる中で、この間削ってきた保健所などの公衆衛生機能や病院を再構築することに、人やお金を振り向けていくべき時だと力説。「大阪市廃止の作業をしている時ではない」と重ねて主張しました。

維公の説明〝虚偽・でたらめ〟

 動画では、「都」構想推進の維新や公明の主張の異常さが際立ちました。

財政悪化確実で試算立たず

 吉村洋文知事は、「府と市が一丸となってコロナ対策を進めている」「(『都』実現で)府がさまざまな危険事象に迅速に対処する司令塔機能を確立させる」と発言。松井一郎大阪市長は「大きすぎる大阪市を4つの身近な『特別区』にする」とし、制度案は「特別区」の財政基盤を強化しているなどと語りました。
 しかし山中氏が明快に述べたように、協定書案の土台は、コロナ以前に試算された大阪市の財政収支。コロナ危機で財政の大幅悪化が確実で、収支試算の更新すら見通せないことは市議会で財政担当者が答弁しており、コロナ以前の財政収支で制度案が成り立つなどという説明は、「虚偽でさえある」(山中氏)代物です。
 維新(藤田暁大阪市議)は、大阪市がことし2月に公表した今後10年間の収支試算を基にした資料を示し、「今後の高齢化による社会保障費の伸びで、大阪市のままでも大きく赤字になる」と「特別区」の必要性を主張。「未来志向の改革を実現させたい」などと語りましたが、同試算にはコロナ危機による今後の市財政の悪化はおろか、現在のコロナ対策の影響額すら含まれていません。

サービス維持の保証はない

 維新に屈して「都」構想賛成に転じた公明党(西﨑照明、山田正和両大阪市議)は、「特別区」で大阪市独自の住民サービスを「維持すること」と協定書案に明記させたなどと発言。「サービス維持」に何の保証もないことは法定協での議論でも浮き彫りになっていましたが、コロナ危機で将来の財政収支が見通せない中で、同党の“実績”のでたらめさは、いよいよ明らかです。
 自民党(川嶋広稔大阪市議)は、「『都』構想よりコロナ対策に全力を挙げるべき」で、「コロナが発生する前に作られた財政シミュレーションは、大幅な見直しが必要なのは当然のことだ」と主張しました。

(大阪民主新報、2020年5月31日号より)

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