おおさかナウ

2014年10月24日

住吉市民病院跡地問題
わが街で子どもを産み育てたい

緩和やめるか公立維持を

 大阪市は2016年3月に閉院を予定する市立住吉市民病院(同市住之江区)の跡地に誘致する民間病院の再公募で、必要な小児科の常勤医師数を明記しないなど、前回の公募時から要件を大幅に緩和した募集要項を2日に発表しました。市民病院廃止条例が可決された際の付帯決議に違反する内容で、「住吉市民病院を充実させる市民の会」は応募申し込み期間が始まるまでに、要項の見直しや、見直さない場合には公立病院として市民病院を残すことを求める署名運動を始めています。

大阪市が公募条件を大幅緩和

 住吉市民病院は、住之江区が住吉区から分区する(1974年)以前の50年に建てられました。市は建物の老朽化に伴い、現在の総合病院から小児・周産期医療に特化させ、現地で建て替える方針でした。
 しかし橋下徹市長が就任してから、「大阪都」構想推進のため隣接する住吉区内の府立急性期総合医療センターと統廃合する方針が立てられました。維新がまとめた「大阪都」構想の設計図である協定書では、両区はともに「南区」です。
 「生まれ育った地域で子どもが産めなくなる」と周辺住民らが反対運動を展開。病院の存続を求める「市民の会」が結成され、地元町会も反対の声を上げました。
 存続を求める署名は7万人分を超えましたが、橋下市長が廃止後の病院跡地に民間病院を誘致する意向を示したことで、日本共産党以外の会派が賛成し、廃止条例が可決されました。
 廃止条例には①これまで市民病院が担ってきた小児・周産期医療機能の存続、②大阪市南部医療圏(阿倍野、住之江、住吉、東住吉、平野、西成の6区)の小児・周産期医療充実――を条件とする付帯決議が付けられました。
 しかし前回の公募には、唯一応じた医療法人が全国的に不足する小児科医師の確保ができずに辞退し、今回の再公募となりました。
 再公募の募集要項は、前回公募にあった小児科の常勤医5人以上という要件が外されました。また50年以上継続して小児・周産期医療を行うという条件も30年に短縮。経営が立ち行かなくなれば撤退することも可能になっています。再公募は11月5日から応募登録を行い、12月2日から応募書類を受け付けます。
 再公募の要項では、市議廃止条例の附帯決議の中身を実現できる可能性は、限りなく低くなります。
 そのため廃止条例に賛成した会派からも、附帯決議に反する病院誘致しかできない場合は、市民病院を公立病院として現地で建て替えることが望ましいという声が出始めています。

「市民の会」が集会開く

住民の声署名に

 「この1カ月半で運動を起こし、多くの住民の声を署名に集め、医療会や市に届けよう。それが応募を考える法人にも影響を与える」。日本共産党の北山良三市議団長は、「市民の会」が18日に同市住之江区内で開いた市民集会に招かれ、そう話しました。
 集会には住之江区医師会からメッセージが届き、市民の会の松本やすひろ事務局長は、「最後の正念場だ。子どもを生み育てられる地域を守ろう」と呼び掛けました。

市民の会が開いた集会=18日、大阪市住之江区内

市民の会が開いた集会=18日、大阪市住之江区内

大きな役割果たす住吉市民病院

 現在の住吉市民病院は、常勤医師14人で、いつでも分娩でき、大阪市全域の二次救急医療を担っています。
 また自閉症やアスペルガー症候群など、発達に問題のある子どもの受け付けや二次・三次救急から在宅医療に移行するつなぎの役割、虐待にあった子どもの一時保護入院施設、社会的・経済的にリスクの高い妊婦の助産施設、未受診・飛び込み出産の受け入れなど、大阪市が抱える社会的・経済的問題から派生する医療問題の受け皿にもなっています。
 同市の南部医療圏は、小児救急で年間4千件を超える搬送が発生(10年度)していますが、受け入れ件数は1350件にとどまり、小児救急機能の不足が現れています。

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