政策・提言・声明

2018年09月13日

すべての希望する子どもに
高校教育を保障するために
 ――高校廃校計画を撤回し、存続・発展を

2018年9月13日  日本共産党大阪府委員会文教委員会

 「この学校があったから、今の自分がある。大切な学校をなくさないでほしい」、「息子はこの学校で見違えるほど成長した」。子どもが主権者として必要な教養などを身につける高校教育の役割は今日、いっそう重要になっています。

 こうした高校教育の発展にむけた政治の役割は、憲法と子どもの権利条約、教育の条理を踏まえて、学校の自主性を尊重し、学校耐震化や少人数学級など教育条件を整備することにあります。

 ところが、大阪の維新政治は、政治権力の教育への介入に道を開く「教育基本条例」を強行し、競争と強制の教育を学校現場に押し付けてきました。憲法が保障する子どもの学ぶ権利を奪う高校廃校計画の強行など教育破壊というべき異常事態です。教育破壊のいちばんの被害者は子どもたちです。大阪の教育はこれでいいのかが問われており、子どもと教育を守る府民・市民共同が広がっています。

 日本共産党は、何よりも子どもの成長・発達を大切にする立場から、府民と学校関係者の切実な教育要求の実現にむけた取り組みを進めるとともに、府民・市民共同を広げ、維新政治を終わらせるために力を尽くします。

 私たちは高校教育の豊かな発展にむけて、改めて維新政治による「高校改革」の問題点を示すとともに、府民の願いにこたえる高校改革の基本方向を提案し、府民的討論と共同をよびかけます。

1 子どもの成長を妨げる維新政治の「高校改革」

 維新政治による「高校改革」は、次のような問題点があります。

(1)子どもの学ぶ権利を奪う高校廃校計画を強行

 第一に、子どもの学ぶ権利を奪う高校廃校計画を強行し、子どもと保護者の高校存続への願いを踏みにじっている問題です。

子どもと保護者の高校存続への願いを踏みにじる

 維新府・市政は、府立高校・大阪市立高校廃校計画(2014~18年度)と3年連続「定員割れ」で廃校とする府立学校条例(12年)にもとづき、これまでに府立池田北、咲洲、西淀川、大正、柏原東、長野北、大阪市立西、南の8高校廃校計画(募集停止の公表)を強行しました。さらに、次期府立高校・大阪市立高校8校程度廃校計画案(19~23年度)を決めるとともに、同計画案と府立学校条例にもとづき、府立勝山高校を20年度からの募集停止校案としました。

 これらは、憲法が保障する子どもの学ぶ権利を奪い、生徒・卒業生、保護者、地域住民の高校存続への願いを踏みにじるものです。

 高校廃校計画の理由とされる生徒数の減への対応は、募集学級数の減で可能です。大阪の公立高校(全日制)の学校規模は1学年あたり8学級と過大で、全国平均の6学級を上回っており、必要なのは高校つぶしではなく、学校規模の縮小です。

 子どもの高校進学を保障するため、この間、大阪の公立・私立高校全体の募集人数(入学定員)は、府内の進学予定者数より約3千~4千人多く確保されてきました。そのため、入試時期が後になる公立高校で「定員割れ」になることは当然です。「定員割れ」を理由にした高校廃校は、やってはいけないことです。

高校間の生徒獲得「競争」で教育をゆがめる

 維新政治は、高校間の生徒獲得「競争」を学校現場に強制し、教育をゆがめ、子どもの成長を妨げてきました。

 府内の公立・私立高校は協力・連携して、子どもの高校進学を保障するために、公立・私立の生徒受け入れ比率(7対3)を定めて、募集人数を確定してきました。ところが、維新政治はこうした生徒受け入れ比率を撤廃し、高校間に生徒獲得「競争」を押し付けました(11年度から)。

 さらに、私立高校への経常費助成(日常的な経費への助成)は、これまで学級数や学級定員、教員数、学費などの総合的な基準でしたが、生徒数を基準にする競争的な配分方式に改悪しました(11年度から)。そのため、募集定員に比べて入学者が大幅に超過する高校が生まれ、過大学級や非正規雇用の教員増など、学校関係者のあいだで教育条件の低下が指摘されています。

(2)「愛国心」教育で「戦争する国」への人づくり

 第二に、「愛国心」教育により、海外で戦争する人づくりを進めようとする問題です。

 安倍政権のもと文部科学省は、改悪教育基本法の具体化として、教育内容の基準を示す小・中学校、高等学校の学習指導要領と幼稚園の教育要領を改定しました。

 高校学習指導要領は、道徳教育の充実を掲げ、「愛国心」などの「資質・能力」の育成を目的としました。「道徳教育推進教師」を新たに置き、新設・必修科目の「公共」、「倫理」、特別活動が高校での「道徳教育の中核的な指導の場面」としています。

 維新政治は、こうした安倍政権の「戦争する国」にむけた教育政策を先取りして、国旗・国歌強制条例(11年)を強行し、「日の丸・君が代」を学校に押し付けてきました。卒業式・入学式を子どもにとって、息苦しいものにしています。

(3)学校現場から教育の自由・自主性を奪う

 第三に、憲法が保障する教育の自由・自主性を学校現場から奪うという問題です。

 安倍政権は、憲法にそくして教育の自主性を守るためにつくられた教育委員会制度を改悪し、政治権力による教育への介入・支配への道を開きました(14年)。これを先取りして強行されたのが、維新政治の「教育基本条例」です(12年)。首長による教育への支配・介入は許されません。

2 すべての子どもの成長・発達を保障するために
   ――日本共産党の高校改革提案

 すべての子どもの成長・発達を保障するために、日本共産党は次のような高校改革の基本方向を提案します。

(1)高校廃校計画を撤回し、すべての希望する子どもに高校教育を

 学校は長い年月をかけて地域社会と深く結びつき、地域での文化的役割を担っています。高校の存続・発展は、地域の振興にとっても大切です。大阪の高校は、それぞれ歴史と伝統をもち、多くの卒業生を送り出し、地域に根ざして社会に貢献してきました。地域になくてはならない、子どもの成長・発達にとってかけがえのない大切な役割を果たしています。

 すべての希望する子どもに高校教育の機会を保障するために、高校廃校計画を撤回し、3年連続「定員割れ」で廃校とする府立学校条例を抜本的に見直します。いまやるべきは、学校規模の縮小や高校35人学級など教育条件の改善です。子どもの公立高校への進路希望にこたえ、受け入れ枠の拡大が必要です。

 高校再編は、生徒や保護者の意見をよく聞き、学校関係者のあいだでの慎重な議論と合意を踏まえることが大切です。

(2)安全・安心の学校づくり、少人数学級はじめ教育条件の整備

 大阪北部地震で公立小学校のブロック塀が崩れ、通学中の女子児童が亡くなりました。二度とこうしたことを繰り返さないために、安全・安心の学校へ、学校施設・設備を総点検し、必要な改修・耐震化を行い、通学路の安全を確保します。大阪の公私立の幼稚園、小・中学校、高校、支援学校など2906校のうち1180校(40.6%)で、安全性に問題があるブロック塀があることが分かりました(文部科学省調査、7月27日現在)。子どもの命を守る万全の対策を早急に行うため、国と大阪府の予算措置を強く求めます。

 高校教育の豊かな発展のために、教育予算を増やし、少人数学級・35人学級を小・中学校から高校へ広げ、教育条件を整備します。

 教職員の長時間・過密労働の解消へ、学校関係者の合意による業務削減や教職員の抜本的増員、労働法制の是正が求められます。

 維新大阪市政による、全国学力調査結果を教員評価などに反映させる方針は、学力調査の目的から逸脱するものであり、撤回を求めます。

 教員評価を給与に反映させる、維新府政の教職員「評価・育成システム」は、学校教育での教員のあいだの協力や連携をこわし、教育をゆがめます。「評価・育成システム」を中止し、教員評価制度を抜本的に見直すことが必要です。

(3)教育費保護者負担の軽減、教育費無償化をめざして

 国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項を日本政府は、国民世論と運動に押されて留保撤回しました(12年)。教育費無償化を高校から大学に広げることは世界の流れです。

 こうした世界の流れに逆行して、安倍政権が提出した高校授業料の無償制をやめ、所得制限を設ける「高校授業料無償化廃止法案」(13年)に自民、公明とともに維新が賛成しました。そのため、制度利用の申請手続きが必要になり、さまざまな矛盾がうまれています。

 憲法26条の具体化として、子どもの教育を受ける権利を保障するため、公立高校授業料無償化の復活を国に求めます。

 府民世論と学校関係者の半世紀にわたる運動により、私立高校の授業料補助制度が前進し、年収590万円未満の世帯で授業料が免除されています。今後、授業料補助制度を拡充し、無償化をめざします。私立高校の教育条件を改善するため、私立高校経常費助成を国基準以上に増やすなど抜本的に拡充し、私学助成の競争的な配分制度を改善します。

(4)高校入試制度の改善、高校「多様化」の抜本的見直し

 欧米では高校入試が基本的にないなど、日本のような競争的な制度はありません。国連・子どもの権利委員会も、日本政府に対して「高度に競争的な教育制度」が子どもにストレスを与え発達に障害をもたらしていることを厳しく指摘し、その改善を求めています。子どもの成長・発達のために、競争主義の教育を改めることが必要です。

 公立高校の学区を復活し、高校入試制度を抜本的に改善するために、専門家、府民の検討の場を設け、改革に着手することが求められます。

 憲法・教育基本法(1947年)にもとづく高校教育の理念に逆行して、歴代の自民党政権は財界の要求に応えて、競争主義的な高校「多様化」政策を進めてきました。維新政治はこの間、進学指導に特色を置いた学科を設置するなど高校「多様化」をさらに進め、大阪の高校教育を過度に競争的なものにし、子どもの豊かな人格形成を妨げています。こうした高校教育のあり方が問われています。

 高校での学科や教育課程の設置・編成は、学校関係者の議論と合意を踏まえて行われるべきです。高校「多様化」政策は抜本的な見直しが必要です。

 “公教育への民間参入で新たな市場拡大”への道を開く、大阪市の「公設民営」学校は、抜本的に見直すことが求められます。

(5)憲法が保障する教育の自由・自主性を尊重して

 教育は強制ではなく自由な空間でこそ花開きます。学習指導要領を抜本的に見直すとともに押し付けをやめ、学校が子どもの状況や地域の実情に応じた教育課程を自主的につくることを尊重します。

 教育行政の役割は、学校現場の自由・自主性を尊重し、教育条件を整備することにあります。政治権力の教育への介入に道を開く「教育基本条例」を廃止し、教育委員会の民主的改革を進めます。

 校則は、生徒の基本的人権や成長・発達を保障するなどの観点から、学校での十分な議論と合意形成が大切です。人権無視の校則は、生徒や保護者の意見をよく聞き、改めることが必要です。

 学校教育の一環としての卒業式・入学式は、子どもにとって最善のものにするため、教職員、生徒、保護者で話し合って行えるようにします。

 

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