政策・提言・声明

2016年06月14日

わたなべ結の大阪経済提言
「3つのチェンジ」でくらしと大阪経済の立て直しを

6月14日発表された「わたなべ結の大阪経済提言」は以下のとおりです。

わたなべ結の大阪経済提言
「3つのチェンジ」でくらしと大阪経済の立て直しを

2016年6月14日 わたなべ結(日本共産党大阪府委員会青年学生委員会責任者)

 発表にあたって

(1)

 私はこの間、「大阪若者提言」「女性提言」「子どもの貧困打開への緊急提言」をだし、府民各層に広がる深刻な格差と貧困をどう打開するか。その展望を示してきました。4月28日には「『消費税10%はきっぱり中止を』——この声を大阪から」というよびかけを発表しました。
 安倍首相が参院選を目前に「消費税10%増税再延期」を表明しました。これは「アベノミクス」の破たんを認めたものです。その失政の責任は重大であり、日本共産党は民進、社民、生活4党共同で内閣不信任案をつきつけました。
 大阪府民のくらしと大阪経済の危機を打開するうえで、アベノミクスをなおも続けるのか、それともこれを根本転換し、庶民のふところがあたたまる方向へと経済のカジを切り替えるのか。参院選は、この点でも重大な意義をもちます。

大阪のくらしと経済のゆきづまり——なぜこんな事態になっているのか

(2)

 大阪のくらしと経済は全国の大都市部のなかでも深刻さがきわだっています。大阪府内雇用者の実質賃金は、2015年まで5年連続でマイナスになっています(規模30人以上)。
 ふりかえれば大阪経済の落ち込みは、90年代の「関空・大阪湾ベイエリア開発」などゼネコン浪費型公共事業の破たんともあいまって深刻化してきました。関西経済連合会(関経連)も「関西経済再生シナリオ」(99年)で、関西経済は「絶対的衰退」にあると危機感を表明しました。
 ところがその打開のための方策はとられないまま、その後も大阪経済はさらにゆきづまり、危機を広げてきました。その要因は、次の点にあります。

①府民の所得、内需を冷え込ませた自民党政治

 自民党政権は、大企業が労働コストを下げられるように雇用の規制緩和をすすめてきました。大阪では非正規雇用の割合は4年前に4割を超えています(当時、全国平均38.2% 厚生労働省調査)。その後も正規雇用は2013年215万人から2016年1〜3月、205万人に減少する一方、非正規雇用は137万人から150万人に増えています。2002年度に41904人だった派遣で働く常用雇用は2015年6月時点で78176人に増えています。
 雇用の不安定化は、所得の低下につながります。府民一人あたり雇用者報酬は、2001年度の577万円から2013年度の526万円。約1ヵ月分が吹き飛んだことになります。
 大阪府の経済・労働白書もこれまで「個人消費が平成14年以降の景気回復期においても弱含みのまま推移した背景には、実収入が増えず消費者の購買力が上がらなかったことが影響している」(2009年版「大阪産業の平成の軌跡と展望」)とのべていました。

②家計消費の落ち込み。追い打ちをかけた消費税増税

 府内総生産のなかで52%を占める「家計消費」は、名目でも3年連続マイナスになりました(総務省「家計調査」)。家計消費は2001年度を100とすると東京、神奈川、愛知は5.9〜11.3%の伸びを示すのに、大阪は98・0(マイナス2%)と異常さが目立ちます。
 また消費税が個人消費を冷やし、「商都大阪」を直撃しました。導入時の1989年に府民の民間最終消費は前年比で1.5%落ち込みました。1997年の「5%増税」時はマイナス2.8%、2014年の「8%増税」時はマイナス0.7%の落ち込みです。

 ③大企業の身勝手な拠点・本社の府外移転と中小企業の激減

 この間、大企業の本社・拠点の東京あるいは海外への移転が急増しました。大阪府の2009年版経済・労働白書は「大阪経済の対全国シェア低下の一因として、大阪に本社を置く企業の本社機能の首都圏への移転があげられる」と指摘。その動きを「全国市場、海外市場で事業をすすめる大企業においては、広報、国際、経営企画等の本拠を首都圏に置くメリットが大きい」からと大企業の都合ですすめられたことを指摘しています。
 1991年から2014年にかけて府内事業所のうち50人未満の事業所は約7万1000カ所減り、そこで働く従業者数は26万4000人の減少です。
 製造業の2013年の製造品出荷額は16兆円で、1990年の24.5兆円から35%も減っています。
 大阪府の調査報告書(「大阪経済成長と産業構造」)も、「1990年代には基礎素材型を中心に、2000年代ではほぼ全ての業種でマイナスとなった製造業の競争力低下は、卸売・小売業、飲食店やサービス業などの地域の他の産業にもマイナスの影響を与えたとみられる。製造業機能の府外流出が有力な候補として挙げられる。それ以外にも、本社機能の流出も対事業所サービス業の伸び悩みなどに影響を与えたとみられる」とのべています。

 この10数年来の経緯が示すものは、文字通り府民、労働者のふところが冷え込まされ、「内需」がやせ細ってきたこと、大阪経済の「主役」である中小企業つぶしが進められたところに最大の問題があり、その打開こそ急務中の急務です。

(アベノミクスと「維新政治」の無策・失政)

 「アベノミクス」は一部の大企業や富裕層に巨額の恩恵をもたらしました。大阪労連が2016年1月に発表した資本金100億円以上の府内本社大企業の内部留保は、前年より1.6兆円上積みして32.5兆円に達しています。
 一方、府民のくらしは、不安定雇用の増加や実質賃金の低下、医療・社会保険の負担増と給付減など貧困と格差が拡大しています。大阪の子どもの貧困率は、90年代後半以降急速に悪化し、全国で2番目の高さになっています(山形大学の戸室准教授による)。 
  大阪の「維新政治」は、①「大阪府と大阪市があったから大阪はダメになった」などと大阪のゆきづまりの原因と責任から目をそらして「大阪都」構想づくりの政争にあけくれ、②「労働市場は自由にしなければ、世界各国から企業は集まらない」 「大企業が中小企業の売り先。大企業があってやっていける」(橋下氏)と「大企業応援」の「特区」づくりにのめりこみ、③その一方、大阪府では8年間に1551億円、大阪市では4年間に709億円規模で、住民の暮らし関連施策の軒並みカットを進めてきました。

日本共産党の「3つのチェンジ」で大阪はどう変わるか

(3)

 日本共産党は、破たんしたアベノミクスへの対案——格差をただし、公正な社会をと「3つのチェンジ」(税金の集め方・税金の使い方・働き方のチェンジ)を掲げています。

① 税金の集め方を変える

 大企業へのゆきすぎた減税をあらため、中小企業並みの税率にもどすだけでも6兆円の財源がでてきます。富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革、国民の所得を増やす経済改革で税収を増やし、消費税に頼らずに社会保障の充実と財政再建をすすめます。
 ——所得の低い人ほど重い負担になり、消費を冷え込ませ景気を悪化させる「消費税10%」は、先送り実施でなく、きっぱり断念します。
 ——「103万円の壁」をなくし、「生活費には非課税」の立場から、所得税や社会保険料の課税最低限度額を引き上げます。
 ——4兆円もの大企業減税や大金持ちほど低くなる所得税率、タックスヘイブンなどにメスを入れ、応分の負担を求めます。

 ②税金の使い方を変える

 2016年度のオスプレイ4機購入費447億円があれば、大阪府の保育所待機児3349人は解消できます。トヨタ1社の減税は5500億円。国の中小企業予算総額は1825億円(1社当たりたった47897円)。こんな逆立ちしたムダづかいと不公正をやめ、社会保障の充実と中小企業を抜本的に支援する予算を確保します。
 ——未来を担う若者に投資します。学費を10年間で半額にします。月3万円の給付制奨学金をつくります。奨学金はすべて無利子にします。
 ——子育て支援を抜本的に強化します。認可保育所を30万人分緊急整備で待機児童をなくします。高校卒業までの医療費助成を国と府・市町村の協力で改善します。
 ——安心の社会保障に転換します。年金の削減を中止し、暮らせる年金にします。特別養護老人ホームを増設し、待機者を解消します。介護と国保の料金を引き下げます。
 ——中小企業の予算を1兆円へと抜本的に引き上げます。IT化、販路開拓、研究開発、後継者づくり支援など抜本的支援を行います。住宅リフォーム助成や商店リフォーム助成など、中小企業に仕事を増やす施策を実施します。

 ③働き方を変える

 「多様な正社員」の名による非正規増や残業代ゼロなどの雇用のルール破壊にストップをかけ、人間らしい働き方に変え、誰でも8時間働けば、まともに暮らせ、人生設計できる社会にします。

 ——正社員を派遣社員に置き換えるための労働者派遣法を抜本改正し、派遣から正社員への流れをつくります。

 ——中小企業の社会保険料の使用者側負担軽減などの支援と一体で、最低賃金をいますぐ時給1000円にし、さらに1500円をめざします。

 ——ブラック企業を根絶します。残業時間の上限を法律で規制、翌日の勤務開始まで11時間以上の休息時間保障、サービス残業には支払賃金を〝倍返し〟にします。

 日本共産党はこうした「3つのチェンジ」と一体に、「『消費税にたよらない別の道』——日本共産党の財源提案」を示しています。①富裕層や大企業への優遇をあらため、「能力に応じた負担」の原則をつらぬく税制改革、②大企業の内部留保の一部を活用し、国民の所得を増やす経済改革で、税収を増やします、という2つの柱です。大企業優遇税制を見直して4兆円、法人税率引き下げをやめ、安倍政権以前の水準に戻す(中小企業は除く)なら2兆円など、具体的な展望を明らかにしました。

 安心して働き、くらせる大阪に

 「3つのチェンジ」をつらぬけば、日本経済のゆがみをただし、格差と貧困を打ち破り、消費税増税に頼らない社会保障の財源を確保することができます。それは安心して働き、くらせる大阪に変える決定的カギです。
(庶民の購買力増で、商都大阪の景気を回復)
 消費税の10%増税による府民負担総額は、約2400億円にもなります。これは大阪中の百貨店、あるいはコンビニの総売上の3ヵ月分にもなるものです。これを「延期」ではなく、「断念」してこそ、大阪経済の半分以上を占める個人消費を増やせます。
 また、「働き方を変える」改革で、大阪の111万8000人のパート労働者の時給150円アップや、大阪に本社をおく大企業の内部留保を活用した月2万円の賃上げをすれば消費に回る金額は5377億円、生産誘発効果は4985億円と試算されています(大阪労連ビクトリーマップ)。立場の違うシンクタンクからも、「需要の増加に必要なのは、ほかでもない賃金の上昇である」「家計も、ない袖は振れないため、そもそも賃金が増えていなければ、需要は増やせない。つまり、『需要が増えるためには、賃金の増加が必要』なのである」(荒木秀之りそな総合研究所大阪本社主席研究員『関西から巻き返す日本経済』)との指摘があります。
(社会的公正を実現し、生き生きと働き、安心してくらせる大阪に)
 派遣法や労働法制の改正は、正規でも、非正規でも人生設計ができる社会への展望を開きます。
 私たちの「府内1000人若者調査」では、学生の約半数が奨学金利用によるローンをかかえ、その6人に1人が「500万円以上」でした。給付制の創設など「奨学金革命」で、「お金の心配なく学べる」「希望をもってじっくり研究できる」環境をつくることができます。
 育児休業などを理由に「待機児」から外された児童も含め保育所を必要とするすべての児童が入れる認可保育所が整備され、豊かな子どもの成長を助け、保護者が安心して働けるようになります。
 介護保険外しをやめさせ、住み慣れた地域で安心したくらしができるようなります。特別養護老人ホームの増設は、高齢者が尊厳をもって暮らせる環境を提供します。大阪で1万人といわれている「介護離職」を減らすことができます。

(大企業も、中小企業も発展する大阪への道ひらく)

 「3つのチェンジ」でつくられる安心して子育てできる環境は、人口減少への歯止めになり消費を縮小から拡大に転換します。大企業に社会的責任を果たさせ、人間らしい労働と安定した雇用を確保することは、ゆとりある生活を実現します。安心の社会保障は消費マインドを高めます。医療・福祉・介護など、新しいニーズを掘り起こします。
 全国有数の集積とネットワーク、技能・技術力をもつ大阪のものづくり中小企業が、これらの需要を取り込み、製品化・事業化できるよう支援を抜本的に強めることで、大阪経済低迷の要因の一つとなってきた製造業を再生し、それをサービス業、飲食業に波及させ、大阪経済を元気にすることができます。くらしの向上と内需を軸とした経済構造に切りかえ、中小企業も、大企業も発展する大阪に変えることができます。

この道を、日本共産党とともに、共同の力で

(4)

 私はよびかけます。
 参院選公示を目前に、「野党は共闘」という市民の強い願いを受け、32の1人区すべてで野党統一が実現し、「大阪でも野党がそろって勝利し、自民、公明、おおさか維新を少数に」という流れが広がります。
 そのなかで4野党が共同で国会に、「戦争法廃止法案」に続き、長時間労働を規制する「労働基準法改正案」をはじめ、「介護・障害福祉従事者人材確保特別措置法案」「児童扶養手当法改正案」「保育士処遇改善法案」などくらしと経済にかかわる15本の法案を提出し、これを参院選での「野党共通政策」とする点でも合意されました。
 日本共産党はこれらの共同を誠実につらぬくとともに、「3つのチェンジ」をかかげ、格差をただし、誰もが豊かなくらしを実現できる日本と大阪へと全力をつくします。
 この道をごいっしょにすすみましょう。

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