政策・提言・声明

2008年03月18日

救急医療と公立病院を守るために府民的な対話と共同を

日本共産党大阪府委員会の緊急提言案

2008年3月18日
日本共産党大阪府委員会

 「救命センター5施設断る、東大阪事故の男性死亡」「富田林市女性、救急搬送で34回要請、29病院断られ死亡」など、大阪での救急医療体制の不備による悲惨な事件が相次ぎ、府民に大きな不安を与えています。
 また、阪南市立病院の4月からの小児科等入院受け入れ休止、市立貝塚病院で昨年春から内科の救急外来がストップ、市立岸和田市民病院でも昨春から神経内科の入院診療が休止されているなど、地域医療の中核を担う公立病院も危機的な状況です。
 この「医療崩壊」ともいうべき深刻な事態には、様々な要因がありますが、その根本原因が、これまで政府がすすめてきた、「医療費適正化」のための医師数の抑制や、診療報酬の大幅削減、国公立病院の統廃合など、公的保険・公的医療を切り捨てる「構造改革」にあることは明らかです。
 日本共産党は、これまで、「深刻な医師不足を打開し、『医療崩壊』から地域をまもる日本共産党の提案」(2007年2月7日)などを発表し、国民の命と健康をまもるための提案と地域医療をまもる運動に、府民、医療関係者のみなさんと共同し、全力をあげてきました。
 いま、大阪で起きている問題は、府民の命にかかわる重大問題であり、医師・看護師不足の解消など、根本的な解決ととともに、当面緊急の解決が求められています。日本共産党大阪府委員会は、その立場から、今回「緊急提言案」を発表し、多くの方々に対話と共同を呼びかけるものです。

1、 急増する救急搬送に対応する受け入れ体制の強化・充実

 大阪府内の消防本部の救急活動状況は1989年(平成元年)の24万件から2004年(平成16年)43万5千件と激増しています。ところが救急告示医療機関は逆に2000年(平成12年)の304をピークに減り続け、2007年(平成19年)は270機関と34も減少しています。
 救急医療体制は、地域の休日・夜間急病診療所などが担う初期救急医療機関、365日24時間体制で患者を受け入れる二次救急医療機関、最後の砦である三次救急医療機関という体制になっていますが、全体の底上げが必要です。とくに、二次救急医療機関の充実が急務です。急増する救急搬送に対応する受け入れ体制を緊急に強化します。

(ア) 地域の休日・夜間急病診療所の診療時間の延長など、全府民が安心して受診できるようにします。そのため、府の補助制度を新設し、全府的に手薄な地域を医師会等の協力も得て、全府民が安心して受診できるよう充実します。

(イ) 二次救急の中核を府立病院や市民病院など公的な病院が責任をはたせるようにします。また、既存の民間の2次救急対応医療機関には府独自の補助制度を設けます。

(ウ) 現在13の救命救急センターの継続・強化と共に、泉州地域など手薄な地域に、地元自治体や医師会などと協議し、救命救急センターを増設します。

2、 救急医療のための相談・情報システムの整備

救急医療体制の整備とともに、一刻を争う救急搬送に対応するためには、救急隊が迅速かつ的確に患者を搬送できるように相談と情報のシステムを強化・構築することが必要です。

(ア) 救急医療リアルタイム情報システムの構築…現在の救急医療情報システムを、空床・手術の可否など刻々変わる医療機関の受け入れ態勢をリアルタイムで集約できるように強化し、府内の消防本部に伝える大阪府救急医療オンライン情報システムを構築します。

(イ) 救急医療相談センターを設置…大阪市と府下7つの二次医療圏ごとに、医師・看護師などを配置して、救急隊からの相談に応じて、患者の状況から最も適切な医療機関を紹介する相談センターを設置します。

(ウ) 救急医療の専門医によるコーディネーター事業…病院さがしのコーディネーターを置き、救急隊や相談センターからの依頼などにより患者の状況に応じた最適な病院を選定する援助を行います。

3、 大阪府独自の医師・看護師の確保対策

 医師不足の根本原因が、「医学部定員の削減」を閣議決定までして、医師の養成を抑制してきた政府にあることは明らかです。政府は国民の声に押されて、暫定的に医学部の定員増を認める方向を打ち出しましたが、大阪府は「対象外」にされています。異常な「医師数抑制」路線を改め、医療現場の実態も踏まえて計画的な増員をはかるべきです。
 同時に大阪府としても、独自の医師・看護師の確保対策が必要です。

(ア) 病院勤務医の過重労働など医師の勤務環境の調査をおこない、勤務環境改善のための対策を講じます。

(イ) 出産や育児による女性医師・看護師等の離職を防ぎ、復職を促すため、院内保育所の整備や復職のための研修制度等を設けます。

(ウ) 医学生・看護学生に対する奨学金制度を設け、大阪府の医療に従事する医師・看護師数の増加をはかり、大阪府医師バンクを設置します。

(エ) 医科系大学における救急医療・医学教育に関する研究・研修の充実、救急医療を担う医師の養成について、積極的に協力します。

4、 公立病院を守る緊急対策 

 公立病院は、地域医療の中核を担い、救急医療でも、中心的な役割を果たすべきです。ところが、医師不足の影響を集中的に受け、大阪府内の公立病院は危機的な状況にある病院が少なくありません。
 阪南市立病院では昨年6月末、和歌山県立医大から派遣されていた内科医師が一斉退職し、内科診療の全面休診が始まりました(その後常駐できる医師1人が確保でき、「総合診療」を新設することに)。それは、「新臨床研修制度」(研修医に幅広い研修を義務づけ、力量アップをはかる制度)導入で大学病院を研修先に選ぶ医師が減るなど、大学病院が医師を派遣する余裕をなくしているからです。このように、“大学病院だのみ”が通用しなくなった今、市町村だけに医師確保の責任を負わすことはできません。医師不足の地域や診療科に、必要な医師を派遣・確保する、新しい公的な仕組みづくりを、いまこそ大阪府が責任をもってつくり、それを国は財政的に支援すべきです。
 政府は、自治体病院についても、「不採算」なら「サービス自体が必要でも」統廃合するよう指導し、大阪府でも、多くの病院・診療科が休止・縮小に追い込まれています。大阪府は自治体病院への補助を廃止し、この流れを加速してきました。政府は、公立病院や診療科を減らす計画を自治体に押し付けることはやめるべきであり、大阪府は、公立病院への補助を復活・充実すべきです。

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