政策・提言・声明

2008年07月03日

府民に激痛押し付ける「財政再建プログラム試案」

「試案」は撤回し、府民参加と合意で暮らし応援と財政再建の推進を

2008年07月03日
日本共産党大阪府委員会自治体部長 丸野賢治

 橋下府政の大阪府政改革プロジェクトチームが発表した 「財政再建プログラム試案」 (PT案) に対し、 日本共産党府会議員団は 「財政再建プログラム試案は撤回し、 府民参加で再検討を」 という 「見解」 (4月14日) を発表、 同じく 「要望書」 (4月24日) を橋下府知事に提出しました。 PT案に対しては、 すでに府民の各界・各層から 「このままでは教育や福祉がつぶされる」 「大阪の文化がだめになる」 と怒りの声が上がり、 様々な署名など反対運動が展開されています。 6月上旬に予定される知事案の確定や、 最終案を具体化した予算案が審議される7月府議会に向けて一層の運動強化が求められています。

府民を守る視点も財政再建の理念もないPT案は、 府民の議論の前提にはならない

 府議団 「要望書」 は、 PT案の撤回・再検討を求める理由として以下の3点を指摘しています。

自治体の理念なし

 第1に、 PT案には自治体としての理念がなく、 住民サービスと広域的役割を放棄している点です。 PT案は 「収入の範囲で予算を組む」 というだけで、 府民の暮らしや営業をどう守るのか、 大阪の将来をどう描くのかという理念が全く欠けたものです。 働くルールの破壊による格差と貧困の広がり、 後期高齢者医療制度の実施など国の悪政で府民が苦しんでいるいまこそ、 府民の暮らしを守る第一線で頑張るのが大阪府の仕事です。 こうした理念を放棄した結果、 マスコミ報道でも 「府民の福祉、 教育に激痛」 「弱者にツケ」 と報道されるような内容になっています。
 高齢者、 障害者、 乳幼児、 一人親家庭へのいわゆる四医療費助成の削減には府下のほとんどの自治体も 「特に影響が大きい」 と反対。 街かどデイハウスの補助金や救急救命センター医療補助の削減では 「高齢者の生き甲斐を奪うもの」 「命まで削っていいのか」 という悲痛な声が上がっています。 私学助成の削減は、 年収288万円以下でも7万円もの値上げになるなど中途退学問題をより深刻にします。 学力向上や不登校の減少などの効果が証明されている35人学級の廃止は、 府教育長をして 「教育を死なせるわけにはいかない」 と言わせるほどのひどい内容です。
 弥生文化博物館など府立施設の廃止・統合では、 地元自治体の和泉、 泉大津市長が存続の要望書を上げ、 大阪歴史学会や大学教授らが2万人を超える存続署名を提出、 知事の文化に対する認識不足を厳しく指摘しています。
 新聞紙上の識者のコメントでも 「戦略も工夫もない知事の縮み思考を数字化して見せただけ。 各予算の背景に府民の暮らしがあることを知事は想像できてないように思える」 (加茂利夫立命館大学教授)、 「次世代を育てる教育は財政の論理で論じてはならない」 (教育評論家・尾木直樹氏、 いずれも4月11日付読売新聞) など、 府政運営の基本となるべき理念がないことを問う見解が紹介されています。

悪化の原因不問に

 第2は、 財政悪化の原因である国の地方財源圧迫と開発優先の府政運営も一切不問にしていることです。 財政再建というのなら、 まっ先に無駄な大型開発や同和予算をきっぱり廃止するなど、 税金の無駄使いを徹底してなくすべきです。
 今日の府財政の危機の原因は、 自民、 公明、 民主のオール与党府政が、 関西財界言いなりになって無駄な大型開発事業を進めたこと、 「解同」 言いなりで乱脈な同和行政を続けた結果です。 さらに政府の 「景気対策」 の名による大型開発事業押し付けや 「三位一体改革」 と称する地方への国庫支出金や交付税削減などの地方いじめがあります。
 府の5兆円の借金の大半は、 バブル崩壊後に税収が年度平均3千億円も減る下で、 建設事業費を毎年平均1600億円も増やして大型開発事業を進めたからです。 今日でも高速道路、 箕面森町開発、 安威川ダム、 関西空港関連4事業だけで今後4年間に1294億円の無駄な事業が予定されています。

府民参加で議論を

 第3は、 情報を全面的に公開して府民参加で冷静な議論で財政再建を進めるべきなのに、 今すぐに府財政が破綻するかのように言って、 府民を脅しながら進めるのは誤りだということです。 このため報道でも財政再建への期待と、 施策切り捨てへの不安が交差と、 府民の戸惑いが紹介されています。
 橋下知事は、 このPT案を基に各方面の意見を聞き議論をさせ、 最後に知事が決断するとしていますが、 こんなPT案が府民の論議の前提になるような代物でないことははっきりしています。 撤回して再検討すべきです。

府民の要求運動と共同が、 本当の大阪の改革を進める力

 橋下府政のPT案強行を許さないために、 財政再建と府民サービスの両立を求めて、 大阪府に対し大きな運動を展開することが重要になっています。
 すでに実に様々な団体、 府民によって取り組まれている、 それぞれの要求に基づく運動を前進させながら、 かってなく広がっている共同の可能性を追求することです。
 35人学級見直し、 学校警備員廃止に対し府PTA協議会が父母や教職員と力を合わせて200万人署名を取り組み、 大幅な私学助成削減に対して大阪私立中学校高等学校連合会や同保護者連合会が現行制度を維持するよう要求し、 私学経営者、 教職員、 保護者の運動となっています。 また 「子どもたちに笑顔を」 と公約した橋下知事によって、 「このままでは笑顔が奪われる」 と高校生が 「笑顔をくださいの会」 を結成。 社会福祉協議会も認知症や精神障害者の人権保障ための事業の廃止反対を求めて町内会などの協力も得て署名運動を行っています。 文化団体や学術団体の運動も多彩な人々の賛同を得て広がっています。 府下43市町村のうち 「支持」 を表明しているのは4自治体だけです。

 橋下府政は、 こうした府民の声に応えて、 府民の暮らしを守る努力をぎりぎりまでし、 財政再建は府民合意で進めるべきです。
 具体的には

①大型開発、 大企業優遇にメスを入れる。 住宅が全部売れても750億円の赤字となる 「水と緑の健康都市」 建設事業 (残事業府負担219億円)、 安威川ダム (同285億円)、 槙尾川ダム (同46億円) などの大型開発事業や、 1社に150億円もの大企業向け誘致補助金などを見直す。 法律もなくなったのに続けている同和対策事業は終結する。

②国にたいし地方交付税の増額など地方財政を守るよう求め、 知事が地方財政を守る運動の先頭に立つ。

③財政危機で府民を脅すのでなく、 府財政の情報を全面的に公開し府民参加で財政再建を進める。

 こうした方向でこそ自治体労働者の意欲も引き出し、 協力も得られます。
 ちなみに、 歴代の大阪府政に大型開発の推進を迫り今日の大借金の重大な要因をつくらせた関西財界は、 橋下府政の行革に積極的に注文を付け、 府民犠牲の推進を迫っています。
 関経連は 「大阪府政に臨む」 (4月10日) で、 「知事が就任後直ちに財政非常事態宣言を公表し全事業の見直し」 を進めたことを 「評価」。 補助金や人件費の削減を求める一方で 「法人関連の超過課税の廃止」、 阪神高速大和川線への地元負担継続、 「新名神の当面着工しない区間の早期着工決定」 など大型開発事業を要求しています。
 関西経済同友会は 「橋下大阪府知事への提言-財政再建と経済成長の両立を目指して」 (4月21日) を提出。 「PT試案」 を 「高く評価し強く支持する」 と表明、 市町村や府民との議論で 「橋下知事は四面楚歌に陥る可能性があるが」、 府民犠牲の施策を計画通り 「断行せよ」 と迫っています。
 府民から見て借金戦犯ともいえる関西財界は、 「財政が危機だから」 などと遠慮など一切していません。 府民への犠牲押しつけを強く迫り、 一方で財界のための財政支出をどんどん要求しているのです。
 いまこそ、 理念も府民合意もないPT案は撤回しかないことに確信を持って、 それぞれの切実な要求の実現を求めながら、 かってないほど広がっている共同の可能性を意識的に追求する運動を大きく広げる時です。 そのために日本共産党と民主勢力の真剣な奮闘が求められています。

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