政策・提言・声明

2008年09月20日

大阪府・橋下「改革」とのたたかいの到達点と今後の課題

暮らしを守り、府政の立て直しを願う府民の願いにこたえて 

2008年09月20日
党大阪府委員会常任委員  柳 利昭

 今年1月の大阪府知事選挙は、日本共産党以外の各党による「オール与党」府政がいよいよ行きづまり、太田前知事が「政治とカネ」の問題で再出馬を断念して府政を投げ出すもとでたたかわれました。

 選挙結果は、「大企業いいなりの府政か、暮らし・中小企業応援の府政か」「開発借金づけの府政か、ムダ・不正ゼロの府政か」を訴えた、「明るい民主大阪府政をつくる会」(明るい会)と日本共産党が推薦した梅田章二氏が、前回より得票を増やして健闘。自民・公明に推されて当選した橋下徹氏も、府政の大転換をはかるかのような訴えで支持を集めたもので、橋下氏に投票した有権者の多くも、これまでの府政に不満を持ち、その変革を求めた人々でした。知事選挙で示された府民の願いは、暮らしを守り、府財政の再建を求めるものであり、橋下氏が「オール与党」にくみしていくならば、府民との間に深刻な矛盾を引き起こすことは明らかでした。
 この知事選挙から半年、大阪府の7月臨時府議会は、橋下知事が提案した「『大阪維新』プログラム案」(維新案)にもとづく今年度予算案の一部修正案を、与党の自民・公明両党に加え、野党の民主党も賛成して可決しました。知事がまとめた「維新案」は、府の財政危機を理由にして、福祉や教育、医療への助成制度の改悪や文化施設の廃止など、府民のための施策を軒並み削減する一方で、不要不急の大型公共事業については継続・推進するものでした。知事は、道州制推進の立場から大阪府の役割を考えて「維新案」を具体化したとも述べていて、橋下「改革」がめざす方向も明確になりました。
 この「維新案」の原案である「財政再建プログラム試案」が発表された4月以降、大阪では府民的な大論議と運動が巻き起こりました。「府民のための施策や施設を守れ」と、空前の規模で高まった運動は、当初の府の削減案を二度にわたって修正させるとともに、府の財政危機の原因と責任を問う声も大きく広げてきました。
 「常に世論の反応を見て、自分の立ち位置を決めていく」という手法をメディアで学んだとするタレント出身の知事。メディアを最大限に活用し、「府政を変えてほしい」という期待を集めながら府民犠牲を強行する――橋下「改革」との半年間のたたかいは、この府政が、①歴代の「オール与党」府政が大開発と同和行政優先でつくった借金のツケを、その責任を不問にしたまま府民犠牲で一気に打開しようとする点でも、②府民の暮らしを守る府の役割を投げ捨てて、財界の要求に奉仕する道州制推進のトップランナーになろうとする点でも、大阪府民の願いと真っ向から反するものであることを明らかにしました。
 この間のたたかいをつうじて、知事選挙でしめされた府民の願いと橋下府政との矛盾の深まりを考え、今後の課題を見てみましょう。

1)府民に激痛を押しつけて財政危機打開をめざす橋下「改革」

 2月に就任した橋下知事は、07年度末で約5兆円にのぼる府債残高をあげ、「府は民間企業なら破産状態」だとして「財政非常事態宣言」をおこないました。また、「府のすべての事業、出資法人および公の施設をゼロベースで見直し、収入の範囲内で予算を組む」として、7月までの4ヶ月間の「暫定予算」を組ませました。そして4月には、知事直轄の改革プロジェクトチームが作成した「財政再建プログラム試案」(PT案)を発表。この「PT案」を基本に、府の各部局や市町村、関係団体との調整をすすめて、7月の臨時府議会に本格予算を提案するとしました。

「財政再建プログラム試案」の発表とその内容

 「PT案」は、府の「財政収支の見通し」――従来の手法(減債基金借り入れ、借換債の増発、府債の活用)を継続した場合は2016年度に「財政健全化団体」になるとして、08年度は1100億円、2016年度までに総額約6500億円の改革取組額が必要という試算――にもとづいて、今年度の1100億円の歳出削減・歳入確保を具体化したものです。「PT案」はそのために、一般施策経費330億円、建設事業70億円、人件費300億円~400億円の削減、府有施設・府有地の売却などで300億円~400億円の歳入確保を打ち出しました。
 その内容は、高齢者、障害者、乳幼児、ひとり親家庭への医療費助成(福祉4医療助成)の削減、救命救急センターへの運営補助金の廃止、障害者の作業所やグループホームへの運営補助廃止、35人学級の廃止、私学助成の削減、学校警備員の廃止、商店街支援の削減など431項目にのぼる、すさまじいばかりの府民向け施策の切り捨てでした。また、廃止や統合の対象とされた施設や事業も、国際児童文学館、弥生文化博物館、上方演芸資料館、府立体育館や大阪センチュリー交響楽団など、府民の熱意と運動によってつくられたかけがえのないものばかりでした。
 「PT案」のこの内容にもかかわらず、ときには“涙”も流して連日メディアで発信する橋下知事への府民の期待は高く、新聞社のアンケートで支持率が82%にもなって、知事を批判した議員や首長に抗議が殺到する状況も生まれました。自民・公明の悪政による貧困と格差の広がりのもとで、「暮らしを守ってほしい」と願い、そのためにも府の財政を立て直してほしいと考える、多くの府民の思いをふまえた運動が求められました。

府の財政危機の原因は、税収減とそれを補填しない国の財政制度、歴代「オール与党」府政の大型開発路線に

 大きな激痛をともなう橋下「改革」が府民の一定の期待を集めているのは、「ここまで財政危機なら削減もやむをえない」、「このままでは大阪府が破たんする」という危機感を多くの人が抱いているからです。それだけに、府の財政危機の真の原因について、しっかり見ておくことが大切です。

 その第一の原因は、91年のバブル崩壊以降に府税収入が全国一落ち込んだことと、その歳入減に対して国の地方交付税などの財源調整機能が十分に働かなかったからです。
 府税収入の柱である法人2税(事業税、法人府民税)は、89年をピークに95年には56%とほぼ半減、06年になっても68%にしか回復していません。これは、全国一の事業所数の減少など中小企業の疲弊、大企業の本社と生産拠点の移転、法人税減税などが影響しています。府税収入に地方交付税等を加えた一般財源が06年で90年の1・1倍にとどまっているのに対して、歳出は義務的経費全体で約1・2倍、補助金等も2倍以上に伸びています。

 第二に、バブル崩壊後の国の「景気浮揚策」に追随して、借金による建設事業費を拡大してきたことによる公債費の増加です。政府は、この建設事業費の財源を地方交付税で補填するとしましたが、03年からの「地方交付税の削減、補助金・負担金削減と税源移譲」という、いわゆる「三位一体改革」で約束は守られず、逆に地方交付税は大幅に削減されました。

 第三に、こうした財政状況のもとで府が独自にすすめた、関西空港2期工事や国際文化公園都市開発、水と緑の健康都市開発、コスモポリス、りんくうタウン開発などの、目にあまる大型開発のムダづかいです。
これらの事業は、当初は「一般会計には負担させない」との約束で始められましたが、実際には巨額の府民の税金が投入されました。これらに投入された府財政は、主なものだけでも   億円にのぼり、「維新案」で削減しようとしている6500億円の  %にもなるのです。府民と日本共産党の批判に耳を傾けず、これらをすすめた歴代知事と自民・公明・民主・社民の「オール与党」の責任は、きわめて大きいといわなければなりません。

 この財政危機に対して、これまでの「オール与党」府政は、福祉や教育などの府民サービスを削減する一方で、財界が計画・立案した大型開発だけは、若干のスピードダウンはあっても、すべてのメニューを進めてきました。そして、それでも不足する財源については、「減債基金からの借り入れ」という、将来の借金返済のための積み立てに手をつける「禁じ手」まで使って矛盾を先送りしてきました。
 今回の橋下「改革」が従来と違うのは、この「矛盾の先送り」をやめて、これまで以上のやり方で住民サービスと職員人件費を大幅かつ急速に削減する点にあり、大型開発はこれまでどおり継続するというものです。府の財政危機の真の原因と歴代府政の責任を不問にしたまま、悪政のツケを府民犠牲で一気に解消しようという橋下「改革」の正体を、広く府民に知らせていくことが重要でした。

2)空前の規模で広がった府民運動と党のたたかい

 「PT案」の発表に対して日本共産党は、党府議団声明を出して府民にたたかいを呼びかけました。この声明では、①府民の暮らしや営業を守るという地方自治体の理念が何もなく、府民サービスへの総攻撃で府の役割を放棄するものであること、②財政再建というなら真っ先にメスを入れるべき大型開発や同和事業を見直さず、国の自治体いじめも追及していないこと、③危機をあおるのではなく、府財政の情報を公開して、府民参加の冷静な議論で財政再建をすすめるべきであること、をあげて「PT案」の撤回を求めました。
 「明るい会」も、ただちにアピールを発表し、「7月府議会に向けて、府民生活を守る運動を大きく広げよう」と訴えました。府民要求運動をすすめる7団体は、100万枚の共同ビラを発行していっせい宣伝を行い、「PT案」の内容を伝えて、「ムダを削り国の責任を求めて、財政再建と府民サービスを両立させよう」と呼びかけました。

草の根の府民のたたかいの空前の盛り上がり

 府民のための施策と施設を全面的に切り捨てる「PT案」に対して、各地域と分野から切実な要求をかかげた府民の運動が始まり、日を追うごとに広がった運動は、まさに空前の規模になりました。
 「子どもたちがとびっきりの笑顔で学校に通えるようにしてください」、大阪府庁前を埋めた1500人の高校生や父母、教職員が声をあげ、私学助成削減の中止を求める要請はがき2万8千通を提出しました。「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」の高校生たちも、知事へのメッセージカード2110人分を府に届けて、500人で府庁周辺をパレードしました。
 障害者の医療助成削減などに対しては、府内の関連19団体が総結集して、障害者や家族、施設職員など3000人が府庁を包囲しました。
 大阪府PTA協議会は、「子どもたちへの投資は未来への投資だ」として、小学校1・2年生の35人学級と学校警備員配置の廃止に反対する運動を開始。初めての署名運動を200万人目標で進め、小学校や中学校校長会が支援し、労働組合の全教と日教組が共同してこれを支えました。大阪府立大学では、運営費交付金の減額に対して、教職員と学生自治会をあげて全学署名にとりくみ、短時日で過半数を大きく超える署名を集めました。
 施設や文化を守れという声も急速に広がりました。「ワッハ上方(上方演芸資料館)を応援する会」、「好きやねんドーンセンター(女性総合センター)の会」、「大阪国際児童文学館を育てる会」、「大阪センチュリー交響楽団を応援する会」など、各分野で手づくりの「会」が次々につくられ、署名運動や宣伝活動が行われました。こうした「会」に集まった人たちの多くが、「署名用紙の作り方もわからない」など、初めて行政への要求運動にとりくんだ人たちでした。そして、これらの草の根の運動には、ワッハ上方存続に女優の吉永小百合さん、臨海スポーツセンターのスケートリンク存続に高橋大輔選手、センチュリー楽団にピアニストのブーニンさんなど、内外の著名人からの支援の声がよせられました。
 こうしたなかで、これまでに府に要望書を届けた団体は340以上にのぼり、よせられた要望署名は300万人を突破する大規模なものになりました。これは、橋下知事が1月の知事選で得た183万票をはるかに超え、大阪府の有権者708万人の半数近くに相当するものです。大阪府民は、この間の運動を通じて主権者としての自覚を強めつつあり、府政にきびしい目を向け始めています。

共産党と民主団体も連帯して運動

 各民主団体は、節々で集会や学習会を開催し、宣伝行動やデモにとりくんで府民運動の前進のために力をつくしました。府民要求連絡会や大阪労連が、草の根の府民運動団体と共同して集会を開催するなど、新たな連帯も広がりました。府下の市町村もこぞって補助金削減などに反対の声をあげ、17市町村議会が見直しを求める意見書を採択しました。
 民主団体や党組織を中心に各行政区で結成された「連絡会」も、集会や学習会、共同の申し入れや宣伝活動をくりひろげました。要求を掲げた対話や署名運動が進められ、各地の集会では、救命救急センターや障害者作業所、児童文学館などの関係者が初めて参加して、「PT案」実施による深刻な影響を語りました。これまで身近でないとの声が出がちだった府政への要求運動が、市町村ごとにかつてなく広がったのも新しい特徴でした。
 党府議団も、府内をくまなく回り、各自治体や関係団体、廃止対象となった施設などを訪ねて、実情や要望の聞きとりを進めました。こうした努力は運動にとりくむ人たちの信頼を広げ、党府議団の報告懇談会にワッハ上方の館長やセンチュリー楽団の運営責任者が初めて参加して発言してくれました。

3)府民運動と党の論戦がつくりだした変化と成果

 府民の願いで、「PT案」を一部修正させる

 未曾有の規模の府民運動の高まりは、府議会の論議やマスコミ報道にも大きな影響を与えました。
 「PT案」が論議された5月府議会では、党府議団が各分野の府民の声を具体的にとりあげ、「少しずつのがまんどころか激痛だ」と削減案をきびしく批判して論戦をリードしました。
 府民運動に押された自公民各党も、知事の姿勢を基本的に評価しながら、「PT案」に異議を述べて修正を求めました。また、党府議団の質問に対して、府の教育長や府警察本部長が施策や人員配置、人件費の維持を主張するなど、「PT案」の破たんが鮮明になりました。同時に他党派は、財政危機の原因として、国の地方財源見直しは求めたものの、自らも推進した大型開発の見直しにはふれられず、府民の暮らしを守りながら財政再建を進めていく展望を示せませんでした。
 マスコミ報道も、医療や教育、福祉などで、「PT案」の実施が府民生活に与える切実な影響を伝え始めました。地域の社会福祉協議会の高齢者見守り事業、府立高校の実験や実習などの教務事務補助員をはじめ、府民の暮らしや教育を支えている人々への深刻な影響も紹介されました。わずか1723万円の夜間中学の就学援助制度の廃止を取り上げた毎日新聞の記事は、この制度の廃止には「手のつけやすいものなら府民を支える事業でも容赦なく切るという、知事の姿勢が象徴的に現れている」として「行政の責務」を問いかけました。
 こうしたたたかいの前進のなかで、6月に発表された「維新案」とそれにもとづく08年予算案では、35人学級や障害者施策、救命救急センター助成、警察官定数などの施策と、いくつかの施設を維持する「PT案」の修正が行われました。

日本共産党と民主団体の見解が府民の世論に

 財政再建をめぐる府民的論議のなかで、財政危機の原因と責任を問う議論も高まりました。朝日新聞は社説で、国直轄事業への府の負担金にメスが入っていないと指摘。毎日新聞も社会部長名で、「バブル崩壊後の国の景気対策に従った末に膨れた借金、補助金目当てに行われる無駄な公共事業‥‥そんな『大きな真の敵に』に挑まずして、収入の範囲で支出先・額を決める議論ばかりに目を奪われてはならない」と論評しました。日本共産党と「明るい会」が主張し続けてきた、大型開発のムダづかいという府政の最大の問題点をつく論調が広がり始めたことも重要です。
 「明るい会」が発行した350万枚のビラも反響を呼びました。このビラでは、「府民サービス切り捨てに大規模な府民からの注文・意見、この声を聞いて『維新案』の再検討を」、「暮らし支援と財政再建の両立へ、開発のムダづかいと国の自治体いじめなど、財政悪化の原因にこそメスを」と訴えました。
 ビラを見た府民からは電話やメールが次々よせられ、「会」への電話だけで100本にのぼりました。「赤字だから仕方がない」という人にも、財政再建のためにもムダづかいをただそうと訴えると、「そんなことは知らんかった」、「何であんたら今まで黙ってたんや」、「そこはあんたに賛成や」などと劇的に変わりました。継続的に宣伝・署名にとりくんできた地域や団体からも、府民の反応の変化が報告されました。
 こうした変化は世論調査にもあらわれ、毎日新聞の6月の調査では、財政再建案については全面賛成37%、賛成だが一部は反対が48%となり、具体的な削減案には、医療・福祉・教育の削減に反対が上位を占め、合計で84%でした。府が実施したパブリックコメントでも、大半が「維新案」への反対意見となりました。「知事を支持する人も、暮らしや福祉を守りたいと願っている」、「明るい会のビラの方向で対話すれば理解と共感が広がる」という確信が生まれました。

予算案に自公も民主も賛成、日本共産党の役割が鮮明に

 世論と運動を力に、7月臨時府議会では、私学助成と人件費削減の一部緩和などで、さらに予算案の修正を勝ち取りました。しかし、その内容は18億円とわずかなもので、府民に激痛を押し付ける予算の本質は変わらないものでした。
 この府議会では、橋下「改革」に対する各党の立場が鮮明になりました。
 与党の自民党と公明党は、府民世論を意識して部分的な注文をつけながらも、知事の財政再建の方向と手法を高く評価するとして予算案に賛成を表明しました。2月議会で暫定予算に反対した野党の民主党は、国に権限委譲を求める知事の姿勢が、「政権交代をめざす民主党の立場と軌を一にするところ」だとして賛成に転じました。財政危機をつくってきた自らの責任も明らかにせず、政治を変える中身のない「政権交代」論をもてあそぶこの党の正体を、府議会の場でもさらけだしたものです。
 これに対して党府議団は、府民を守る自治体の役割を投げ捨て、財政危機の最大の原因にメスを入れない「維新案」をあらためて批判。府民の声にこたえた抜本的な見直しを求めて、予算案に反対を表明しました。
 府議会の結果についてマスコミは、「橋下知事の人気を前に‥‥与党に加え、野党の民主も雪崩を打って賛成‥‥共産を除くオール与党化の兆しが見えてきた」(朝日)、「(民主には)、与党席からは失笑が起き、傍聴席からは『ふざけるな』とヤジが飛んだ」(読売)と報じました。予算案の抜本的な修正を求めた府民の願いに、どの党が誠実にこたえたかは明瞭です。自民・公明・民主の各党と府民との矛盾も、今後ますます大きくなるでしょう。

4)橋下「改革」のねらいがはっきりした7月臨時府議会

7月臨時府議会のもう一つの特徴は、橋下「改革」のめざす方向が明らかになったことでした。

大企業支援の関西州の実現へ

 府政運営方針のなかで橋下知事は、「維新案」の先にあるものとして、「分権と集権の新しいシステム」をあげました。
 「分権」とは、府の補助金を交付金化し、福祉などの身近な住民サービスは「自己責任と互助」を前提に市町村に押し付けていくことです。一方の「集権」とは、来年にも発足予定の関西広域連合を、集権化した司令塔機能を持つ関西州へのステップとすることです。関西州は、道路や港湾・空港の整備、企業立地戦略などを展開し、施設などを集約し効率的な行政運営をすすめるとしています。知事は、その推進のためには「大阪府の発展的解消も辞さない覚悟」と断言しました。
 知事は党府議団の「なぜ福祉を削って開発を残したのか」との追及にも、「関西の地図を広げて上から眺めた」として、「大阪の役割というものも‥‥近隣他府県を見渡したうえで、産業政策やそういうことに特化するのが大阪府の役割」と述べ、そうした立場から開発に優先順位をつけたと明言しました。関西財界が要望してきた、大企業の国際競争力強化のための県境をこえたインフラ整備や、大企業向けの誘致優遇策などを効果的にすすめることが大阪府の役割だというわけです。
 この間、自公政府と財界から、道州制導入をめぐって報告や提言が相次いでいます。それらに共通しているのは、国の仕事を外交・防衛などに限定し、地方行政は関西州などに広域的に再組織して、大企業の活動のための条件整備ができるようにすることです。一方で住民に対しては、「自己決定・自己責任の原則」を強調しています。知事の府議会での発言は、こうした自公政府と財界のねらいをそのまま表現したものです。

府の「建て直し」でなく「解体」

 元々、橋下知事が道州制の導入にこれほど熱心だったわけではありません。一方、関西財界は、50年以上前から一貫して道州制の導入を主張し続けていて、知事への働きかけを強化してきました。橋下氏の当選直後には、関西経済同友会の斉藤代表幹事が「地域主権型道州制の実現に向けてリーダーシップを」と注文をつけ、関西経済連合会の下妻会長は、「これから(橋下知事の)教育をする」と述べました。最近の知事の言動を見ると、関西財界の「教育」が成果を発揮して、財界の優等生知事に見事に変身をとげたようです。
 その関西財界は、橋下「改革」に一貫して支持を表明し、府の予算成立に際しても「抜本的な財政再建の第一歩」(大阪商工会議所)と評価するとともに、企業進出のためのインフラ整備など、経済成長を後押しする施策をあらためて求めました。
 こうしてみると、府民犠牲による財政再建という橋下「改革」のねらいは、大阪府の「建て直し」ではなくて「解体」にあり、大企業・財界の要求にこたえるものだということが明らかになってきます。「大阪維新」という大時代なネーミングも、大阪府を旧幕藩体制とみなして、その解体をめざす「明治維新」になぞらえたものでしょう。こうした橋下「改革」のねらいを、広く府民に知らせていくことが求められています。

5)橋下「改革」の本質を明らかにし、

府民ぐるみのたたかいで、「維新案」の撤回と府民のための府政改革を

 この春以来の各分野の大阪府民の運動は、従来の運動の規模をはるかに超える画期的なものでした。橋下知事は朝日新聞紙上で、削減案の見直しについて、「(府民の声が)400万人とか500万人になれば考え直そうか、とも思いますが、100万人や200万人なら進めていきたい」と述べていました。この知事の予想をはるかに超える署名運動などで、部分的とはいえ、当初案の修正を余儀なくさせたことは大きな意味を持っています。
 運動に立ち上がった人たちからは、「存続を前提として、押し返せるものは押し返したい」(ワッハ上方館長)、「今議会で決着したとは考えていない」(国際児童文学館常務理事)などの声があがっています。橋下「改革」がもたらす激痛は、まさにこれから府民に影響してきます。暮らしを守り、府政の立て直しを求める府民の願いは、知事選挙以来一貫したものであり、「改革」のひどい実態や本当のねらいが伝われば伝わるほど、府民の批判は大きくならざるをえません。
 「維新案」は、今後3年間の「集中改革期間」を設定しています。来年度に再検討となった施策や、実施が来年度以降となった問題も数多くあります。9月議会や来年度議会に向けて府民の要求運動をさらに広げ、施策の維持と復活、「維新案」の撤回と府民合意での再検討を求めるとりくみを進めていくときです。
 そのためにも、府民運動と党の論戦がつくりだした成果を確信にする学習を重視しながら、この間運動に立ち上がった団体や個人と幅広く対話して要求を聞き、さらに大きな共同を追求することが大切です。さらに、市町村議会では、補助金の交付金化と総額削減を許さないたたかいと合わせて、それを口実にした住民サービスの切捨てをくいとめるとりくみが重要になります。
 自・公政府が推し進めてきた「構造改革」の矛盾が、国民生活のあらゆる分野で噴き出すもとで、「住民の福祉を図ることを基本」(地方自治法)とした大阪府の役割はますます重要です。橋下「改革」は、道州制の推進が住民にもたらすものを先取り的にしめしており、たたかいは全国的な意義を持っています。知事がめざす府の「解体」のねらいを知らせ、大阪府が果たすべき本来の役割を大いに語り合っていくことです。
 日本共産党は、総選挙勝利で行き詰まった自公政治を変えるとりくみとあわせて、大阪府民の願いに反する橋下「改革」と、正面から対決してたたかうものです。

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