政策・提言・声明

2011年08月29日

教育基本条例案・職員基本条例案について

2011年8月29日
日本共産党大阪府委員会書記長 柳利昭

 橋下知事率いる「大阪維新の会」が9月府議会などに出そうとしている「大阪府教育基本条例案」「職員基本条例案」の中身が明らかになるにつれ、大阪府教育長が「(条例案が)実行されれば大混乱になる」と声を上げるなど、識者、府民からの批判が広がりつつあります。

◇「教育基本条例案」の最大の問題は、府教育委員会は「知事が制定した目標を実現するため、具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成し、校長に提示する」(第7条)ことをはじめ、憲法が禁じる教育への政治介入・支配を図ろうとしていることです。
 「基本理念」(第2条)には、「自己責任」の自覚を持ち、「愛国心」にあふれ、「国際競争に対応できる競争力の高い人材を育てる」などとうたいます。
 これを実現するため、「校長、副校長を公募し、教員は校長のマネジメントに服す」「学力テストの学校別の結果公開」「3期連続で定員割れした公立高校の統廃合」「高校学区制の廃止」など、「国民の教育権」(憲法)に立った公教育を根こそぎ壊す方向を押し付けます。
 これに教職員を従わせるために、校長が5段階の「人事評価」を行い、必ず5%は最低の「Dランク」にすること、連続最低ランクの教員には「特別研修」から、免職へと追い込む「ルール」を決めています。保護者に対しても「不当な態様で要求等をしてはならない」としています。

◇「府職員基本条例」の最大の問題は、「首長の政策に賛同する有能な人材からなる“大阪内閣”を実現」(大阪維新の会による提出理由)という言葉に示されるとおり、府の職員を憲法に基づく国民や府民「全体の奉仕者」から、「知事と“維新の会”の奉仕者」へと根本的に変質させようとしていることです。
 条例案について、橋下知事は「回転ドア方式」などといって、「がんばらない職員」をやめさせる一方、次々と府庁に民間から職員を採用する方向だと述べました。
 人事評価と罰則システムについては、「2年連続最低評価なら“特別研修”」「同一の職務命令に対する3回目の違反でただちに免職」などこと細かに制度化します。

◇2つの条例案の背景には、関西財界の要望があります。関西経済同友会は、橋下知事就任早々の2008年3月に「大阪府に教育改革を望む」という要望書をつきつけ、「グローバル社会の中で個々が自立していくために必要な教育が提供できるよう、教育の仕組みを根本的につくりかえ、運用していく」として、「道徳教育の充実」「高校学区制の廃止」「企業との連携強化」「校長の責任と権限、校長のマネジメント力の強化」「理不尽な保護者への対応」などをうたっています。
 同時に、2つの条例案には、橋下知事と「大阪維新の会」の権力的野望がむきだしです。「民意を反映する教育行政を実現」などとうそぶきますが、とにかく選挙で勝てば、あとは「白紙委任」で好き放題に権力をふりまわすことのどこが「民意を反映」でしょう。またそもそも1976年の最高裁大法廷の判決は、「国家権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならない」と述べています。
 東日本大震災を受け、いま「官」も「民」もあげて、救援・復興へ、そして震災・津波・原発からいのちとくらしを守る大阪づくりへ、知恵と力を発揮すべきときです。また子どもたちの貧困と格差の広がりや「高度に競争的な教育制度のストレス」(国連・子どもの権利に関する委員会の日本への勧告)の軽減をはじめ、深刻な教育の現状をどう打開するか。教育現場と府民、行政が一丸となってとりくむことが強く要請されています。
 ところが、こうした肝心要の問題を投げ捨て、知事と「大阪維新の会」の思うままに政治介入して公教育を解体し、その政治的思惑に従うだけの職員をつくることは、府民の求める大阪づくり、教育づくりのあらゆる面に重大な障害と分断、困難をもちこむものです。
 また2つの条例案は、戦前の痛苦の歴史から、憲法理念としてうちたてた、「教育を不当な支配から排除する」ことや、公務員を「一部の奉仕者」ではなく「全体の奉仕者」と位置づけたことへの真っ向からの挑戦です。
 このような条例案の提出は、断じて許されません。日本共産党は、広範な府民の中で大討論を起こすとともに、府議会・大阪市議会・堺市議会での論戦で彼らを追い詰め、何より今秋に濃厚な知事選・大阪市長選ダブル選挙で、彼らの思惑に痛打をあびせるために総力を上げるものです。

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