政策・提言・声明

2012年04月28日

9問9答 橋下・維新の会は大阪と日本をどう「改革」?

 昨年秋の府知事・大阪市長の「ダブル選」から間もなく半年。橋下徹大阪市長率いる維新の会は、「大阪都構想」の実現に突き進むとともに、次期衆院選での国政進出に向けた動きを強めています。マスコミは橋下市長の言動を連日報じていますが、橋下・維新の会は大阪と日本をどう「改革」しようとしているのか、Q&Aでみてみました。

Q1 橋下さんはいまの日本の政治を「リセット」してくれる?
A1 政治の中身は民主や自民と同じ。もっとひどい政治を一気に

 次期総選挙での候補者選考へ、橋下・維新の会が始めた「維新政治塾」。塾生のためのレジュメでもある公約「維新八策」の原案(「日本再生のためのグレートリセット」)は、「自立する個人」の名で、「労働市場の流動化、自由化」を打ち出し、貧困と格差の拡大を招いた労働法制の規制緩和をいっそう進めるものです。

 外交・防衛でも、「日米同盟を基軸」と明記。「沖縄負担の軽減」も掲げますが、これでは具体的な解決策を示せるはずがありません。TPP(環太平洋連携協定)も推進です。

 さらに「憲法9条についての国民投票」も。憲法改正要件の緩和がない限り、「どんな憲法改正案を論じても絵に描いた餅」などとしています。

 政治塾の開講式で「政治家がいくら変わっても、政治は変わらない。自民も民主も政策を掲げていたが、変わらない」と語った橋下市長。しかし、政治の中身は、民主・自民の政治と何も変わらない、米国・財界べったりです。政策ブレーンも、自民党の森・小渕内閣の経済企画庁長官を務めた堺屋太一氏、小泉「構造改革」の中心メンバーだった竹中平蔵氏や財務官僚の高橋洋一氏といった顔ぶれで、古い自民党政治そのもの。橋下市長は「決定できる仕組みをつくる」と叫びますが、政治の行き詰まりと閉塞感の広がりに乗じて、悪政を一気に進めるのが狙いです。

【資料・語録】

維新政治塾・レジュメ「日本再生のためのグレートリセット」から

 「これまでの社会システムをリセット、そして再構築」「給付型公約から改革型公約へ~今の日本、皆さんにリンゴを与えることはできません。リンゴのなる木の土を耕しなおします」

維新が目指す国家像は「自立する個人」「自立する地域」「自立する国家」の実現

 社会保障制度の「基本的な考え方」は「個人の自立・努力・自由・決定・責任を基軸」「個人の能力を徹底して発揮してもらうために競争は真正面から認める」「その代わり、競争の土俵である最低限の保障はしっかりと整える。ただし努力を阻害するような保障にはしない」

Q2 橋下さんは「はっきりともの言う」「何かやってくれそう」
A2 知事就任後の4年間で、府民の暮らしや雇用はいっそう深刻に

 「大阪府は破産会社」「全国民を勝負師にするためにも、カジノ法案を通して」「いまの日本に必要なのは独裁」――橋下市長は府知事就任当時から、〝過激〟な発言を常に繰り返し、マスコミもこぞって流してきました。09年の政権交代後、民主党が公約違反を続け、「自民も民主も駄目」という国民の失望と怒りが広がる中、「はっきりものを言う」橋下市長の姿に、「何かやってくれそう」と感じている府民も少なくないでしょう。

 でも橋下さんで、何かいいことがあったでしょうか。ちょっと立ち止まって考えてみることが必要ではないでしょうか。

 橋下氏が知事になってからすでに4年数カ月が経っています。太田府政最後の07年と10年を比べると、完全失業率は5・3%から6・6%(全国の1・29倍)に。企業倒産件数は2059件から2375件(全国の15・3%)に増加しています。

 生活保護世帯は21万4778世帯(昨年8月現在)と前年同月比5・2%増、保護率は3・34%で全国平均の2倍以上など貧困と格差の広がりは深刻。その一方で大阪市に本社を置く資本金10億円以上の大企業は約25兆円(11年)もの内部留保を貯め込んでいます。橋下府政の下で、大阪経済の落ち込みは止まらず、府民の暮らしや雇用、中小企業の経営は悪化しています。

Q3 「大阪都」になったら大阪の景気は良くなる?
A3 企業呼び込み戦略が破綻。住民負担増で景気悪化の悪循環に

 橋下・維新の会は昨年のダブル選で、「大阪都構想」で「成長戦略」を実行し、「大阪の経済を活性化させ、景気、雇用を伸ばします」と宣伝しました。その「成長戦略」の中心は「人、モノ、カネ、情報を大阪に呼び込む」というもの。「世界の都市間競争に勝ち抜く」ために大阪府と大阪市の「司令官」を1人にし、確保した財源を、高速鉄道なにわ筋線や関空リニア、淀川左岸線延伸部などの巨大開発に「集中投資」しようというのです。

 昨年末、大阪湾ベイエリア地域などが国の「国際戦略総合特区」に指定され、橋下市長や松井知事は進出企業に対して法人府民税や法人事業税を5年間ゼロとし、その後5年間も半額程度とする方針を提示。しかし、こうした「呼び込み型」の「成長戦略」に見通しがないことは、府のりんくうタウン、WTCビルなど大阪市のベイエリア開発の失敗で明らかです。

 「大阪都構想」では、保険料の値上げにつながる国民健康保険(国保)や介護保険の「一元化」も方針。大阪市では橋下市長の号令の下、「大阪都構想」の実現を前提に、敬老パスの有料化や国保料の減免廃止、非課税世帯からの保育料徴収など、あらゆる世代に新たな犠牲を押し付けようとしています。こうした負担増は、庶民の懐と消費をいっそう冷え込ませ、景気悪化の悪循環につながります。

Q4 「大阪都」で住民サービスは良くなる?
A4 選挙で市民をだまし、あらゆる世代に負担増と切り捨て

 橋下・維新の会は昨年のダブル選で、「大阪都構想が実現すれば市民の皆さんの生活は良くなります」と宣伝していましたが、大阪市で実行していることは、徹底した住民サービス切り捨てです。

 橋下市長の意向を受けて大阪市の市政改革プロジェクトチーム(PT)が4月に出した「施策・事業の見直し(試案)」(PT試案)は、「聖域なきゼロベースの見直し」を掲げ、敬老パス有料化や赤バスの運営費補助の削減、国民健康保険料の市独自減免の廃止、重度障害者世帯やひとり親世帯などの命綱になっている上下水道福祉減免廃止などを打ち出しています。

 前年度非課税世帯からも保育料を徴収し、学童保育の補助金は全廃、新婚家庭家賃補助制度の廃止などを明記。保育所待機児解消でも、認可保育所を建設するのではなく、保育面積基準の大幅引き下げや、安上がりな「保育ママ」の導入も推進。「現役世代への重点投資」(橋下市長)どころか、赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる世代に負担増を押し付けようとしています。

 さらにPT試案は、現在の24区を8~9の「特別自治区」に再編することを前提に、区民センターや温水プールの統廃合・売却を計画。ダブル選で「大阪市は潰しません」「24区24色の鮮やかな大阪市に変えます」と大宣伝した橋下・維新の会のウソとペテンぶりが際立っています。

Q5 橋下さんは府や大阪市の財政を立て直してくれる?
A5 「改革」で借金は減らず、「大阪都」に向けた大阪市解体が狙い

 橋下知事(当時)は就任と同時に「財政非常事態宣言」を発表し、「収入の範囲で予算を組む」として、私学経常費助成の大幅削減、学校警備員の交付金廃止、府立学校の教務事務補助員350人の解雇、千里救命救急センターの補助金廃止、青少年会館の廃止、国際児童文学館の閉館、センチュリー交響楽団の補助金廃止など、府民の教育・福祉・文化に大なたを振るいました。東日本大震災直後の2011年度予算では地震関連11事業を6割カットしました。

 府民の安全・安心を守る府の役割を大後退させた橋下「改革」でも府の借金は減らず、残高6兆円を突破(臨時財政対策債含む)。一方で関空2期事業、箕面森町、安威川ダム、阪神高速大和川線、新名神連絡道など5つの開発で4年間に1300億円を投入しています。

 昨年12月に大阪市長に就任した橋下氏は、今後10年間で500億円の「収支不足」が生じるとして、再び「収入の範囲で予算を組む」という方針で、市民のあらゆる世代に負担増を押し付ける「市政改革」を急ピッチで進めています。それは「財政再建」というよりも、「市政の『グレート・リセット』による政策の転換」「大阪にふさわしい自治の仕組みづくり」(12年度市政運営の基本方針)が前面に。最大の狙いは「大阪都構想」の実現のための「大阪市解体」にあります。

Q6 府庁のWTCへの移転はどうなった?
A6 東日本大震災で被災をしたのに、失政をごまかして移転狙う

 昨年3月の東日本大震災で大阪府内の最大震度は3でした。震源から700㌔㍍離れた大阪市住之江区に立つ超高層の旧WTCビル(大阪府咲洲庁舎、256㍍)は最大1㍍を超える揺れを観測。エレベーター内に職員らが閉じ込められるなど、360カ所に被害・損傷がありました。

 橋下知事(当時)は昨年8月、専門家の指摘を受けて府庁全面移転断念を表明。しかし、「通常のビルとして使うのは問題ない」と繰り返し、建築物への長周期地震動の影響を検討する中央防災会議の結果を待って判断するとしています。

 府議会で2度も移転条例案が否決されたのに、移転に固執した橋下知事は85億円かけてビルを購入し、部局移転を強行しました。東日本大震災後、追加の耐震改修に100億円以上、大手前の現府庁舎と併用すると、今後30年間で1200億円の負担増になります。府庁移転をめぐる無駄遣いは、橋下・維新の会の大失政です。

 旧WTCビルで「関西再生の光が見えた」と言った橋下前知事ですが、同ビルが咲洲庁舎となってから、周辺のコスモスクエア地区への進出を決めた企業はゼロです。

 ところが、松井一郎知事が大手前の庁舎を「近代美術館」にする構想を打ち出したり、ベイエリア地域へのカジノ施設誘致など、自らの失政をごまかしながら、旧WTCビルへの府庁移転を引き続き狙っています。

【資料・語録】

咲洲庁舎の安全性と防災拠点のあり方等に関する専門家会議の委員と橋下知事との意見交換会(11年8月18日)での福和伸夫・名古屋大学大学院教授(建築耐震工学)の指摘から

 「(旧WTCビルがある咲洲地域の)地盤も揺れやすい周期で、(ビルと)共振現象を起す。これを防ぐには、高さを変えるしかない。そういう荒療治をしないと、あの場所で防災拠点はつくれないだろう。(旧WTCビルと地盤の共振は)最悪。オフィスビルの重要な機能を超高層にしておいて本当にいいのだろうかと、みんな議論し始めている。東海・東南海・南海地震はもう避けれないことが分かっているので、全員がちゃんと機能できる庁舎にしておくことが基本だ」

Q7 橋下さんは教育を改革してくれる?
A7 政治権力が教育に介入、学区撤廃で序列化と受験競争激化も

 府内外で立場を超えて反対運動が広がる中、3月の府議会で維新の会や自民、公明などが強行可決した教育関係2条例。「大阪府教育基本条例」は、「教育振興基本計画」について教育委員会との協議がまとまらなくても、知事が教育委員会の意見を付いて府議会に提出、知事に教育委員の罷免権も与えるなど、知事と議会が教育に無制限に介入できるようにするもので、「政治権力は教育を支配してはならない」という憲法と民主主義、教育の原則に反したものです。

 「府立学校条例」では2014年度から府立高校の通学区域を撤廃。東京都では、92%を超えていた全日制都立高校への進学率が、2002年の学区撤廃後89%に低下するという事態も生まれており、大阪でも学校の序列化と競争教育の激化、通学の負担増大が心配されています。

 3年連続して定員割れの府立高校の統廃合を進めるなど、本来府が行うべき教育条件整備に、真っ向から反対する方向です。

 橋下市長は「私学が無償化なのは大阪だけ」と知事時代の〝実績〟を宣伝します。これは公立高校の無償化とあいまって、国民世論に押されて踏み切ったもので、2011年度から当面5年間の制度。しかも財源の多くは私学への経常費助成のカット分の振り替えで、経常費助成自体も大規模校ほど額を増やし、小規模校の経営危機は深刻です。

【資料・語録】

「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」との意見交換(08年10月23日)から

高校生 生活保護を受けられず餓死した人もいるではありませんか。

橋下氏 それは申請の仕方が悪かったり。いまの日本は、自己責任がまず原則。

高校生 その自己責任がおかしい。

橋下氏 なら、国を変えるか、日本から出るしかない。私学助成が削られたというが、ゼロじゃない。

高校生 生きていく上で勉強は不可欠です。

橋下氏 足し算、引き算、掛け算、割り算、読み書きくらいで十分、世の中生きていける。化学式なんていらない。あとで自分でやろうと思えば勉強できる。

Q8 橋下さんのもとで公務員は変わりそう?
A8 自分や特定の政治勢力の言いなりになる職員づくり狙う

 橋下・維新の会は「公務員制度改革」を掲げていますが、その中身はどんなものでしょう。今年度に大阪市に採用された新規職員の発令式で橋下市長は「皆さん(公務員)は国民に対して命令する立場に立つ」と発言。大阪市議会では日本共産党の山中智子議員の質問に、「(職員は)僕の顔色をうかがって組織を動かしてもらう」と答弁しました。

 公務員は憲法や地方自治法で「全体の奉仕者」と定められています。橋下市長が狙っているのは、これと正反対に、自分や維新の会はじめ特定の政治勢力の言いなりになる職員をつくること。「職員基本条例」では、3回連続して同じ職務命令に違反すれば免職とすることや、相対評価で最低ランクが2年続けば免職につなげることさえ定めています。

 橋下市長が業務命令で職員に回答を強制した「思想調査」は、個々人の思想・政治信条・内心に踏み込む違憲・違法なものです。日本弁護士連合会はじめ各界からの抗議が広がり、大阪府労働委員会も市長の責任で調査続行を差し控えるよう勧告する中で、回収データはようやく廃棄されました。

 しかし、橋下市長は「問題ない」と居直り、反省も謝罪もしていません。

 そればかりか橋下・維新の会は、「維新八策」で「職員基本条例」を「発展」させ、法制化すると明記。憲法と民主主義を踏みにじるやり方は許されません。

【資料・語録】

大阪市新規採用者発令式(12年4月2日)での橋下市長のあいさつから

 「皆さんは国民に対して命令する立場に立つんです…皆さんの命令に、これから大阪市民はみんな従うんです。そういうもんなんですね、公務員というのは。だから命令に立つ側は、しっかりルール守らないと、命令なんて誰も聞いてくれない」

大阪市議会財政総務委員会(12年4月13日)で、日本共産党の山中智子議員が、管理職の任用を「原則公募」とする「職員基本条例案」について、「市長のお眼鏡にかなった人で固めた側近政治をやろうとしているのではないか」と質問したことについて

 「僕の顔色をうかがってもらって、あとは議会がチェックすればいい」

Q9 維新の会には既存政党にない力がある?
A9 「議論の必要なし」と数の力で暴走。民意の切り捨てが実績

 昨年の府議選で過半数の議席を獲得した維新の会。直後の5月府議会で維新の会は「君が代」強制条例案や府議会定数削減案を強行。「君が代」強制条例は府議選の公約にもなかったもので、委員会での審議はわずか2時間半ほど。定数削減条例は実質審議ゼロでした。

 橋下市長は「政治にはスピード感が必要」と繰り返し語って、「既存政党」との違いを強調しますが、実際には「選挙で勝てば何でもできる」と数の力で押し通すのが橋下・維新の会の姿です。

 府議定数は現行109から88に大幅削減(次期府議選から適用)。定数1の小選挙区が33から48へと拡大し、昨年の府議選結果を当てはめると、府民の投票の4割が議席に結び付かない「死票」となるなど、「民意」を切り捨てるものです。

 「維新八策」でも、民主や自民同様、国会議員の定数削減を掲げるなど、民意切り捨てを打ち出しています。

 またダブル選で橋下市長は、維新の会は「政党交付金(助成金)も何も受け取っていません。自らの小遣いで集まって、サークルみたいな集団」とアピール。国民の税金320億円を各党で山分けする政党助成金について、日本共産党は受け取りを拒否し、廃止を主張しています。ところが橋下・維新の会は「維新八策」で「削減」を掲げるだけ。国会に進出すれば、政党助成金はちゃっかり受け取ろうというのでしょうか。

「捏造問題」――橋下氏の陳腐な居直り

日本共産党大阪府委員会政策委員会責任者 中村正男

 「大阪市交通局リスト・捏(ねつ)造」問題で、橋下市長は「維新の会」市議団(杉村市議)をかばいだて、みずからも保身のため居直り続けています。

 「捏造」が明るみに出てから、「維新の会」市議団の会見(3月30日)、橋下市長の定例会見(4月2日)、市議会交通水道委員会・各派協議会(4月12日)が開かれました。その焦点を見てみましょう。

偽メール事件と何が同じで、何が違うか

 一つは、橋下市長と「維新の会」は、「杉村質問は『永田・偽メール事件』とは違う」と防戦に大わらわです。「同じ」だと代表辞任まで迫られる。だから「あの質問は問題ない」と言い続けなければならないのでしょう。

 いわく「永田質問は素性の知れないジャーナリストの提供だった。杉村質問は実名を明かした市職員だった」「永田質問は決めつけて個人攻撃した。杉村質問は疑惑の解明を求めた。相手は公務員の労組」などなどです。

 しかし、どうこじつけようと、両方とも、「ガセネタ」で議会で追及した事実は隠せません。

 杉村市議は2月10日、市議会委員会で「捏造リスト」を示し、「交通局と組合が組織ぐるみで市長選に関与していたことを裏付ける」と断定し、リストの「真偽」でなく、「どのような経緯でこの名簿が作成され、誰が、何のために、どのように使われたのか」の「調査」を求めました。

 「維新の会」も3月16日、市労連に「抗議文」をつきつけ、「組合は自らの自浄能力を発揮して…リストは誰が、何の目的で加工したのか、を明らかにすべきです」と“犯人”と決めつけていたのです(お粗末にも、この抗議文を掲載した「維新ジャーナル」は、事実が判明し、「維新」市議団の「お詫び」会見がおこなわれた当日朝、市内各紙47万部に折り込まれました)。

 「偽メール事件」との違いはただ一つ。民主党は非を認め、議員辞職、代表辞任に至りましたが、「維新の会」は居直り続けていることです。

橋下「言論の自由」論を嗤う

 二つめに、橋下市長は「言論の自由」をタテに、「捏造」をもとにした議員の質問もかまわない、などと叫んでいます。

 4月2日の記者会見で、こう論じました。

 ①「朝日」は、光市母子殺人事件の弁護士懲戒請求問題をめぐって、社説で自分に「弁護士資格を返上せよ」と書いた。最高裁で無罪になったが、いまだに謝らない。②それは「言論の自由」があるからだ。事実誤認でも真実と認めるに足りる相当な理由がある場合には免責になる。③議員の質問にも特段の配慮がいる。それが民主国家のあり方――。これは驚きを超え、嗤(わら)えます。

 第1に、「言論の自由」には、「捏造」をもとにした報道や追及など許してはならないという「責任」が、メディアにも、議会にも、ともないます。「自己責任」が大好きな橋下氏が、なぜ今度は口をつぐむのか。

 第2に、橋下氏がやり玉に挙げる「朝日」社説のどこに「捏造」があったのでしょう。これは一審判決有罪を受けて、橋下氏に「弁護士資格を返上してはどうか」と問うたものです。最高裁で、無罪にはなりますが、判決は「弁護士として品位に欠け、不適切な面はあった」とのべています。橋下氏が社説を批判するのは自由ですが、「朝日が謝らないなら、自分も謝らなくていい」などというのは、何でも相手を攻撃することで目をそらさせようという橋下氏一流のペテンです。

 第3に、「民主国家のあり方」をいうなら、メディアにも、議会にも、真実をもとに権力機関をチェックすべき使命があります。この役割を著しく歪め、損なう者に、「議員活動の自由」や「知る権利」などを語る資格はないでしょう。

「公務員(労組)相手なら何をしてもいい」のか

 3つめに、橋下市長の公務員論、公務員労組論の異常なゆがみです。

 橋下氏は、「今回は、公務員の労働組合と役所に関すること」「市民から見れば、税で支えられている集団に変わりはない」(橋下氏のツイッター・3月31日)から、問題ないといいます。

 労組がまるごと税金でささえられているかのようなペテンもみせつつ、「公務員相手なら何をしてもいい」「問題ある労組のことなら手段は問わない」というわけです。

 「大阪維新の会」も、「お騒がせしたこと」は詫びるものの、他に労組の不正を示す資料があるから、謝る必要はないという態度です。

 大阪市の「ぐるみ選挙」の問題も、公金詐取などの腐敗体質も、「維新の会」らが口をつぐむ「解同」との癒着や不明朗人事なども、わが党が一貫してきびしく指摘し、たたかってきた問題です。

 しかし、問題は、だからといって「捏造リスト」をもとに議会で追及したり、違憲・違法の「思想調査」をおこなうことが許されるのかということです。それは、大阪市役所内の腐敗を、今度は「恐怖政治」に置き換えようというものです。私たちはどちらにも断じて「ノー」をつきつけなくてはなりません。

市長与党と市長(代表)はみずからの責任をはっきり認めよ

 今回の問題は、市長与党が「捏造」文書を前提に、市当局と労組の「ぐるみ選挙の裏付け」と断じて質問し、「捏造」が明るみにだされてなお、市長がその与党議員の質問をかばい続けているという問題です。

 これを放置しては、大阪市議会が市長・当局を市民の目できびしくチェックするという機能が根本から損なわれ、市民の信頼は地に落ちます。

 橋下市長と「大阪維新の会」にも問いたい。これがあなた方のいう「責任を取る民主主義」なのか。それこそ「自浄能力」「統治能力」が根本から問われています。

 

(2012年4月29日・5月6日付「大阪民主新報」より)

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