政策・提言・声明

2024年01月22日

「しんぶん赤旗」連載
「維新万博を問う」

第1回 「不要68%」の衝撃

 共同通信社が昨年11月に実施した万博に関する世論調査の結果に衝撃が走りました。「万博は不要」と答えた方が3人に2人にあたる68%にも上り、「維新支持」層でも65%が「不要」と答えたのです。そもそもこの調査の設問に「万博は必要か、不要か」が入ったこと自体、「大阪万博」を巡る様相の「潮目の変化」を物語っています。

 日本共産党大阪府委員会が「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」を記者会見で発表したのは昨年8月30日。その時点で記者らからは、「チケット普及が始まり、開催が差し迫っている。(中止は)可能なのか?」「なぜこのタイミングで中止を?」など懐疑的な質問が出されていました。しかしその会見からおよそ2か月で世論は大きく変化、メディアの論調も変わりました。

批判・警鐘相次ぐ

 「万博混乱の責任 維新も政権も免れぬ」「万博をめぐる混乱は、動機の不純さやあいまいさと無縁ではなかろう」(「朝日」10月23日付)、「膨らむ万博整備費 延期、縮小の検討を求める」「事業見通しや計画の甘さにあきれるほかない」「万博そのものが新たな『負の遺産』になりかねない」(「京都」10月29日付)などと批判や警鐘が相次ぎました。

 維新はこうした世論を前に、一昨年の国会では「地域経済を活性化させる起爆剤」と述べていた馬場伸幸代表も、昨年10月の臨時国会の代表質問ではただの一言も「大阪万博」に触れられませんでした。

最大のアキレス腱

 日本共産党の第29回党大会決議案は、大阪の維新政治について、「自民党政治以上の危険な姿をあらわにしている」が、同時に「大阪のたたかいは維新の最大の旗印の『大阪都』を許しておらず、府民の大多数が反対するカジノ(IR)の強行と、大阪・関西万博への巨額の税金投入への批判は維新の最大のアキレス腱(けん)となりつつある」と指摘しました。

 いま、万博の問題を正面から問い直すことは、国民・府民本位の政治に変える本流を市民の前に明らかにし、逆流を包囲していく一番の近道です。

第2回 「身を切る改革」どこへ

 「昭和の3大バカ査定」(戦艦大和、伊勢湾干拓、青函トンネル)ならぬ、「令和の3大バカ査定」とは何か。「大阪万博、リニア新幹線、防衛費増強か」――10月25日付「日刊スポーツ」のコラム「政界地獄耳」は、こう描きました。

膨張続ける建設費

 「バカ査定」とは言い得て妙です。当初「1250億円」とした万博会場建設費が、2020年末には「1850億円」。「これで増加の話は最後」と吉村洋文府知事が語った言葉はどこへやら。昨年10月には「2350億円」と約2倍に。その直後に今度は政府が「日本館建設」「警備費等」で新たに850億円が出されました。

 上振れは「会場建設費」にとどまりません。政府が先月19日公表した万博「インフラ整備費」は8390億円。シャトルバスルートとして整備を急ぎ2・5倍に膨らんだ淀川左岸線2期工事も含まれます。さらに、万博開催に乗じた広域的なインフラ整備費が9.7兆円とされています。ここには、四国や山陰地方の自動車道の整備費まで含まれています。まさに「底なし沼」状態です。

木造リング350億円

 会場建設費のなかでは、ワイド・ショーでもあいついでとりあげられた「350億円の木造リング」が批判の的です。「なぜ必要なのか」と問われた自見英子万博担当相が「日よけのため」と語ったことでも話題になりました。

 「半年で解体するのに、なぜ350億円も!」。先月12月9日のMBS「報道特集」では、キャスターが「世界最大級の木造建築物を、環境負荷をかけて建てたのにすぐに撤去するということが、果たしてSDGs(持続可能な開発目標)の観点からどうなのか」と語りました。

 あわてて「移設案」「保存案」が浮上しているものの、専門家は「保存なら補強工事、防水・防腐処理で150億円必要。維持費も年5億円!」と指摘しています(昨年11月30日のテレ朝系「羽鳥モーニングショー」)。

 昨年の「朝日」10月1日付社説は「万博の経費増 国民にツケを回すのか」と掲げ、こう指摘しました。「万博は維新が掲げる『身を切る改革』の例外なのか、厳しく問われよう」。

第3回  「夢洲カジノ」ありき  

 2025年大阪・関西万博が国際博覧会協会(BIE)総会で決定された18年11月、カジノの大阪進出をめざしていた米国ラスベガスサンズ社は、「大阪・関西万博は、大阪が掲げる統合型リゾートの計画と密接な関係がある」「いずれも建設地は夢洲(ゆめしま)であり、公共設備やインフラを必然的に共有することになる」との歓迎コメントを出しました。

 夢洲万博とカジノの“密接な関係”は次の経過からも明らかです。

 09年10月に橋下徹大阪府知事(当時)は「こんな猥雑(わいざつ)な街、いやらしい街はない。ここにカジノをもってきて、どんどんバクチ打ちを集めたらいい。風俗街やホテル街、全部引き受ける」と語りました。

万博会場案になく

 14年4月に大阪府・大阪市が夢洲へのカジノ誘致方針を決定しました。

 15年4月に大阪府が「万博大阪誘致構想検討会」を開催しましたが、六つの万博会場案に「夢洲」は存在しませんでした。

 16年6月、大阪府・万博基本構想検討委員会で松井一郎知事(当時)がトップダウンで夢洲会場構想を提案し、その後決定しました。

 松井氏は、検討委員会で夢洲会場案を持ち出す直前の15年末、忘年会の席上で、橋下徹大阪市長とともに安倍晋三首相、菅義偉官房長官(いずれも当時)に働きかけた経緯を、著書『政治家の喧嘩力』の中で書いています。「総理にお酒を注ぎながら、一生懸命、持論を展開した」「『菅ちゃん、ちょっとまとめてよ』-(安倍氏の)この一言で大阪万博が動き出した」

府民は納得しない

 維新の馬場伸幸代表も、「ムダ遣いとは言えない。万博からIRというレールが敷かれていて、うまくいけば大阪・関西経済に大きなインパクトがある。そこには惜しみなくお金を出していく」(昨年9月28日の会見)と露骨に語っています。

 電気や上下水道の新たな整備が必要な夢洲を万博会場にした結果、国民、府民でもある大阪市民は、一人約10万7000円の負担を負わされることになりました。「カジノのための万博」に巨額の公費をつぎ込むことは、到底府民の納得を得られません。

第4回 破綻 二の舞に

 前回の2021年総選挙での街頭演説で吉村洋文大阪府知事は、借金で破産会社だった大阪市を維新が「徹底して改革して財源増やして、借金減らしてきた」おかげで、「万博もめざせるようになってきた」と自慢しました(21年10月27日、鴫野駅前)。

湾岸開発で大失敗

 1980~90年代、関西財界主導のテクノポート大阪構想で、大阪府・大阪市はWTC、ATC、りんくうゲートタワービルなどの大型開発に巨額の税金を投じて失敗し、巨額の負債を抱えました。いま、夢洲(ゆめしま)の巨大開発にのめりこむ維新の姿は、自らが批判した、かつての大阪府・市政と重なります。

 負担増への批判に対し、維新は万博について「2兆円の経済効果」を口にします。アジア太平洋研究所が出した数字ですが、あくまで国内外からの「2820万人(1日20万人)の入場者」が前提です。この実現可能性については、多くの疑問が出されています。

保証なき経済効果

 すでに始まったチケット販売数は、2週間で12万8000枚。今のテンポでは目標まで5年かかるとの試算も。世論は「チケット購入したいと思わない」が79%(「毎日」調査)と冷ややかな中、チケット収益1060億円を見込む運営経費に「赤字が出たら誰が負担するのか」との議論まで起きています。投入額を上回る「経済効果」を生み出す保証はどこにもありません。

 逆に、想定通り1日20万人が来場すると今度は、出入り口が2つしかないアクセスの問題や“トイレ問題”、今回の能登半島地震のような災害が起きた際の避難計画もないなど、問題は山積みです。

 「大阪の成長を止めるな」と言ってきた維新ですが、夢洲の巨大開発に公金投入を続けることは、「成長」どころか、過去のベイエリア開発の破たんの二の舞になりかねません。

 「成長」を言うなら、一時的なイベントだのみではなく、中小企業予算を抜本的にふやし、賃上げの実現で府民の所得を増やしてこそ、経済の好循環を生み出すことが可能になります。

 第5回 傷が浅いうちに

 「万博はすでに決まったことだから止められないのでは」との声もあります。

 たしかに中止には傷が伴います。しかし際限なく膨れる費用や、“カジノと一体”であることなど「夢洲(ゆめしま)万博」のさまざまな問題が浮上するなか、中止の決断は早いほど「傷」が浅くてすむことは明らかです。

日本で中止の歴史

 歴史を振り返ると、1970年の大阪万博以降、大規模な万博は92年まで22年間、開催されませんでした。ばく大な費用がかかるため、ロサンゼルスやパリ、シカゴなど、開催決定後にもかかわらず中止する都市が相次いだためです。95年に共同で開催予定だったウィーンとブダペストでは、ウィーンでインフレの懸念から住民投票の結果中止になりました。ブダペストも単独開催を断念しています。

 日本にも、国際規模の博覧会を開催1年前に中止した歴史があります。東京都の世界都市博覧会(都市博)です。国連をはじめ世界46都市・国内122自治体が参加する計画が進められていましたが、90年のバブル崩壊に直面し、経済状況が一変。95年4月の知事選で「都市博中止」を公約に掲げ当選した青島幸男都知事が、世論に押され中止を決断したものです。

暮らし低迷よそに

 今、多くの国民の怒りの矛先は、長期にわたり「上がらない賃金」や暮らしの低迷をよそに、「いのち輝く」を掲げる万博やその関連事業に、巨額の公金が使われることに向けられています。

 加えて能登半島地震の発災で、「万博の成功が震災復興や経済活性化につながる」(馬場伸幸代表)と強弁する維新ですが、逆に経済紙からも「大阪万博より震災復旧を」(「日経」1月16日付)の声が上がるのが現状です。

 政府が中止を決めたら、国際博覧会協会から違約金の支払いを求められますが、その額は今年4月までなら「木造リング」とほぼ同額の340億円、それを過ぎると約2倍の813億円になります。まさに決めるなら今です。

 “万博より被災者支援、暮らし応援を”――この声に応えるのが、国民の命を預かる政府と自治体の責任であり、国民・府民が望む「いのち輝く未来社会のデザイン」です。

第6回 共産党の出番

 「大阪万博」問題は、総選挙を巡る大阪の政党状況にも変化をもたらしています。

 維新の馬場伸幸代表が自らを「第2自民党」だと繰り返し公言していますが、「大阪万博」問題でもその姿をいかんなく発揮しています。

「第2自民」鮮明に

 この連載の3回目で書いたように、もともと万博自体が、当時の安倍晋三首相と菅義偉官房長官に維新の橋下徹・松井一郎両氏が忘年会で頼み込み実現させたものです。その前途が怪しくなると「政府頼み」で責任逃れを図り、昨秋の臨時国会では、維新として初めて岸田内閣提出の補正予算案に賛成までしたのは万博のためと言われています。

 大阪の自民党は、昨春の統一地方選挙の敗北後、党本部がのりだして「刷新本部」をつくり、維新に対抗戦略をとろうとしていましたが、「大阪万博」問題ではまさに一蓮托生(いちれんたくしょう)。維新を批判する足場を持たず、「刷新」する姿は全く示せません。

 公明党は総選挙での生き残りを図り、昨秋の臨時国会では、にわかに「大阪万博への懸念」を言い出しましたが、自民党や維新とともにカジノ誘致や万博開催を進めてきた事実は決して消し去ることはできません。

潮目の変化つくる

 この中で日本共産党は、万博の夢洲(ゆめしま)開催の危険性を指摘して警鐘を鳴らし続け、いち早く「中止」を打ち出し、大阪市議会・府議会、国会で連携して迫り続けてきました。

 日本共産党はこれまでも、「大阪市を守る」一点で広範な民主団体、府民・大阪市民と力をあわせ、「論戦・共同・草の根」の力を発揮して、維新の看板政策の、大阪市を廃止する「大阪都」構想を2度打ち破ってきました。そうしたたたかいを展開してきたことが今の「潮目の変化」をつくる力になっています。一貫して正面から維新政治と対峙(たいじ)してきた日本共産党の役割と値打ちが光るまさに出番の情勢”です。

 総選挙にむけて、今月末まで取り組んでいる「党勢拡大・世代的継承の大運動」で前進をつくり、維新政治に対しても、自公政権に対しても、反転攻勢に転じるときです。

(※この連載は、党大阪府委員会政策委員会が担当し、「しんぶん赤旗」2024年1月12、13、16、17、19、20日の「近畿面」に掲載されたものです。)

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