政策・提言・声明

2023年07月05日

すべての私学関係者、府民が納得できる「私学無償化」を ――大阪府の「骨子案」について

2023年7月4日 日本共産党大阪府委員会(政策委員会)

 大阪府が5月9日、「高校等授業料無償化制度について(骨子案)」(以下「骨子案」)を発表しました。「学費無償化」は世界の流れであり、日本共産党は、この流れを広げるために日本でも大阪でも力を尽くしてきました。
 今回の「骨子案」では所得制限の撤廃、大阪府外の高校に通う場合にも適用することとしています。

 これは、保護者や教職員が永年進めてきた、すべての生徒の学費無償化を求める請願や「一言はがき」運動などの府民運動を受けてのものであり、評価できるものです。
 同時に、府民から様々な問題点の指摘、意見が出されています。
 大阪府は夏にも方向性を固めるとしていますが、日本共産党は、生徒、保護者、教職員、経営者も含むすべての私学関係者、そして府民が納得できる「無償化」制度にすべきと考えます。真の学費無償化に向け、府民的な議論と運動を呼びかけるものです。

府民の合意・納得が得られる制度に

 今回の案で大きな焦点となっているのは、大阪府の「就学支援推進校制度(キャップ制)」の拡大による学園の負担増の問題です。
 「キャップ制」は、大阪府独自の制度で、府が「無償化」として支援する授業料補助金(年間60万円)と各私学の授業料との差額を、学園側が負担する制度です。現行では、年収800万円以上世帯は保護者負担ですが、「骨子案」ではすべて学園負担となり、学園からは「経営が圧迫される」「教育の質を落とさざるを得なくなる」などの声があがっています。
 また、保護者からは「私学ならではの特色ある教育が失われる」との声や、「入学金を高くしたり、別の名目で徴収金をとるようになり、かえって保護者負担が増えるのでは」との不安の声も聞かれます。仮に入学金の値上げとなれば、現行で授業料無償となっている590万以下の世帯は逆に負担増となり、「無償化」制度の趣旨と逆行することになりかねません。
 それだけに大阪府は、一方的かつ性急に結論を出すのでなく、私学経営者や保護者、教職員、そして府民の声をよく聞き、納得と合意を得る努力を行うことが不可欠ではないでしょうか。

低すぎる経常費助成は抜本的に拡充を

 指摘されている問題のおおもとに、大阪府の私学への「経常費助成金」が、他県と比べても低すぎることがあります。
 大阪府は2009年、当時の橋下徹知事が、「経常費助成金」(人件費など学校の運営経費に対する補助金)の高校一律1割カットを断行。長らく低いまま抑えられ、いまも高校生一人当たりの額は全国平均を約3万円も下回り、全国で下から2番目の低さです。
 このもとで、大阪の私学教員の教育労働条件は低く押さえられ、「3年で契約解除」の有期雇用が蔓延。常勤講師の非正規率は09年から22年まで5%上がり、常勤と非常勤講師合わせ、非正規が5割を超えるのは全国で岡山、福井と大阪の3府県だけです。大阪府は、経常費助成の抜本的な拡充をすべきです。

「パーヘッド」配分方式は廃止を

 さらに配分方式も、それまでの生徒数や教員数、授業料、人件費などの教育条件を加味した傾斜配分方式から、生徒単価均等(パーヘッド)方式に変えたことで、少人数学級を実施したり、授業料を低く抑えてきた小規模校への助成が大幅に減らされました。
 また「パーヘッド」方式により学校の大規模化に拍車がかかり、教職員たちが生徒獲得競争に汲々とせざるを得ない事態を生んできました。「パーヘッド」方式は廃止し、小規模校や少人数学級編成でていねいな教育を行う学校に、安定経営が保障されるしくみに改善すべきです。

入学金・施設整備費も無償に

 さらに、「無償化」の対象を授業料だけでなく、入学金(平均20万円)や制定品購入費など40~50万円にも上る納付金にも広げることが必要です。
 また、現行の「授業料無償化」は、一旦支払った後で返還する「償還制」をとる学校も多く、保護者の肩に重くのしかかります。最初から学費そのものを徴収しない制度への改善が求められます。

国の私学予算を増やし無償化を前へ

 日本の教育予算は、世界のOECD加盟国38カ国中最下位です。なかでも私学の国家予算は公立の3分の1しかありません。ここにメスを入れ、国の私学予算を抜本的に増やすことを求めます。それにより、所得制限の撤廃や入学金・施設設備費も対象とするなど、私学無償化をさらに前に進めます。

保護者、教職員、学園関係者、府民が手をつないで

 教育無償化は、現在の保護者の負担軽減につながるとともに、すべての子どもに教育を受ける機会を保障することは、国民の間の格差をうめ、社会や経済を強くする道でもあります。生徒、保護者、私学関係者など広く府民の声を集め、府民が納得する「私立高校の学費無償化」を実現させましょう。日本共産党も、そのために力を尽くす決意です。

(大阪民主新報、2023年7月9日号に掲載)

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