政策・提言・声明

2015年08月20日

学力テストを高校入試の内申点に反映させる大阪府教委の方針の経過と問題点

                    小林裕和党大阪府委文教責任者

 大阪府教育委員会は4月10日の教育委員会会議で、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校別結果・平均正答率を府立高校入試の内申点に反映させる方針を賛成多数(3対1)で決めました。小学6年生と中学3年生の全員を対象とした国語、算数・数学、理科の3教科による全国学力テストが目前の同月21日に迫るなかでの決定でした。突然の方針決定に学校現場は驚き、同月16日の市町村教育長らへの説明会でも不満や懸念の声が相次いだと報道されました。

 大阪では全国学力テストに加えて、大阪府が中学1年生は国語、数学、英語の3教科、2年生は社会、理科を加えた5教科で、府独自の学力テスト(チャレンジテスト)を今年1月に実施。大阪市が中学3年生を対象とした国語、数学、英語、社会、理科の5教科で、市独自の学力テストを今年2学期に実施するとしており、これらの結果も内申点に反映させる方針です。

 とくに、府教委に影響を与えた大阪市教委の方針は、市独自の学力テスト結果により、内申点として教科ごとに全市の得点分布で上位6%に入る生徒には必ず評点「5」を与え、上位18%に入る生徒には必ず評点「4」以上を与えるなど、異常な競争を学校と子どもに押し付ける内容です。

 これらの方針が学校と保護者、生徒に伝えられるなか、競争教育をあおる動きが強まっており、子どもへのストレスが強くかかり学校が荒れるなど否定的な影響を危惧する声が学校関係者からあがっています。

 全国学力テストの実施主体である文部科学省の専門家会議は7月7日、府教委の方針は「全国調査の実施要領を逸脱」するとしました。これに対して松井一郎府知事は翌日、「ピンボケもいいところ」と述べて教育に介入する姿勢を示し、府教委方針の推進勢力が橋下・「維新」であることを浮き彫りにしました。文部科学省は同月28日の府教委との協議で、「府教委の用い方は趣旨に反する」と重ねて述べています。同省の指摘は当然です。

 日本共産党大阪府委員会が4月10日の談話で述べたように、府教委方針は、“個々の生徒の成績評価を目的としない”(1976年最高裁判決)という全国学力調査の趣旨から逸脱するものであり、撤回すべきです。同時に問題の根本にある、教育をゆがめ学力形成に有害な全国学力テストや府・市独自の学力テストは廃止することが必要です。

 大阪教職員組合や新日本婦人の会府本部、民主法律協会、大阪労連などでつくる教育文化府民会議はこの秋にかけて、全国学力テストや教育問題での府民的取り組みを進めるとしています。

 私たちは、教育に介入し異常な競争と強制を持ち込む「維新政治」に終止符を打ち、憲法と子どもの権利条約の立場から、すべての子どもの成長・発達を保障する教育にむけて、府民的討論と共同の発展へ力を尽くします。(「しんぶん赤旗」2015年8月20日付)

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