政策・提言・声明

2021年12月25日

大阪府民の願いと維新の会

 日本維新の会(代表・松井一郎大阪市長)は総選挙(10月31日投票)で自公政権との「対決」ポーズをとり、大阪府民の利益の代表かのように宣伝しました。果たしてそうでしょうか。府民の願いにそって見てみます。(日本共産党大阪府政策宣伝委員会)

1,何より命 救える命が救えない

 救える命が救えない医療崩壊は二度と起こさないで―この願いを実現するためには、ワクチンと一体で「いつでも、誰でも、無料」での大規模PCR検査で感染者の早期発見、保護する対策で感染爆発を防ぐこと、そして、自公政権の医療・公衆衛生切り捨て政治をおおもとから切り替えることが不可欠です。

病床削減前倒し

 日本共産党は、感染症病床や保健所のための予算を2倍化し医療・公衆衛生体制を強化する、先進国平均に比べ14万人も足らない医師を増員する、「地域医療構想」による20万人分の病床削減計画を中止し拡充することを提案。大阪で医療・市民団体が取り組んでいる「第8次医療計画(2024~29年度)に、感染症専門病院の設置や感染症対応の人材育成を具体的に盛り込んで」「(24区の大阪市に)1カ所しかない保健所を見直し、各区に保健所の新設、公衆衛生医師・保健師の大幅な増員を」などの要求実現に頑張っています。
 弱肉強食の新自由主義を党是ともする維新の会は「今の日本は自己責任の国」「行政の役割は最小に」「社会保障給付費の合理化・効率化を」(維新の会の「維新八策」)と主張。国会で、25年を達成年度にしている病床削減計画を「2025年では駄目。前倒し(を)」(14年6月17日の参院厚生労働委員会で東徹参院議員)と批判しています。国の方針に基づき大阪府は「高度急性期・急性期病床」を14年の5万5222床から25年に4万746床にする削減計画を決め、20年度に229床削減しています。

住吉病院を廃止

 コロナで大事さが明らかになった公立・公的病院ですが、橋下徹大阪市長(当時)は、「年間5億円浮く」と住吉市民病院を廃止。「莫大(ばくだい)な公金を投入して公立病院を維持するということは、日本全体の政治行政のあり方として間違っている。やめよう」(15年1月22日)と議会で主張しています。
 大阪府で、9保健所の職員数を11年の544人から20年の485人へと11%も減らし、大阪市で今年11月には「人員増にかかるコストの増加」などを理由に保健所増はしない方針を決定しています。
 経済効率優先、「何でも民営化」の維新では、命を守る政治はできません。(「しんぶん赤旗」近畿面・12月14日掲載)

2,どの子も大切に 少人数学級に、そっぽ

 今年、40年ぶりに小学校全体の学級規模の縮小(35人学級)が実現しました。長い間の運動に加え、全国各地での父母と教職員の多彩な取り組み、534の地方議会での意見書採択、校長会や教育委員会の全国団体の要請等の中で実現したもので、大きな前進です。
 同時に「小学校だけ、35人学級を5年かけて」では不十分です。なぜ、体も大きく、思春期で手厚い教育が必要な中学生や高校生はしないのか―などの声が上がっています。
 日本共産党は、小中全学年、高校での35人学級、さらに30人学級を実現しようと力を尽くしています。
 また、全国一斉学力テスト(悉皆=しっかい=)、教員評価制度、職員会議の形骸化など、競争と管理の強化で、ここ数年、不登校の急増、子どもの自殺の増加など深刻な状況が生まれています。自主性を保障する教育に改めさせます。

35人学級を拒否

 維新の会は府議会で「(少人数学級で)きめ細かな授業ができるというのは疑問」(2012年3月14日、府議会教育常任委員会)などと効果を疑問視し、大阪市議会で少人数学級を求める陳情の採択に反対(18年12月6日、大阪市議会教育こども委員会)しています。前維新代表の橋下徹氏は知事時代、小学校1・2年生の35人学級の廃止を提案していました。
 日本共産党府議団が「21年度から15道県で、独自に少人数学級を先行拡充しようとしている。大阪府でも35人学級を先行して実施を」と求めたのに対し、吉村洋文知事(大阪維新の会代表)は「市町村が考え、実施していくべきもの」(21年3月5日、府議会本会議)と拒否しました。

競争教育を推進

 維新は「教育は2万%強制」「競争なしでは勉強しない」(橋下徹氏)として、全国学力テストの学校別の公表義務づけ、中学での府独自テストと高校入試の内申点への反映など競争教育を進めています。教員には命令と脅しで「目標」達成を迫り、小中学校も「民営」が理想だとして、大阪市で公設民営学校を開校しています。
 競争と管理が顕著にすすめられた大阪市の小学校校長が「教職員は、子どもの成長にかかわる教育の本質に根ざした働きができず、喜びのない何のためかわからないような仕事に追われ、疲弊していく」と訴える手紙を松井一郎大阪市長に出し、大きな反響を呼びました。
 維新の会は、一人ひとりの子どもを大切にし、豊かな育ちを保障する教育の障害物となっているのです。(「しんぶん赤旗」近畿面・12月15日掲載)

3,8時間働いたら 自公以上の雇用破壊

 コロナ危機で、非正規労働者が真っ先に仕事を奪われ、調整弁にされました。労働法制の規制緩和で、非正規雇用への置き換えがすすめられた結果です。
 日本共産党は、▽派遣は一時的・臨時的なものに限定し常用雇用の代替を防止する派遣労働者保護法をつくる▽パート・有期雇用労働者均等待遇法制定で正社員との均等待遇をすすめ、解雇・雇い止めを規制する▽中小企業支援とセットで時給1500円に―と主張。「8時間働けば普通に暮らせる社会」づくりに奮闘しています。

賃上げと安定を

 コロナで傷つけられた労働者と事業者支援を強めるとともに、賃上げと安定した雇用の拡大をすすめれば、国民の所得が増え、中小企業を含む企業経営全体が改善し、税収も社会保険料収入も増え、健全な経済成長への好循環をつくりだせます。
 大阪府も「大阪では若者・女性の有業率や正社員比率が依然低い状況にあり、大阪の成長を支える分野において正社員化促進と良質安定雇用の実現が必要」(2021年3月、「大阪の成長を支える37業種の企業における正社員化促進、良質安定雇用の実現に向けた調査報告書」)としています。
 維新は、すべてを市場の競争に任せ、資本=企業に対する規制は少ないほど良いという新自由主義の立場から労働市場「改革」を掲げ、非正規雇用をさらに増やすことや解雇紛争の金銭解決=首切り自由化を主張。労働法の保護の外に置くフリーランスや請負など不安定・無権利な働き方に賛成しています。かつて「最賃制の廃止」を公約していました。

ツイート物議

 維新の国会議員は「小泉―竹中路線の労働市場の流動化が上手(うま)くいかなかったのは、正社員という既得権に切り込めなかったから。改革が中途半端だったから」とツイートし物議をかもしました。
 自公政権は、財界の「正社員保護主義で過剰在庫をかかえていては国際競争に勝てない」等の主張に従い、雇用制度「改革」による「成長戦略」をすすめてきました。ところが、非正規雇用の拡大は、正社員も含めた労働者全体の賃金・労働条件を引き下げる大きな圧力になり、賃金は下がり続け、日本は「唯一経済停滞している先進国」になっています。
 自公政権以上の雇用破壊を主張する維新では、くらしの安定も経済の立て直しもできず、一層悪化します。(「しんぶん赤旗」近畿面・12月17日掲載)

4,家計応援こそ カジノは「成長」と無縁

 〝大阪の経済を良くして〟の願い実現の道は、コロナで苦しむ国民の負担を減らすことと合わせ、大企業や大資産家に応分の負担を求めて財源を確保し、暮らしの底上げを図ること、そして、賃上げで国民の所得を増やすことです。 
 岸田政権は、安倍政権同様、給与を上げた企業への法人税減税で賃上げすると言っています。しかし、この政策では多くの労働者に恩恵は届きません。実際に賃金は上がりませんでした。
 維新は「賃上げや投資を行った企業に大胆に税負担を軽減する政策税制を選択する方がベター」(2017年11月22日の参院本会議、片山虎之助議員)と主張し、「経済の好循環につながる」(18年2月28日の衆院本会議、杉本和巳議員)として所得税法改定案に賛成しています。

内部留保活用を

 賃上げのためには「賃上げ税制」ではなく、大企業に内部留保の活用を強く要請することこそ必要です。
 維新はカジノを「成長戦略のかなめ」だとして大阪誘致を推進しています。 
 しかし、カジノは人の不幸でもうけ、「ギャンブル依存症」を際限なく広げるもので、災厄(さいやく)と負の社会・経済効果しかもたらしません。
 大阪府・市の計画に、識者は「6千人超収容の国際会議場計画もコロナ前の2019年に日本で開かれた32の国際会議中、29は学会。産業界の会議はほとんどなく、国際会議にビジネス客が来て、カジノで遊ぶことはありえない」「大阪のIR(統合型リゾート)を訪れる日本人客1400万人の8割が賭博(とばく)客というのはむちゃくちゃ」など破綻と巨額のツケは必至と指摘しています。
 世論調査ではカジノ誘致反対が多数です。(グラフ)

福祉の波及効果

 日本共産党は、カジノ誘致はやめ、公的資金投入は大型公共事業優先から、安心の社会保障づくり優先へ切り替えよと主張。「カジノより福祉・暮らし・子育て」「カジノより防災」の運動をすすめています。
 医療・介護・社会福祉分野への公的資金投入の経済波及効果は、カジノなどのための公共事業より大です。雇用波及効果は、大型公共事業の1・4倍にもなります。こうしてこそ、幅広い需要と雇用を生み、大阪の成長につながります。
 (「しんぶん赤旗」近畿面・12月18日掲載)

5,気候危機 地球の未来を守れ

 「気象庁のデータでは、大阪市の年平均気温は1883年(明治16年)から現在までに、2度以上上昇している」「環境省のつくった『2100年の夏の天気予報』では大阪の最高気温は42・5度になる」―異常な猛暑、豪雨、台風の巨大化など、気候危機は世界でも日本でも大阪でも待ったなしの大問題です。

石炭火発ゼロは

 この大問題の解決に対して本気度の試金石は、二酸化炭素(CO2)を多く出す石炭火力発電への態度です。日本共産党は、2030年までに石炭火発をゼロにする政策を打ち出しています。
 自公政権は、主要7カ国(G7)のなかで唯一、石炭火発からの撤退期限を持たないうえ、これから九つも石炭火発を新増設しようとしています。
 維新も、市民団体から「巨大なリスクを抱える原子力発電は即刻廃止し、石炭火力発電は段階的に縮小し2030年までに廃止すべきです」の提案への見解を求められたのに対し、「石炭火力発電については当面、高効率なものに限り一部活用しながら、段階的な縮減・撤廃を進めていくべき」と回答しています。総選挙政策に「石炭火力発電ゼロ」はありません。
 CO2の排出量削減目標も重要です。
 日本共産党は、省エネルギーと再生可能エネルギーの大規模な普及で30年度までに13年度比で54~63%削減する大改革を提案。年間254万人の雇用が増え、国内総生産(GDP)も累計で205兆円増やせます。地球環境を守ることは、暮らしを豊かにし、経済も発展させることにつながると訴えています。

低い目標に賛成

 一方、維新は世界の主要国や、国連の要請と比べても、極めて低い自公政権の「46%削減」に賛成を表明しています。
 維新府政は「大阪府地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を今年3月に策定しましたが、「2030年度の府域の温室効果ガス排出量を2013年度比で40%削減」と決めました。パブリックコメント(意見公募)の「あまりにも低すぎる。55%削減に変更を」との意見を切り捨てての策定です。
 維新には、地球の未来を守る政治は期待できません。
 (「しんぶん赤旗」近畿面・12月21日掲載)

6,ジェンダー平等 世界の流れに逆行

 コロナ禍で、非正規の多くの女性が仕事を失い、「ステイホーム」が強いられるもとDV被害が急増。女性の自殺の増加率が男性の5倍となるなど、「ジェンダー不平等・日本」の姿が浮き彫りになりました。

生涯賃金の格差

 総選挙で、日本共産党は「ジェンダー平等の日本」を大争点として掲げ、1億円近い男女の生涯賃金格差をなくすこと、女性が多い介護・福祉・保育などケア労働の賃金の引き上げなど、働く場でのジェンダー平等を訴えました。
 そのカギは、EU(欧州連合)でも行われている、企業への男女賃金格差の実態の公表義務付けです。日本共産党は、選挙公約にも掲げました。維新の公約には公表義務付けはありません。
 2019年に自公政権が出した「女性活躍推進法等改定案」では、ハラスメント行為の禁止規定が見送られたことから、日本共産党は、①ハラスメント全般の禁止規定、②被害者の申し立てを調査・救済する独立第三者機関を設置する修正案を提出しましたが、自民・公明・維新が反対しました。改定案はまた、情報公表の義務付けに「男女の賃金格差」は公表項目に含まないなど実効性がないものでしたが、維新は賛成しています。

維新相次ぐ暴言

 01年から16年まで参院本会議で全会一致で採択されてきた「女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准」を求める請願は、維新の会が「保留」を主張したため不採択になりました。維新の浅田均参院議員が述べた「保留の理由」は、米サンフランシスコ市で「慰安婦像の設置が問題になっている。請願採択は設置を応援することに」なるというものでした(17年6月16日)。
 当時大阪市長だった橋下徹氏による「従軍慰安婦が必要だったのは誰だってわかる」との発言(13年)を、維新は訂正も撤回もしていません。
 「慰安婦」をめぐっては、18年に吉村洋文大阪市長(当時)が少女像設置をめぐりサンフランシスコ市との姉妹都市を解消。19年には「愛知トリエンナーレ」をめぐり松井一郎維新代表が「慰安婦の問題というのは完全なデマ」と暴言をはいています。世界で進むジェンダー平等の流れに逆行しているのが維新です。(「しんぶん赤旗」近畿面・12月22日掲載)

7,9条守れ 改憲あおる急先鋒

 総選挙後、自公政権は改憲への動きを急速に強めています。

「9条正面から」

 最大の焦点は、9条改憲です。自民党は「自衛隊の明記」など改憲4項目を選挙公約に掲げ、維新も、「憲法9条について、正面から改正議論を行う」と掲げました。9条を改定し、海外で何の制約もなく戦争をする国づくりをすすめ、東アジアの平和と安定に重大な逆流と危険をつくりだすものです。
 日本共産党は、「9条守れ、憲法生かせ」の国民的な運動で憲法破壊のくわだてを止め、憲法の平和的・民主的条項の完全実施に全力つくします。中国の覇権主義や北朝鮮の核ミサイル問題も、9条を生かし、国際法順守を求める外交交渉でこそ解決への道が開けます。
 自民党が、「憲法改正の発議に向けて(改憲)原案の作成に向けた議論を深めていく」(新藤義孝衆院議員、12月9日)と述べ、維新の会と国民民主党が、「憲法改定論議の加速」で合意し、自民党の改憲策動を応援・後押ししています。
 しかし、いま求められているのは、憲法に反する現実をただし、憲法を政治に生かすことです。総選挙での世論調査でも憲法改定の優先順位は一番下です。(グラフ参照)

憲法を生かそう

 コロナ禍で、「医療にかかれず在宅死」「営業ができず死活問題」「非正規の職を失った」など憲法25条で保障された生存権が奪われる事態がまん延しました。25条を生かし、すべての国民が人間らしく生きられる社会をつくる政治が求められています。
 「非正規の7割は女性」という日本の現実は、コロナ禍でとりわけ女性に大きな負担を強いました。ジェンダー平等社会の実現へ、両性の平等を定めた憲法24条の精神をいまこそ生かすべきです。選択的夫婦別姓や同性婚の問題も、「個人の尊厳、幸福を追求する権利」を定めた憲法13条を生かし実現すべきです。
 総選挙中、維新は公約に掲げながら、街頭では一言も「改憲」を口にしませんでした。ところが選挙結果が出た翌日に、松井一郎代表(大阪市長)は「参院選と同時に(憲法改定案の)国民投票を実施すべき」だと発言。改憲をあおる急先鋒(せんぽう)となっています。国民・府民だましのやり方は許されません。(「しんぶん赤旗」近畿面・12月24日掲載)

8,税金 政党助成金を争奪

 総選挙後、国会議員への月額100万円の文書通信交通滞在費のあり方が議論になりました。
 日本共産党は、日割り支給は当然。それにとどまらず目的・金額や公表のルールをはじめ、抜本的な見直しを主張しています。さらに、「国会議員1人当たり月300万円以上にもなる政党助成金は廃止を」と訴えています。
 政党助成金は、国民に1人当たり250円を負担させ、約320億円もの税金を各党に配分します。国民は、支持しない政党にたいしても強制的に寄付させられることになり、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害する制度です。日本共産党は受け取りを拒否しています。

収入の8割税金

 維新は、その政党助成金を最近3年間に47億2698万円も受け取っています。2020年は収入の8割が政党助成金=税金です。
 維新の政党助成金への執念はすさまじいものです。
 15年の維新の党の分裂時、6億6000万円もの政党助成金が銀行口座に振り込まれることをめぐり、「東京組」「大阪組」で通帳と印鑑を奪い合い、裁判にまでなり、「税金争奪をめぐる醜い争い」と報道されました。
 維新は、政党助成金が余っても国庫に返納せず、ため込み、その額は20年には13億3800万円にもなっています。
 さらに、15年末に日本維新の会議員らが代表の支部で受け取った政党助成金を、新設したダミー団体に「寄付」し、その後、おおさか維新の会に8700万円を還流させ、国庫への返納逃れまでしています。

使い道制限なし

 政党助成金は、使い道に制限はなく自由です。参院広島選挙区の自民党の大型買収事件で、政党助成金1億2000万円が買収に使われたのではとの疑念がくすぶり続けています。
 政党助成金が入った「維新の会国会議員団」の政策活動費約2億円(16~20年)の使途は不明です。松井一郎代表(大阪市長)は「全部オープンというわけにはいかん」「領収書の必要のない経費も必要」(11月17日)と発言。識者から「裏金は必要と言ったに等しい」と指摘されています。
 税金は大切に使って―この願いをふみにじっているのが維新です。「身を切る改革」を口にする資格はありません。(「しんぶん赤旗」近畿面・12月25日掲載)

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