政策・提言・声明

2014年04月04日

教育改革提言「みんなで力を合わせて、子どもの成長を大切にする教育へ」

――憲法と子どもの権利条約を生かして

2014年4月4日  日本共産党大阪府委員会

 「子どものすこやかな成長を」「元気で優しい子に育ってほしい」「必要な学力を身につけてほしい」「どうすれば『いじめ』や『体罰』はなくせるのか」「教育費の負担を軽くしてほしい」――教育をめぐる府民と保護者の願いは切実です。保護者の願いを受けて学校では、子どもの成長・発達にむけた教育実践が日々展開されています。
 こうした府民と保護者、教職員の願いに背いて安倍政権は、「海外で戦争する国」づくりへ、「愛国心」などを押し付ける教科書検定の改悪や道徳の「教科化」、政治権力が教育に介入する教育委員会制度の改悪など改悪教育基本法の具体化を進めようとしています。
 大阪では、橋下・「維新の会」が安倍政権の「教育改革」を先取りして教育委員会制度の廃止を掲げ、首長が教育に介入する教育関係条例や「国旗・国歌」強制条例を強行し、全国いっせい学力テスト学校別結果公表や府立学校卒業式・入学式での「君が代」斉唱の強制など競争主義教育と「愛国心」教育を学校に押し付けています。これらは世界の流れからみても異常です。
 教育関係者からは、「大阪の教育は10年以上後退させられた」「大阪から教師がどんどん離れている」と大阪の教育を危惧する声が上がっています。
 日本共産党は、こうした安倍政権や橋下「維新」の暴走と対決し、府民と保護者の切実な教育への願いに応えるため、教育改革提言をはじめ中学校給食、高校教科書、校長選考、大学改革、「体罰」問題で提言、教育関係条例や「国旗・国歌」強制条例問題で見解を発表し、教育懇談会を開くなど府民共同を広げてきました。
 そのうえで、子どもの成長・発達を保障するため、憲法と子どもの権利条約に立脚した教育改革にむけた提案を行い、子どもと教育を守る府民的討論と共同を呼び掛けます。

1 子どもと教育を守る府民・市民の共同を広げて

(1)政治権力による教育支配――安倍政権の教育委員会制度改悪に反対します

 安倍政権は、憲法にそくして教育の自主性を守るためにつくられた教育委員会制度の根幹を改悪し、国や首長という政治権力による教育への権力的介入・支配への道を開こうとしています。これが具体化されれば、首長がかわるたびに、その一存で教育現場がふりまわされるという混乱が起こり、子どもたちが最大の被害者となります。
 日本共産党は、安倍政権による教育委員会制度改悪に反対し、教育委員会が子ども、保護者、住民、教職員の声をきちんと受け止め、それを教育行政に反映させる機能を果たすよう民主的改革を求めます。
 こうした安倍政権の動きは、解釈改憲による集団的自衛権行使など、「海外で戦争する国」づくりと一体のものです。私たちは、“戦争する国づくり、暗黒日本への道”を許さない府民的な共同を広げるために力を尽くします。

(2)子どもと教育を守るために――橋下「維新」の暴走をストップ

 子どもと教育を守り、良くするために、府民と教育関係者が力を合わせて、橋下「維新」の暴走にストップをかけ、府民の切実な教育要求実現にむけた運動が広がっています。
 大阪市議会は昨年11月末、橋下市長が提出した市立幼稚園廃止・民営化議案(14園)と府大・市大統合にむけた市大関連議案を日本共産党、自民党、公明党、民主系会派の反対多数で否決しました。市立幼稚園廃止・民営化計画の撤回や見直しを求める署名は25万人を超える保護者や住民から寄せられ、府大・市大名誉教授ら21氏は「橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する」声明を発表しました。
 橋下市長が公約した小中学校への学校選択制導入は、住民と保護者、学校関係者から強い批判の声が上がるなか、2014年度の実施は24行政区中12区にとどまり、半数の12区は未実施です。実施の行政区でも通学区域内の学校を希望する保護者は95%です。松井府政は2014年度から公立高校の学区を撤廃しましたが、「学区内」の高校を希望する生徒は前期入試で96%、後期入試で95%に上ることが明らかになっています。
 教育関係条例で「原則公募」とされた大阪市立学校の公募校長(民間人校長)については、昨年9月に11人中6人の不祥事が明るみに出て保護者・市民の批判が噴出するなか、2014年度35人採用予定のところ、昨年末から今年にかけて辞退者(辞職者)が相次ぎ、12人に激減。大阪市議会は3月、橋下市長が提出した2014年度予算案に対して、校長公募関連経費などを減額する修正案を、「維新の会」以外の4会派の賛成多数で可決しました。
 府教育委員会が「国旗・国歌」の記述について「一面的」だと批判し、「維新」が教育委員会に不採択をせまった、2014年度使用の高校日本史教科書問題では、府立高校が自主的に選定した教科書が採択。「維新」の教育行政への露骨な介入にたいして、教育委員からも「教育が政治的圧力や干渉を受けてはならない」と厳しい批判の声が上がっています。
 橋下市長と松井知事が廃止方針を打ち出した府立中之島図書館は、府民世論と図書館関係者の運動の力で存続され、文化財として保存するための改修が行われます。

(3)子どもの成長への願いに応えて――府民の切実な教育要求を実現

 小学校1・2年生の35人学級は、橋下知事(当時)が40人にもどす方針を打ち出したことに対して、保護者と教職員はじめ広範な教育関係者が共同して短期間で109万筆の署名を集めるなどの運動を広げて以降、国基準も動かし、2014年度も引き続き35人学級を継続させています。
 保護者の願いを受けて中学校給食は、大阪府が導入にむけた補助を行うなか実施自治体が増え、完全給食を実施する学校は13%(2011年度)から43%(2013年度)に広がりました。2014年度以降、多くの自治体で実施される予定です。
 高校授業料は、大阪府の公立高校では国の制度が改悪されるなか年収910万円未満の世帯で実質無償化、私立高校では国の制度に上乗せされて年収610万円未満の世帯で実質無償化が継続。加えて、2014年度から大阪府の公立・私立高校で、非課税世帯の生徒に奨学給付金を支給する制度が新設されました。奨学給付金については当初、大阪府だけが給付対象を限定・縮小しようとしましたが、府議会から国基準通りに支給する修正案が提出され、「維新」とみんなの党以外の賛成で可決されました。
 障害をもつ子どもたちの成長・発達を願う保護者の要求をうけた学校関係者の運動のなか、2013年度に豊能・三島地域、2014年度に泉北・泉南地域、2015年度に北河内地域と中河内・南河内地域で新しい府立支援学校が開校します。府立交野支援学校四條畷校も存続されることになりました。
 私たちは引き続き、府民と保護者、教職員のみなさんと力を合わせて、安倍政権と橋下「維新」の暴走にストップをかけ、府民の切実な教育要求実現にむけて力を尽くします。

2 子どもの成長・発達を保障する教育改革へ――日本共産党の提案

 日本共産党は、子どもの成長・発達を保障するため、憲法と子どもの権利条約に立脚した教育改革へ、次のような提案を行います。府民のみなさんのご意見をお寄せ下さい。

(1)「いじめ」・「体罰」問題の解決にむけて

 「いじめ」、「体罰」など子どもたちのかけがえのない命を脅かし、発達を損なう問題をどうなくしていくか――これは日本社会の大問題です。その解決は私たちおとなの責任です。

●「いじめ」のない学校と社会へ

 「いじめ」のない学校と社会にむけて、被害者や関係者の声を正面から受け止め、①目の前のいじめからかけがえのない子どもの命と心身を守るとりくみ、②根本的な対策として、いじめの深刻化を教育や社会の問題ととらえ、その改革を進めるとりくみを行います。

●学校教育やスポーツから「体罰」・暴力をなくすために

 大阪市立高校生が教師から暴力・「体罰」を受け、自ら命を絶った痛ましい事件は、多くの府民と学校・スポーツ関係者に強い衝撃を与えました。
 学校教育から「体罰」・暴力を一掃するために、①「体罰」の実態を調査し、学校での徹底した民主的議論と取り組みを進める、②「体罰」問題などへの相談と対応を行うセンターを設立する、③背景にある「勝利至上主義」や競争主義を克服することを提案します。

(2)少人数学級をはじめとする教育条件の整備・拡充

●少人数学級・30人学級を拡充します

 少人数学級・30人学級は、すべての子どもにゆきとどいた教育を行ううえで必要な教育条件で、府民と教育関係者の強い要求です。少人数学級の教育効果は、すでに教育行政を含む教育関係者が明らかにしています。
 小学校1・2年生まで実施されている35人学級を、国の責任で早期に小・中学校全学年に広げることを求めるとともに、大阪府独自で広げます。高校や特別支援学校の学級定数を引き下げ、養護教諭の複数配置やスクールソーシャルワーカーなど専門職員を増員します。
 産休代替の先生が配置されないなど“教育に穴があく”事態をおこさない手立てが必要です。教職員の正規化をはかり、非正規教職員の劣悪な処遇改善をはじめ教職員の勤務条件を改善します。国に対して義務教育費国庫負担金の国負担率を3分の1から2分の1に戻すことを求めます。
 安心・安全の学校へ、小・中学校の警備員配置、学校耐震化の促進、小・中学校の普通教室へのエアコン設置を進めます。

●安全で豊かな中学校給食の全校実施へ

 子どもの豊かな成長のために、「安全でおいしい」学校給食の充実を求める保護者の声は切実です。学校給食は、憲法と学校給食法に基づき、子どもの生存・成長・発達を保障するために、また、教育の一環として重要な意義をもっています。
 安全で豊かな学校給食の公立中学校全校実施に向けて、①自校・直営方式を広げ、地産地消を進める、②学校給食の実施に必要な教職員の正規雇用を促進する、③就学援助を拡充し、給食費無償化を進める、④市町村への国や府の財政支援を強めることを提案します。

●すべての希望する子どもに高校教育の機会を

 松井府政は、府立学校条例の具体化として、公立高校の学区を撤廃し、高校「再編」を押し付け、橋下市長と松井知事は、市立高校と特別支援学校を強引に府に「移管」しようとしています。「再編」・「移管」の学校への押し付けに反対します。学校の「再編」・「移管」は、首長が強制するのではなく、学校関係者の議論と合意が必要です。
 公立高校前期・後期2回入試は、子どもをさらに競争に追いたて、子どもの心に深い傷を負わせています。公立高校の学区を復活させ、高校入試制度や「多様化」を抜本的に見直します。
 教育の機会均等の実現へ、すべての希望する子どもに高校教育の機会を保障することが大切です。高校進学希望者の全員入学を展望し、必要な条件整備を行います。

●特別支援教育・障害児教育を拡充します

 障害のある子どもが教育から排除されず、豊かな教育を保障することが大切です。特別支援学校・学級などに在籍する子どもの数は増え続けており、設置基準を設け、過大・過密の特別支援学校の劣悪な教育条件を整備することは急務です。
 府民と教育関係者の願いをうけて2015年度までに開校される府内4地域の府立支援学校の条件整備、必要な地域での特別支援学校の増設、障害種別の学級設置など特別支援学級の新増設、すべての小中学校での通級指導教室の設置、通常学級の30人以下学級をすすめます。医療的ケアを必要とする子どものために看護師の配置をすすめます。

●学問の自由・大学の自治を守ります

 憲法が保障する学問の自由・大学の自治を蹂躙し、橋下「維新」が強権的に大学に押し付けている、府立大学と大阪市立大学の「統合」計画を撤回します。大学統合や大学改革は、大学関係者の議論と合意が必要です。学問の自由・大学の自治を擁護し、府大・市大の運営費交付金の増額など、教育研究条件の拡充をはかります。

●公立幼稚園を存続します

 公立幼稚園の幼児教育で果たしている重要な役割を踏まえ、住民と幼稚園関係者が強く批判している、橋下「維新」による大阪市立幼稚園の廃止・民営化計画に反対し、公立幼稚園を存続します。私立幼稚園への助成を拡充します。

●私学助成を抜本的に拡充します

 私学関係者の運動により府の私学助成(経常費助成)は2014年度、国標準額からの削減率が縮小、増額されました。私学助成は私学経営と教育条件に大きな影響を与えます。大阪の公教育を担う私学の役割を踏まえて、私学助成を抜本的に拡充します。

(3)教育のすべての段階での教育費負担の軽減・無償化をめざして

●高校授業料無償制の復活・拡充、学費の引き下げへ

 安倍政権は昨年11月、高校授業料無償制をやめ所得制限(年収910万円未満)導入を強行しました。政府が一昨年に留保撤回した国際人権規約の「高校の無償教育の漸進的導入」からの重大な後退です。国に対して高校授業料無償制の復活・拡充を強く求め、大阪府独自の授業料無償化を実施します。高校生にきちんと就学支援金が支給され授業料の実質無償化が行われるよう、正規の事務職員配置を行います。
 私立高校の授業料は、大阪府では国の制度に上乗せされ2011年度から年収610万円未満の世帯が実質無償化されています。授業料無償化にむけ、これを継続・拡充します。
 府立大学・市立大学の学費を計画的に引き下げ、学費減免制度を拡充します。国公立大学運営費交付金をはじめ基盤的経費の増額、私立大学への国庫助成の増額を求めます。

●就学援助の拡充、給付制奨学金の拡充・創設

 保護者が負担する教育費は、授業料以外に入学金、制服・体育用具、学用品、生徒会・PTA会費、修学旅行費、通学定期代などがあり多額です。
 「子どもの貧困」が広がるなか、これらの教育費の軽減・無償化にむけて、小・中学校の就学援助制度、高校の奨学給付金制度を拡充します。大学で給付制奨学金制度を創設し、有利子奨学金の無利子化と卒業後の年収300万円以下の場合の返済猶予制度を確立します。

(4)すべての子どもに基礎的な学力を保障するために

●基礎的な学力保障は学校教育の基本的な任務

 すべての子どもに基礎的な学力を保障することは、学校教育の基本的な任務です。自然や社会のしくみがわかる知育、市民道徳の教育、体育、情操教育などバランスのとれた教育が大切です。学力保障に一番有効な施策である少人数学級の実現が求められます。
 学習指導要領を抜本的に見直すとともに押し付けをやめ、学校が子どもの状況や地域の実情に応じた教育課程を自主的につくることを尊重します。子どもをふるいわける習熟度別学習の押し付けに反対します。
不登校など教育問題にかかわる教育相談の窓口を拡充します。

●全国いっせい学力テストと学校選択制

 全国いっせい学力テストは、その対策のための学習が強制され、子どもの学力形成からみて有害です。全国いっせい学力テストの廃止を求めます。学力調査は抽出調査で十分です。教育をゆがめる府独自の中学校統一テスト導入に反対します。ゆきすぎた競争教育をさらに助長する学校別結果公表の押し付けをやめます。
 「学校と地域との結びつきが弱まる」「通学路の安全確保が困難」など、学校関係者から強い批判の声が上がっている小中学校への学校選択制の導入をやめます。

(5)教育の自由を守り、学校の自主性を尊重します

●教育委員会制度の改悪を許さず民主的改革へ

 安倍政権による教育委員会制度改悪の動きに呼応して、橋下市政は昨年12月、「首長への教育行政の指揮監督権限の付与」を主張する教育委員会制度のあり方についての報告書をまとめ、市教育委員会は2月末、首長権限をさらに強化することを求める要望書を国に提出しました。
 教育委員会は、戦前の中央集権型の教育行政を反省し、首長が教育を直接支配しないようにつくられた、首長から独立した行政機関です。これを踏まえた民主的改革が必要です。
 憲法にそくして教育の自主性を守る教育委員会の改革にむけて、①教育における自治を尊重し、子どもと保護者、住民、教職員の意見をきちんと受け止め反映させる仕組みをつくる、②首長から独立した行政機関にふさわしく財政上の権限など教育委員会の自主的な権限を強める、③教育条件を整備し学校を指導・助言するなどの役割をもつ教育委員会における教育長の専門職化、指導主事など教育行政職員の専門性向上を重視することを提案します。

●首長による教育への介入をやめさせます

 憲法に保障された教育の自由が守られ、学校の自主性が尊重されてこそ、学校での教育活動が豊かに発展します。教育内容への不当な介入は、教育をゆがめ子どもの成長・発達を妨げます。全国いっせい学力テスト学校別結果公表の強制など首長による教育への介入をやめさせます。首長が教育に介入する、大阪府・市の教育関係条例は廃止します。
 教育をゆがめる「授業評価アンケート」や「評価・育成システム」をやめ、授業研究など学校の自主的な取り組みへの支援を行います。「同和教育」は完全に終結します。
 政府が批准して20年を迎える子どもの権利条約を大阪の教育に生かします。

●校長選考は子どもと教育の立場で

 校長は、教育の専門家として、教職員への適切な指導・助言や学校での合意形成、必要な教育条件整備、保護者や地域との協力・連携を行うことなど学校教育で重要な役割を担っています。こうした役割を踏まえて、①校長公募制は抜本的に見直し、公募校長(民間人校長)の大量採用は中止する、②校長選考は憲法と教育の条理、教育関係法令にもとづいて行う、③学校と校長への教育委員会の支援を強めることを提案します。

●教科書は学校ごとに選ぶことを基本に

 子どもたちが学ぶ教科書は、学校教育法などにもとづき、学校が子どもと地域の実情を踏まえた教育課程を編成するなかで、教育の専門家である教師が調査・研究し、保護者の意見も聞き、選定・採択されることが大切です。教科書採択の制度は、子どもの意見表明も尊重し、学校関係者の意見を踏まえて充実をはかります。
 教育行政は教科書問題で教育に介入せず、教科書選定にあたる学校と教師の調査・研究活動を支援し、学校の選定結果を尊重します。「愛国心」教育を押し付ける教科書検定の改悪に反対します。
開館110周年を迎えた府立中之島図書館を存続し拡充をはかります。大阪国際平和センター(ピースおおさか)は、関係者の意見を聞き、設置理念にもとづき充実をはかります。過去の侵略戦争を正当化する「近現代史博物館」構想に反対します。

●卒業式・入学式での「国旗・国歌」の扱い

 卒業式・入学式は、子どもにとって最善のものにするため、教職員、子ども、保護者で話し合って行えるようにします。「国歌」斉唱がある場合でも、アメリカのように斉唱を拒否する自由が、生徒にも教職員にもあることを明確にして、内心の自由を守ります。「愛国心」を府民と学校に押し付ける、憲法違反の大阪府・市の「国旗・国歌」強制条例は廃止します。

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