政策・提言・声明

2017年10月05日

すべての希望する子どもに
高校教育を保障するために
――大阪府立高校・市立高校廃校計画の撤回を

小林裕和・日本共産党大阪府委員会文教委員会責任者

 子どもと保護者の高校教育への切実な願いを踏みにじって、維新府政・市政は、府立高校と市立高校の廃校計画を進めています。

子どもの学ぶ権利を奪う高校廃校計画

 これまでに府教育委員会は、府立池田北高校と咲洲高校を2016年度から、西淀川高校を17年度からそれぞれ募集停止しました。大正高校は18年度からの予定です。さらに9月1日、府立柏原東高校と長野北高校を19年度から募集停止する計画案を示しました。

 大阪市教育委員会は7月14日、市立西高校と南高校、扇町総合高校の3校を1校に統廃合する方針を決めました(22年4月に新校開校予定)。

 これらは、13年11月に定められた府立高校・市立高校7校程度廃校計画に基づくものです。憲法が保障する子どもの学ぶ権利を奪う高校廃校計画は撤回すべきです。

高校廃校計画の問題点と今後の展望

(1)生徒数の減少にどう対応するか

 高校廃校計画の理由とされるのは、当面する中学校卒業者数の減少です。09年度から21年度の12年間で推計約6千人の減とみられますが、この7割を公立高校で対応すれば約100学級、1校あたり平均約0.7学級の減となります。生徒数の減は、高校の募集学級数を調整することで十分対応することができます。高校を減らす必要はありません。

 全国の公立高校の学校規模は1学年あたり6学級ですが、大阪では8学級と過大です。生徒数が減るときにやるべきは、学校規模の縮小です。

 また、小学校1・2年生で実施されている少人数学級・35人学級を小学校全学年と中学校、高校へと広げることが求められます。少人数学級の教育効果は、子どもの学力向上など明らかです。高校でも少人数で展開する授業が行われ、喜ばれています。いまやるべきは、少人数学級・35人学級を高校に広げ、教育条件を整備・拡充することです。

(2)「定員割れ」問題をどうみるか

 府立学校条例には3年連続「定員割れ」で廃校とする規定があります。全国的にも異例です。募集停止の対象校(案)とされた府立柏原東高校は15年度9人、16年度23人、17年度18人、長野北高校は15年度13人、16年度3人、17年度29人と、それぞれ1学級に満たないわずかな「定員割れ」です。両校とも各年度、200人以上の新入生が校門をくぐっています。

 もともと高校の入学定員は、受け入れ可能な生徒数の上限を定めたものです。この5年間、府内の公立・私立高校の募集人数は学校関係者の合意で、府内進学予定者数より約3千~4千人多く確保されてきました。入学定員にゆとりをもたせ、“15の春を泣かせない”ために子どもの高校進学を保障することが目的です。そのため、2月と3月の入試を経て、一定数の高校で若干の「定員割れ」が生じることは当然です。

 学校間の生徒獲得競争をあおって教育をゆがめ、入学定員を満たしているかどうかを高校存廃の基準にすることはやめるべきです。これでいちばん被害をうけるのは、子どもたちです。3年連続「定員割れ」で廃校とする理不尽な規定をもつ府立学校条例は、抜本的に見直すことが必要です。

(3)大阪市内中心部の教室不足と「公設民営」学校

 大阪市は市立高校統廃合の理由として、高校廃校後の跡地利用をあげています。

 市内の中心部に位置する行政区(北区、中央区、西区)の一部地域で人口が急増し、今後、児童・生徒数が増えることから、教室不足が問題になっているからです。教室不足を解決するためには、住民と学校関係者の意見をよく聞き、学校の新増設や校区調整などの対策を検討すべきです。

 また、大阪市は高校統廃合の理由に、国際的な教育課程(国際バカロレア)をもつ中高一貫の「公設民営」学校を設置することをあげています(19年4月開校の方針)。「公設民営」学校は、大阪市が多額の建設費(約60億円)や教職員人件費などを負担し、指定された学校法人が管理運営するとされます。

 “公教育への民間参入で新たな市場拡大”への道を開く「公設民営」学校の設置をやめ、35人学級や就学援助費の拡充など教育条件を良くすることが大切です。

(4)高校再編は慎重な議論が必要

 学校は長い年月をかけて地域社会と深く結びつき、地域での文化的役割を担っています。公立高校の存続・発展は、地域の振興にとっても重要です。

 大阪の高校は、それぞれ歴史と伝統をもち、多くの卒業生を送り出し、地域に根ざして社会に貢献してきました。地域になくてはならない、子どもの成長・発達にとってかけがえのない大切な役割を果たしています。なくしていい高校はありません。

 高校再編は、生徒や保護者の意見をよく聞き、学校関係者のあいだでの慎重な議論と合意が必要です。教育行政が高校に対して強権的に統廃合を押し付けることは許されません。

(5)ゆきすぎた競争教育をあらためる

 安倍政権の補完勢力である維新の政治は、これまでに全国的にも突出した、極端な競争主義教育を大阪の子どもと学校に押し付けてきました。

 全国学力テストの学校別結果公表と小中学校選択制の導入、公立高校学区の撤廃と高校入試の内申点に反映させる府独自の学力テスト(「チャレンジテスト」)実施などです。なかでも、3年連続「定員割れ」で府立高校を廃校にすることは異常さが際立っています。

 欧米では高校入試が基本的にないなど、日本のような競争的な制度はありません。国連・子どもの権利委員会も、日本政府に対して「高度に競争的な教育制度」が子どもにストレスを与え発達に障害をもたらしていることを厳しく指摘し、その改善を求めています。

 ゆきすぎた競争教育は、自己肯定感が育まれず「成績上位」の子どもにも常にストレスがかかる、子どもどうしを分断して共同の力が育たないなどの問題点が指摘されています。

 子どもの成長・発達のために、競争主義の教育をあらためることが重要です。

高校を守る運動の発展を

 今後、教育をゆがめる「チャレンジテスト」を廃止し、学区復活など高校入試制度を抜本的に改善するための府民的討論と改革が必要です。

 生徒や卒業生、保護者、地域の方々から「大切な学校をなくさないで!」と高校の存続を求める声が上がっています。すべての希望する子どもに高校教育を保障するために、府民・市民共同を広げ、高校を守る運動の発展が求められます。(こばやし・ひろかず)

 

(「大阪民主新報」2017年10月8日付)

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