政策・提言・声明

2007年01月24日

子どもたちの未来を守り、成長・発達を保障する教育の改革へ力をあわせましょう

憲法と“教育の条理”をよりどころに

2007年1月24日
日本共産党大阪府委員会文教委員会

 いま、子どもと教育をめぐって、いじめ、学校の「荒れ」、学力「低下」、教育格差、高い教育費など、さまざまな問題が山積しています。
 また、格差社会と貧困のひろがりのなかで、子どもと保護者のおかれている状態は深刻さを増しています。

憲法と“教育の条理”をよりどころに

 こうしたなかで、子どもたちの人間的な成長と発達を保障する教育が切実に求められています。そのためのよりどころとなるのは、日本国憲法と“教育の条理”です。 憲法のもとで制定された教育基本法は、教育は人間と人間の信頼により自由で自主的な空間でなりたつことなどの“教育の条理”をしめし、戦後の日本と大阪の教育にとって大きな役割を果たしてきました。“教育の条理”というこれまでの教育基本法がしめしてきた精神は壊すことのできないものです。

改悪教育基本法と大阪府の「教育改革」

 ところが、政府・与党は教育基本法の改悪を強行しました。これは、「愛国心」を押しつけ、教育の自由・自主性を踏みにじるという、憲法に背反する重大な問題をもち、歴代の自民党政府がすすめてきた競争とふるいわけの教育をさらに広げるものです。改悪教育基本法では、切実な教育問題を解決することはできません。
 こうした改悪教育基本法を先取りしているのが大阪府の「教育改革」です。この間、「日の丸・君が代」の押しつけや、いっせい学力テスト、府立高校統廃合、全国一高い授業料にエアコン代上乗せなどが強引にすすめられました。府立高校統廃合やエアコン代上乗せなどに賛成したのが自民・公明・民主など「オール与党」です。

子どもたちの未来を守るために-日本共産党は府民のみなさんと力をあわせます

 日本共産党は、府民の教育要求から背をむける大阪府の「教育改革」に反対し、少人数学級の実現をはじめ府民のみなさんと力をあわせてきました。
 今後、教育基本法が改悪されたもとで、その具体化に反対し、学校教育への押しつけを許さないとりくみを、憲法と“教育の条理”をよりどころに、府民、学校関係者のみなさんとともにすすめます。
 改悪教育基本法から子どもたちの未来を守り、府民の教育要求を実現するために、私たちは次の五つのことを提案し、府民のみなさんの討論と共同をよびかけます。

いじめ問題の解決のために

 いじめを原因とする子どもの自殺が相次いでおこっています。富田林市では中学一年生の女子生徒が自殺しました。本当に心が痛みます。どうすれば、いじめをなくせるのか、子どもを守ることができるのか。いじめを克服する教育実践や学校づくりなど、学校関係者のあいだで真剣なとりくみがすすめられています。 ところが、政府・文部科学省は、いじめ件数など数値目標を学校におしつけたり、子どもを競争にかりたて、ふるいわけ、子どもに強いストレスをあたえるような教育をすすめてきました。これでは、いじめ問題を解決することはできません。

●人間を大切にする学校教育に

 なによりも人間を大切にし、人間らしい関係を大切にする学校教育が求められます。
 一人ひとりの子どもに教職員の目がゆきとどき、教職員が協力してとりくめるようにすることが大切です。
 そのためにも、ゆきすぎた競争教育をあらため、少人数学級の実施など教育条件を拡充し、教職員の協力をさまたげる「評価・育成システム」をやめます。

子どもの命と安全を守り育てるために - 学校と地域・家庭が共同して

●痛ましい事件の教訓とひろがる地域でのとりくみ

 子どもの命と安全を守るうえで、教育大池田小事件や寝屋川中央小事件は子どもを守るために政治は何をなすべきか、重要な教訓を残しました。 二度とこのような痛ましい事件がおこさないために学校警備員や教職員増、学校施設・設備の充実など必要な教育条件の整備をおこないます。 同時に、事件後、寝屋川ですすめられている学校関係者と地域、保護者の共同したとりくみが注目されています。また、地域で子どもを見守るための自主的なとりくみも府内でひろがっています。学校と地域・家庭が共同して子どもを守り育てるとりくみをいっそう広げます。

●学童保育や児童館などの充実

 学校5日制が施行されて5年になります。土曜日や放課後の子どもたちの居場所、遊び場所などの教育環境を整えます。学童保育の充実、児童館や公園、広場の拡充をすすめます。
 子どもにとっても大人にとっても重要な役割を担っている社会教育施設としての図書館、博物館などの充実が必要です。社会教育へ市場原理をもちこむ指定管理者制度の導入や法人化に反対します。

格差社会と貧困の広がりから子どもを守る

 政府の「改革」のもと大阪では、子どもと保護者の生活状態が深刻さを増し、教育に重大な影響をおよぼしています。 朝食をとらずに学校に来る子ども、満足な学用品を買えない子どもなど、学校教育の土台を掘り崩す事態が急速にすすんでいます。 就学援助や授業料減免を受ける子どもたちは、年々増え、4人から5人に1人です。 また、経済的困難が親子のつながりを壊し、児童虐待の要因にもなっています。 教育格差による貧困の次の世代への連鎖という問題も指摘されています。

●子どもを守るために緊急にやるべきこと

 このなかで、子どもを守るために、自民党政治のおおもとをただし、人間らしい労働のルールをつくること、庶民増税の中止が緊急の課題です。 同時に、府による全国一高い授業料へのエアコン代上乗せや、授業料減免改悪、私学助成の削減などをやめ、保護者負担軽減への切り替えをおこないます。

●ゆきすぎた競争教育の是正

 国連(子どもの権利委員会)からきびしく勧告されているように、子どもの成長・発達をゆがめる競争教育を是正することが必要です。また、弱肉強食の市場原理を教育にもちこむことは許されません。
 子どもを競争においたて、「勝ち組」「負け組」にふりわける、いっせい学力テストや学校選択制はやめます。
 高校未履修問題では、高校教育や大学入試のあり方など府民的な討論をすすめます。

すべての子どもにゆきとどいた教育を

●30人学級・少人数学級をさらにひろげる

 府民と学校関係者の強い要求である30人学級・少人数学級にむけた運動が実を結び、大阪府で35人以下学級が小学校1・2年生で実現しました。 この背景には、毎年多くの署名にみられる府民運動とともに、全国的な少人数学級のひろがり、岸和田市や富田林市、柏原市など府内自治体での少人数学級の実施があります。今後、小学校全学年、中学校、高校に広げます。 いま、教育行政がやるべきはこうした教育条件を整備・拡充することです。

●高校つぶし(統廃合)計画の中止を

 「15の春」を泣かせない、すべての子どもの高校への進学機会を保障するため、府民と学校関係者が強く反対している府立高校の統廃合計画を中止します。
 高校間の格差を拡大し、子どもを競争においたて、ふるいわけをすすめる高校の学区拡大はやめます。多様化・「特色づくり」は、学校関係者の意見を尊重し「特色」校の実情をふまえて、抜本的に見直します。

●教育費保護者負担の軽減

 教育費は「受益者負担」ではなく公費負担が原則です。教育費を増やし、府立高校クーラー代徴収をやめ、授業料減免や就学援助、私学助成・授業料補助、奨学金などの拡充をすすめます。教材費など保護者負担を軽減します。

●障害児教育の充実、過大・過密の解消

 養護学校や小・中学校の障害児学級に通う子どもが増え、教室を仕切ってしのいだり、子どもの通学時間が60分以上もかかるなど、過密・過大の実態は深刻です。これらは、現場の努力だけでは解決されず、養護学校の増設、教職員増など教育条件を抜本的に整備することが緊急に必要です。養護学校増設のための高校跡地の活用など関係者の要求にこたえます。
 また、発達障害をもつ子どもに対象をひろげる特別支援教育の実施にあたっては、必要な教育条件整備をおこないます。

●不登校、ひきこもりなど多様な問題にたいして

 今日の教育、社会状況のもとで不登校やひきこもりの子どもや青年が増えています。
 このなかで、親身になって保護者の話を聞き、解決の方向をともに考える民間の教育相談や子どもの居場所づくりなど保護者と関係者の共同したとりくみが府内ですすめられています。
 教育行政はこうしたとりくみを励まし、必要な支援をおこなうとともに、公的な教育相談、児童相談にかかわる専門職員を増やすなど条件整備をすすめます。

●安全・安心の学校へ

 安全・安心の学校のために、地震に強い学校施設・設備への改善、アスベスト対策、プール施設の改善などをすすめます。
 全国的にみても大きくたちおくれている中学校給食の導入へ、教育関係者の意見も聞き、必要な条件整備をおこないすすめます。

●教職員の長時間・過密労働の解消

 教職員の労働条件は、子どもと教育にかかわる問題として重要です。長時間・過密労働のなかで教職員の在職死や休職が増える傾向にあります。教職員の勤務実態調査をおこない、教職員増や専門職によるサポートなどの条件整備をすすめます。

子どもの権利、教育の自由、自主性を守る

●子ども条例について

 大阪府は子ども条例(仮称)制定への検討をすすめていますが、関係者から多くの問題点が指摘されています。 条例制定にあたっては、府民と関係者のあいだでの討論と意見を尊重し、子どもの権利条約が示す、子どもの発達権や意見表明など参加の権利を保障することや条件整備など、基本的な内容が条例に具体化されることが求められます。 また、児童虐待の防止のために、児童相談所の専門職員の増員などの条件整備をさらにすすめます。

●「同和行政」・「同和教育」の終結

 1969年の矢田事件以後、暴力・利権集団「解同」(部落解放同盟)による教育への介入・暴力が横行し、これとの日本共産党と教育関係者の共同したたたかいがすすめられました。大阪の子どもと教育を守る、このたたかいの歴史的意義は大きく、「解同」の暴力・利権を許さない府民世論の形成に大きな影響をあたえました。
 しかし、すでに同和問題は実態としても法的にもない今でさえ、大阪府による学力テストを使った「同和」実態調査や副読本「にんげん」の購入・配布など、「解同」と癒着した「同和行政」「同和教育」が継続しています。一日も早く、「同和行政」「同和教育」を終結させます。

●教育行政の民主的な改革

 教育行政が、大阪の子どもと教育のために、教育諸条件の整備・確立をはじめとする本来の役割を発揮することがいま、切実に求められています。
 ところが、教育行政は「日の丸・君が代」や習熟度別授業、「こころの再生」などを学校に押しつけています。これは、教育内容や教育方法への「不当な支配」です。
 一方、府教委汚職や教育委員の不見識発言などは、教育行政のあり方が根底から問われる重大問題です。
 教育の自由、自主性を守り、府民と学校関係者の立場にたった教育行政への民主的な改革をすすめます。
 また、教育行政は、学校づくりへの保護者、地域住民の参加への支援をおこないます。

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