政策・提言・声明

2010年03月15日

橋下府政2年間 日本共産党の立場と主張

2010年3月15日
日本共産党大阪府委員会政策委員会

はじめに――いま府政の最大の課題は何か

 いま大阪府民の暮らしも中小企業の経営も本当に危機的です。昨年の大阪の完全失業率は6・6%で、全国平均よりも1・5ポイント高く、完全失業者は28万人です。企業倒産件数は前年比18・3%も増え、全国の実に15%、資本金100万円以下の企業の倒産件数の割合が全国の2倍以上に上っていることも特徴です。
 生活保護率は2・8%、就学援助金の受給率は27・9%と、いずれも全国平均の2倍と、大阪の貧困と格差の広がりは深刻です。
 こうしたときこそ、府政と知事に求められることは、持てる力を出し切って府民の暮らしと営業を守ることです。こうしてこそ、内需主導での大阪経済の活性化につながります。
 府政の評価は、府民の願いに応えているかどうかが、何よりの基準ではないでしょうか。しかし、橋下知事が「最大の課題」「政治生命を懸ける」と言って取り組んできたことは「WTCへの府庁舎移転」、「伊丹空港の廃港」、「大阪府市の解体」、「道州制の導入」など、どれも府民の現実や願いとはかけ離れたものばかりです。
 マスメディアの世論調査で、知事への高い支持率が伝えられていますが、その内容は、「『政策に期待できる』、『公約は守っている』は低調」(「読売」)、「具体的な政策より、発信力への期待が評価を支える構造が浮かんだ」(「毎日」)などと指摘されているように、橋下府政の実績への評価は少なく、「何か変えてくれそうだ」という、漠然とした期待というべきものです。
 同じ調査では、府政の優先課題として、経済の活性化や医療・福祉の充実、雇用対策などが上位を占めていて、この間の府政がこうした府民の願いに応えきれていないことを反映しています。
 日本共産党は、この間、切実な府民の願いに寄り添って、その実現を目指すとともに、「府民が主人公の府政」への転換を正面から提起してきました。このたたかいの中で、切り捨てられようとした福祉・教育・文化を守れという保守・無党派の立場の皆さんとの新しい共同も大きく広がり、マスメディアの中からも、「『面白ければそれでよし』と知事の過激発言を垂れ流すだけなら“翼賛報道”とやゆされても反論できまい。私たちはこれらの報道と一線を画し」(毎日)との反省の声も出始めています。
 日本共産党は、引き続き、府民要求の実現に力を尽くし、橋下府政の実態を知らせ、「住民福祉の機関」としての大阪府政のために全力を挙げるものです。

橋下府政が府民と大阪にもたらした3つの害悪

 橋下知事のやり方は、最近の議会(2010年2月議会)での「大企業が国際競争力をつけるように支援するのが行政の役割」との発言に端的に表れているように、府政を府民ではなく、大企業に奉仕する機関にしてしまおうとしていることです。
 そして、橋下府政の2年間は、大阪府政と府民に重大な害悪を与えてきました。
 第1は、府民生活の危機には目をつぶり、「財政危機」のみを強調して、府民サービスを徹底して切り縮めてきたことです。
 知事は、就任早々発表した「財政再建プログラム試案」で、高齢者、障害者、乳幼児、ひとり親家庭への医療費助成(福祉4医療助成)の削減、救命救急センターや障害者作業所・グループホームへの運営補助廃止、35人学級の廃止や私学助成の削減、商店街支援の削減など府民向け施策を軒並み切り捨てようとしました。
 また、大阪センチュリー交響楽団への補助金の廃止や、27の府立施設のうち、国際児童文学館をはじめ、ドーンセンター(女性総合センター)、ワッハ上方(上方演芸資料館)、府立体育会館など、20の文化・体育施設を廃止・縮小の対象にするなど、大阪府民の財産であるすぐれた文化、芸術、学術を根こそぎ破壊しようとしてきました。
 さらに知事は、府民には「自己責任」と「互助」を求め、残ったわずかの福祉などの施策さえ財源も保障しないで市町村に押し付けるなど、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」(地方自治法第1条の2)という地方自治体としての役割そのものを投げ捨てようとしているのです。
 第2は、府民には我慢を強いる一方で、無駄な大型開発は、ほとんどそのまま進め、府民の税金を浪費してきたことです。
 就任直後は、「『聖域なく』見直す」と言っていた大型プロジェクトは、若干のペースダウンをしたものの従来通り継続し、国際文化公園都市や水と緑の健康都市、安威川ダム、阪神高速道路大和川線など不要不急の公共事業に巨額の税金を投入してきました。
 さらに、「ベイエリア開発の起爆剤に」と、府庁舎のWTC移転を計画し、2度にわたる府議会の否決にもかかわらず、116億円も出して、同ビルを買い取ろうとしています。これこそ最悪の無駄遣いです。
 「関空のハブ化」や「梅田と関空を結ぶリニア建設」など、ますますエスカレートするこうしたやり方は、大型開発を「起爆剤に」して、大企業を呼び込めば、府民の暮らしと中小企業が潤うという、破たんが証明済みのやり方そのものです。決して大阪経済の活性化にはつながりません。
 第3は、教育への強権的な介入をはじめ、異常な府政運営を行ってきたことです。
 橋下知事は、大阪の全国学力テストの順位が低いことに腹を立て、「このざまは何だ」と教育委員会に罵声を浴びせ、「非公表なら予算をつけぬ」と市町村教育委員会を脅かし、結果公表を迫りました。また、市町村別平均点を公表する府独自の学力テストの計画や進学に特化した「進学指導特色校」は子どもを競争に駆り立て、序列化をいっそう進めるものです。
 就任早々自分に従わない職員に「府庁から去れ」と問答無用に迫ったことをはじめ、「(指導力不足の公立学校教員は)ただちに教育の場から去ってもらいたい」と分限処分をちらつかせる、さらには児童文学館の中をビデオカメラで隠し撮りするなど、時には手段も選ばない高圧的で威圧的なやり方は異常です。

橋下府政のもとで果たしてきた日本共産党の役割

 日本共産党と10人の大阪府会議員団は、こうした橋下府政の下で唯一、建設的な役割を果たしてきました。
 第1は、府民と力を合わせ、「橋下行革」から府民の暮らしを守るために頑張ってきたことです。「財政再建プログラム試案」に対してはいち早く府民にたたかいを呼び掛け、35人学級や障害者施策、救命救急センター助成など、いくつかの施策を守ることができました。
 また、「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」の高校生たちとも連帯した私学助成削減反対のたたかいは、新政権の政策に重ねて、大阪府に全国一高い府立高校授業料のエアコン代を含む無償化、私学学費の一部無償化を踏み切らせました。府営水道の料金値下げのための具体的提案を繰り返し行い、知事は「大変参考になった」と答え、この4月からの料金値下げにつながりました。新年度だけでも54億円の府民負担軽減です。
 一方、自民、公明、民主の各党は、結局わずかな修正で府民サービスは削り、大型プロジェクトは進める「大阪維新プログラム」やそれを具体化する予算にも賛成してきました。
 第2は、道理のある論戦で府議会を動かし、橋下知事が独断で進める関西財界言いなりの「大阪改造」に歯止めをかけてきたことです。
 この間、橋下知事は、府議会のいままでの議論と結論も無視して、WTCビルの購入を決め、伊丹空港の廃港・跡地の売却まで言い出しました。日本共産党は、他の会派が「知事人気」の前に正論を公然と言わない傾向が強まる下で、府庁舎のWTC移転が防災上も府民の利便の点でも、また財政負担の上でも最悪の選択であることを解明して、議会での論戦をリードし、移転案を2度にわたって否決する原動力となりました。府民合意のない「伊丹廃港」に「異議あり」ときっぱり発言しているのも日本共産党です。
 第3に、「大阪は猥(わい)雑なまち。風俗街やホテル街、全部引き受ける」発言や、「くそ教育委員会」発言、生理休暇や母性保護まで否定する女性蔑視(べっし)など、橋下知事の数々の暴言に対して、府民の良識を反映して原則的な批判を行い、人権と民主主義を守る先頭に立ってきたのも日本共産党です。

日本共産党が府民とすすめるたたかいの課題

 いまこそ、府民各層の要求の実現を正面に掲げ、府民の暮らしと営業を守ることが求められています。
 第1に、日本共産党は、府内大企業には、雇用と中小企業を守る社会的責任を求めます。府内に本社を置く資本金100億円以上の大企業122社だけでも、この10年間で内部留保を2兆円も増加させています(大阪労連調べ)。いまこそ、巨大な内部留保の一部を取り崩し、「非正規切り」をやめて「正社員化」を進めること、単価の切り下げや、突然の契約打ち切り・削減などの下請け中小企業いじめをやめて中小企業の経営を守ることなど、大企業としての社会的責任を果たすべきです。知事としてその立場で、府内大企業に直接、強く申し入れるとともに、国に対しては行き過ぎた大企業・大資産家減税の是正や抜本的な労働者派遣法の抜本改正を求めるべきです。
 第2に、これ以上の府民サービスの削減に反対するとともに、壊された府民サービスを再建し、35人学級の小学3年、中学1年生への拡大、保育所待機児童解消や児童虐待対策など、府民要求を1歩でも2歩でも前進させるために奮闘します。
 また、後期高齢者医療制度の廃止や、障害者自立支援法の「応益負担」の廃止、国保や介護保険への国の補助金を増やして、府民負担を軽減するよう求めます。
 第3に、中小企業の経営を守るため、大阪府独自の特別融資の創設、学校や住宅の耐震改修、河川の老朽護岸の改修、バリアフリーのまちづくりなど、安全なまちづくりで、中小建設業の仕事を増やすことです。新製品や新しい加工技術の開発のために、大学等の研究機関との連携や販路拡大の支援を行うことなど、府内中小企業への直接の支援を強めます。
 第4に、教育への不当な介入に反対し、すべての子どもたちに基礎的な学力と成長・発達を保障するために教育条件を整える憲法に基づく教育行政を取り戻します。また、大阪の財産である府立大学や各種文化施設など、文化、芸術、学術を守り発展させるとともに、削減された予算の復活を計画的に進めます。
 併せて、橋下知事による人権侵害や民主主義破壊の言動については、厳しく対処し、謝罪と訂正、知事としての社会的責任を追及していきます。
 こうしたたたかいを府民の皆さんと進める一番の保障は、日本共産党の議席を国政でも府議会でも大きく前進させていただくことです。7月の参議院選挙、来年春のいっせい地方選挙で、日本共産党の比重を高めるために府民の皆さんのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

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