政策・提言・声明

2010年12月02日

子どもと教育を守り、すべての子どもの成長・発達を保障する教育へ

憲法と子どもの権利条約を生かして

2010年12月2日
日本共産党大阪府委員会

 21世紀を生きる子どもの成長・発達を保障する教育への府民の期待は大きく、今日、教育に対する政治と社会の責任は重大です。
 この間、長年にわたる教育関係者と日本共産党が共同した運動が政治を動かし、公立高校授業料無償化や大阪での35人学級(小学校1・2年生)など教育要求を実現してきたことは、特筆すべきことです。
 しかし民主党政権と橋下府政は、全国いっせい学力テストの継続と対応などにみられるように、行き過ぎた競争教育を子どもと学校に押し付け、教育をゆがめています。この中で広がる貧困が子どもと教育に深刻な影響を及ぼしています。
 すべての子どもの成長・発達を保障するためには、憲法と子どもの権利条約に立脚し、教育の条理を踏まえた教育が必要です。
 子どもと教育への政治の責任を果たすため、私たちは、次に述べるような重点的な教育政策の提案を行い、府民の切実な教育要求の実現に向けて府民の皆さんと力を合わせて頑張ります。併せて、子どもと教育を守るための討論と共同を呼び掛けます。

少人数学級の実現をはじめ教育条件の整備・拡充をすすめる

少人数学級・30人学級の実現、教育条件の拡充にむけて

 少人数学級・30人学級は、すべての子どもに行き届いた教育を行う上で必要な教育条件で、府民と教育関係者の強い要求です。少人数学級の教育効果は、すでに教育行政を含む教育関係者が提起しているところです。
 長年の教育関係者の運動が国政を動かし、30年ぶりに小・中学校の学級定数を引き下げる計画案が示されました。国の責任で少人数学級・30人学級を早期に実施するよう強く求めます。また、高校や特別支援学校の学級定数を引き下げることが必要です。
 大阪では、学校関係者の運動により小学校1・2年生の35人学級が継続されました。来年度から小学校3年生と中学校1年生へ拡大することが求められます。
 国に対して義務教育国庫負担金の国負担率を3分の1から2分の1に戻すことを求めます。養護教諭の複数配置、スクールソーシャルワーカーなど専門職員を増やします。中学校給食を実施します。
 安心・安全の学校へ、小・中学校の警備員配置、学校耐震化を推進します。小・中学校の普通教室へのエアコン設置を進めます。

すべての希望する子どもに高校教育の機会を保障する

 前年度の公立高校入試結果を受けて「大量の不合格者が出ることが懸念」される中、2010年度の公立高校入学枠の大幅拡大を求める学校関係者の運動が府政を動かし、公立7割・私立3割を分担した上で、公立高校の入学定員が960人上乗せされました。
 教育の機会均等の実現へ、すべての希望する子どもに高校教育の機会を保障することが大切です。高校進学希望者全員入学を展望し、必要な条件整備を行います。

特別支援教育・障害児教育を拡充する

 障害のある子どもが教育から排除されず、豊かな教育を保障することが大切です。特別支援学校・学級などに在籍する子どもの数は増え続けています。特別支援学校での間仕切り教室や長時間通学などの問題は深刻です。劣悪な教育条件を整備することが急務です。
 長年の地域での学校関係者の運動が府政を動かし、2010年度に府内4校の特別支援学校(分校)が開校しました。特別支援学校の増設、障害種別の学級設置など特別支援学級の新増設、すべての小中学校での通級指導教室の設置、通常学級の30人以下学級を進めます。医療的ケアを必要とする子どものために看護師の配置を進めます。

公立学校の非正規教職員の正規化をすすめる

 国と府の教育予算削減の下、非正規教員が増大し全教員数の約15%を占め、教育条件を不安定なものにしています。新学期に学級担任が発表できないなど異常な事態です。学校教育に必要な教員は正規採用とすべきです。
 少人数学級・30人学級を進め教職員定数を増やし、教職員の正規化を図るとともに、非正規教職員の劣悪な処遇の改善を進めます。

教育のすべての段階での教育費負担の軽減・無償化を目指して

授業料無償化の私立高校全体と大学への段階的な拡大

 教育費負担の軽減・無償化を求める国民の運動が国政・府政を動かし、公立高校授業料の無償化が2010年4月から実施されました。府立高校の空調使用料(エアコン代)も不徴収です。私立高校の授業料は、大阪府では国の制度に上乗せされ年収350万円未満の世帯で実質無償化が実施されました。2011年度からは年収610万円未満の世帯への拡大が検討されています。実施されれば私立高校新入生の約半数が無償化の対象となります。
 これらは、憲法に保障された教育を受ける権利の具体化として重要な意義をもちます。
 授業料無償化を私立高校全体に広げます。「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約の留保撤回を国に求め、大学学費を計画的に引き下げます。学費減免制度を拡充します。国公立大学運営費交付金の削減をやめ増額すること、私立大学への国庫助成の増額を求めます。
 憲法に保障された学問の自由・大学の自治を守る立場から、橋下府政による府立大学の学部「再編」押し付けに反対します。大学改革は大学関係者の議論と合意で行われるべきです。大阪市立大学の夜間学部学生募集を再開し、夜間学部を存続します。

就学援助の拡大、給付制奨学金の創設を進める

 府民の負担する教育費には、授業料以外に入学金、制服・体育用具、学用品、生徒会・PTA会費、修学旅行費、通学定期代など多額の費用がかかります。
 授業料に続いて、これらの教育費の軽減・無償化に向けて、小・中学校での就学援助の拡充、高校と大学での給付制奨学金の創設、有利子奨学金の無利子化と卒業後の年収300万円以下の場合の返済猶予制度を確立します。

私学助成(経常費助成)の国基準への回復・増額を

 大阪府はこの間、私学助成(経常費助成)を国基準から大幅に削減し、さらに削減することが計画されています。私学助成の大幅削減は私学経営を圧迫し、教育条件に大きな影響を与えます。
 大阪の公教育を担う私学の役割から、私学助成(経常費助成)の拡充が必要です。私学助成を国基準に回復・増額します。私学助成制度に市場原理を持ち込む私学助成配分方法の改悪に反対します。

すべての子どもに基礎的な学力を保障するために

すべての子どもに基礎的な学力を

 すべての子どもに基礎的な学力を保障することは、学校教育の基本的な任務です。自然や社会の仕組みが分かる知育、市民道徳の教育、体育、情操教育などバランスのとれた教育が大切です。学力保障に一番有効な施策である少人数学級の実現が求められます。
 学習指導要領を抜本的に見直すとともに押し付けをやめ、子どもの状況や学校・地域の実情に応じた教育課程を自主的につくることが必要です。子どもをふるいわける習熟度別学習の押し付けに反対します。
 不登校など教育問題にかかわる教育相談の窓口を拡充します。

憲法に保障された教育の自由・自主性を守り発展させる

 橋下府政は、改悪教育基本法の具体化として、「『大阪の教育力』向上プラン」を策定し、全国いっせい学力テスト対策など数値目標の達成や特定の教育内容・教育方法を学校に押し付けています。
 憲法に保障された教育の自由・自主性が守られてこそ、学校での教育活動が豊かに発展します。教育への市場原理の持ち込みや教育内容への不当な介入は、教育をゆがめ子どもの成長・発達を妨げます。「『大阪の教育力』向上プラン」は抜本的に見直します。
 教職員の協力を妨げ、教育をゆがめる「評価・育成システム」をやめます。
 市町村への教職員人事権移譲の押し付けに反対します。
 「日の丸・君が代」の強制に反対します。「同和教育」は完全に終結します。

全国いっせい学力テストの廃止、高校「多様化」の抜本的見直し

 民主党政権の下「抽出方式」で実施された全国いっせい学力テストは、実際には7割(大阪9割)の学校が参加し、競争主義的な性格は変わっていません。全国いっせい学力テストは、その対策のための学習が強制され、子どもの学力形成からみて有害です。
 全国いっせい学力テストの廃止を求めるとともに、大阪府のいっせい学力テスト(2011年度)を中止します。学力調査は抽出調査で十分です。
 この間、大阪府政は府立高校統廃合と一体で高校「多様化」を押し付け、総合学科や普通科総合選択制などの高校が開校されました。その上で橋下府政は、2011年度から進学指導特色校などをつくり、行き過ぎた競争教育をさらに激化させようとしています。
 高校教育での学科の再編や新設などは、教育行政が強制するのではなく、高校関係者の議論と合意により行われるべきです。高校「多様化」は抜本的に見直します。

憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもの成長・発達を保障する教育へ

 これまでに述べたように、府民の切実な教育要求実現にむけたとりくみを進めるとともに、私たちは、次のような教育政策の抜本的な転換を求めます。

貧困をなくし子どもの教育を受ける権利を保障する

 大阪の子どもをめぐる貧困は深刻さを増しています。子どもの相対的貧困率は全国平均で14・2%(2007年調査)です。学校現場からは、“朝食をとれない”“十分な学用品が買えない”などの子どもの実態が報告されています。貧困は子どもの生存を妨げ、成長・発達に深刻な影響を及ぼします。子どもは子どもらしく保護されなければなりません。国連子どもの権利委員会は、「子どもの貧困を根絶するために適切な資源を配分すること」を日本政府に勧告しました。
 貧困をなくすことは、子どもの教育を受ける権利、成長・発達を保障する土台です。雇用、中小企業、社会保障など経済政策の転換を求めます。
 高校生、学生の新卒者就職難を打開します。
 教育による「受益者」は社会全体という立場で、子どもの成長・発達に必要な保育や教育の費用は公的負担とし、保護者負担の軽減・無償化を進めます。

世界でも異常な競争的な教育制度を見直す

 国連子どもの権利委員会は、「高度に競争的な教育制度」が子どもの発達にゆがみをもたらしており、「大学を含む学校システム全体を見直すこと」を日本政府に勧告しました。
 競争的な教育制度は、1960年代以降、財界の強い要求を受けて歴代の自民党政権が推進し、今日の民主党政権に引き継がれています。橋下府政は、「地域主権改革」を先取りし地方自治を破壊しつつ競争的な教育制度を強権的に進め、教育をも破壊しようとしています。
 高校学区の縮小や、高校・大学の入試制度の抜本的改革など競争的な教育制度の見直しをすすめます。教育関係者や専門家、府民の検討の場をもうけ改革に着手します。
 競争的な教育制度と教育の国家的統制を進める改悪教育基本法(2006年)を再改正するための府民的討論を行います。

府民の切実な教育要求を実現し、教育政策の転換へ

 日本共産党は綱領で、日本社会が必要とする民主的改革の内容の1つとして、「教育では、憲法の平和と民主主義の理念を生かした教育制度・行政の改革をおこない、各段階での教育諸条件の向上と教育内容の充実につとめる」と述べています。
 私たちは、こうした綱領をもつ党として、21世紀に生きる子どもの成長・発達を保障するため、府民の切実な教育要求を実現するとともに、憲法と子どもの権利条約に立脚し、教育の条理を踏まえた教育政策の転換に向け力を尽くします。

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