政策・提言・声明

2016年02月08日

大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう――学問の自由・大学の自治を尊重して

大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう――学問の自由・大学の自治を尊重して

             2016年2月8日  日本共産党大阪府委員会学術文化委員会

 府議会と大阪市議会は昨年12月と今年1月、知事と市長がそれぞれ提出していた府立大と大阪市立大の「統合」を準備する議案(府大・市大の中期目標を一部変更)を大阪維新の会などの賛成多数で可決強行しました。日本共産党は反対しました。

 同趣旨の議案は2013年11月の市議会で、府大・市大「統合」方針を含む「大阪都」構想は昨年5月の住民投票で、それぞれ否決されています。これらの民意と両大学の学生や院生、教職員、卒業生ら大学関係者の批判・反対の声を踏みにじって強行したことは許されません。

 両大学の統合は、大阪の教育、文化、福祉、経済などの様々な分野で長期にわたり大きな影響を与える問題です。統合は政治権力が押し付けるのではなく、府民意見を尊重した両大学の関係者による慎重な議論・検討が必要です。

 私たちは、これまでの議論を踏まえ、府大・市大「統合」問題をめぐる経過と問題点、重点的な大学政策を提起し、府民的討論と共同を呼び掛けます。

1 府大・市大「統合」問題をめぐる経過

 大阪府と大阪市は2013年秋に「新大学ビジョン~強い大阪を実現する知的インフラ拠点をめざして~」(9月)や「新法人基本方針」(10月)を公表し、府大・市大「統合」計画の基本を明らかにしました。これは、大学を構成する学生や院生、教職員のあいだでの自由な議論を抜きに、また、府民と市民の意見をほとんど聞かずに、「大阪維新」主導の府市統合本部のもとで、問答無用で強引に推進されたものです。

 こうした「統合」計画のもとになった「提言」(「新大学構想<提言>~統合と再編、新教学体制と大胆な運営改革~」2013年1月)を策定したのは、「大阪府市新大学構想会議」ですが、この会議を構成する6人の委員のなかには府大と市大の大学関係者は一人も含まれていませんでした。

 「新大学ビジョン」をベースにして、大阪府と市、府大と市大は「新大学案~新世代の大学~ 大阪モデル」(同年10月)を作成・公表しました。

大学関係者の批判と「統合」関連議案の市議会での否決

 こうした府・市の動きをみて、府大・市大名誉教授ら21氏は2013年10月、「橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する」声明を発表し、「大学には独自の建学の精神と伝統があり、専門分野も独自に発展を遂げて」おり、「大学の統合はそれぞれの大学の内発的要求が合致し、財政的保障が十分なされなければ難しい」として、「高度の有機的な研究教育機関である二大学の統合計画をこのまま進めるというのはあまりに拙速」だと指摘しました。

 これに先立って同年3月には、市大の学生が提出した「市立大学と府立大学の拙速な統合撤回を求める陳情書」が市議会財政総務委員会で「大阪維新」以外の会派の賛成多数で採択されていました。

 こうした大学関係者の批判をまえに、橋下徹市長(当時)が提出した府大・市大「統合」関連議案(市大の中期目標と大学法人定款の一部変更案)が2013年11月の市議会で「大阪維新」を除く会派の反対多数で否決されました。これを受けて府は議案提出を見送りました。

 「統合」関連議案は、2016年度の「府立大学との大学統合をめざし」準備すると明記し、市大理事長と学長を分離し、理事長を市長任命とすることで大学の支配・統制を強め、「強い大阪を実現するための」大学という特定の大学観を押し付けるものでした。

 この時期に、橋下市長(当時)は、安倍政権による「大学のガバナンス(統治)改革」を先取りして、市大学長選挙での教職員意向投票の廃止を押し付けました。

大学「統合」の延期と住民投票の民意

 「統合」関連議案否決を受けて大阪府・市は翌年(2014年)4月に両大学「統合」の延期を表明、当初予定の2016年度の大学「統合」はなくなり、今後については、「両大学で、主体的に大阪における公立大学のあり方について検討」するとされました。これを受け、府大・市大は2015年2月に「『新・公立大学』大阪モデル(基本構想)」を公表しています。

 2015年5月に実施された、大阪市民による住民投票では、府大・市大「統合」方針を含む「大阪都」構想が否決され、市議会での「統合」関連議案の否決に続いて市大存続の民意が示されました。

 住民投票の翌日に発表された大阪市立大学教職員労働組合の声明は、「大阪市立大学は、大阪市民とともにある大学であり、市民の示した民主的な意思、市民が選んだ都市の将来像とともに進むべきである」と強調しました。

 日本共産党の石川多枝府議は昨年12月の府議会教育常任委員会で、「関係者の合意形成もないままで統合ありきで進めるのは拙速だ」と批判。小川陽太大阪市議は今年1月の市議会本会議で、「大阪市がすべきは、未来ある若者により広く高等教育を保障し、教育研究条件の拡充を図ることだ」と強調しました。

 この府議会(教育常任委員会)と市議会の「統合」関連議案の採決では、結論ありきで検討を急がず、関係者の意見を柔軟に取り入れることや、議会の意見を十分踏まえるとする附帯決議を全会一致で可決しました。市議会の附帯決議は「一から幅広く議論」するとしています。ここに、両大学「統合」を押し付ける「おおさか維新」政治と府民・大学関係者との矛盾が現われています。

2 府民・大学関係者の共同の広がり

 両大学の学生有志でつくる「大阪の公立大学のこれからを考える会」は2016年1月、大学の統合計画の白紙撤回を求める署名を、市大学長あてに2498人分、府大学長あてに2784人分を提出。「統合を前提にした改革はおかしい」と語りました。このなかで、「受験生にとっても、比較的安い授業料で学べる二つの公立総合大学が減らされれば、選択肢が奪われます。家族にとっても子や孫の学ぶ場が奪われる」と訴えています。

 大学関係者が実施した学内アンケートでも、回答した教員の7割が統合を「進めるべきでない」としています。

 2015年11月に開催された多様な分野の研究者による「豊かな大阪をつくる」シンポジウムは府大・市大統合問題をテーマに取り上げ、「大学統合は、大阪の文化、教育、福祉、経済等の様々な領域において長期にわたって多大な影響を与える」として、学生と教員らが活発な議論を行いました。

 両大学の卒業生らでつくる「大阪府立大学問題を考える会」と「大阪市立大学の統合問題を考える会」は、「拙速な統合反対」と知事・市長に署名11000人分以上を提出したことを始め、学習会や議会要請などの取り組みを進めています。

 こうした府民・市民と大学関係者の共同が政治を動かしています。府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう。

3 府民・市民の大学教育への願いに応えて――日本共産党の提案

 この間の経過からみて、「統合」計画は両大学が内発的に要求しているものではなく、政治権力により強権的に大学に押し付けられたものです。これは、憲法が保障する学問の自由を脅かし大学の自治を破壊する学校教育法改悪などを強行してきた安倍政権「大学改革」の先取りです。大学関係者からは、「統合」による教育研究条件低下と学費負担増を危惧する声が上がっています。

 府大と市大はそれぞれ、独自の建学の精神と伝統をもち、専門分野も独自に発展を遂げ、教育研究に重要な役割を果たしています。「二重行政」を解消するとして、両大学を「統合」することは許されません。

 私たちはこうした点を踏まえ、重点的な大学政策について改めて次の諸点を提案します。

(1)府大・市大「統合」計画を撤回します

 大学の再編・統合は、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提としてすすめるべきです。「おおさか維新」が主導する府大・市大の「統合」(統廃合)計画は、政治権力による大学への介入であり撤回します。

(2)学問の自由・大学の自治を守ります

 憲法が保障する学問の自由・大学の自治を守ります。世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず」であり、大学の自治を尊重して大学への財政支援を行うことです。大阪府・大阪市と、教育研究を担う両大学との関係を律する基本的なルールとして、また、大学運営の原則として確立します。

(3)大学の日常的運営に必要な経費の増額をはかります

 この間、両大学への運営費交付金が削減され続けてきました。大学の日常的運営に必要な経費(基盤的経費)である運営費交付金を増やし、教育研究条件の拡充をはかります。

国に対しては地方交付税の大学経費を引き上げることや公立大学への国庫補助制度を確立するなど財政支援を強めることを求めます。

(4)学費負担の軽減、給付奨学金制度をつくります

 国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項が、国民世論と運動におされて留保撤回されました。大学で経済的な心配なく学び、将来に希望をもって研究したい若者の願いを実現するために、学費無償化にむけて、大学授業料を段階的に引き下げます。奨学金の無利子化、返済方法の改善、給付制の創設と授業料減免制度の拡充をはかります。

(5)基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展へ

 科学、技術は府と市がその多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。

 そのため、基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展と府民・市民本位の利用をはかります。公正で民主的な研究費配分を行い、研究における不正行為の根絶をはかります。産学連携の健全な発展をうながします。女性研究者の地位向上、研究条件の改善をはかります。

府民・大学関係者と共同して

 府大・市大は日本と大阪での学術の進歩に貢献し、住民要求に応えた大学教育を行い、大阪の文化、経済の発展に寄与しています。今後もその役割の発揮が期待されます。

 日本共産党は引き続き、広範な府民・大学関係者と共同して、安倍自公政権の補完勢力である「おおさか維新」政治と対決し、府民・市民の大学教育への願いに応えて、府大・市大の存続・発展へ力を尽くします。                

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