政策・提言・声明

2012年06月22日

「大阪市政改革プラン」はどうあるべきか ―日本共産党の提言

2012年6月22日 日本共産党大阪府委員会 

 「こんなときに消費税を増税されたら、くらしも商売もなりたてへん」「公約を投げ捨てて自民党と手を組むとは!」「福島原発の事故の原因もはっきりしていないのに、なんで大飯原発を再稼働させるんや」――くらしと政治の大きなゆきづまりのなかで、野田政権や「2大政党」にたいする怒りが大きく高まっています。

 このなかで橋下徹大阪市長が「市政改革プラン(素案)」を発表しました。これは政治や行政を変えてほしいという市民の願いにこたえたものでしょうか。

 日本共産党は、こう考えます。

1、市民のくらし破壊はノー――「市政改革プラン(素案)」に寄せられる大きな批判

 橋下大阪市長が発表した「市政改革プラン(素案)」は、「敬老パス有料化」や「男女共同参画センター廃止」をはじめ、3年間で488億円もの市民向け施策や事業費カットを打ち出したものです。市民各層すべてに痛みをおしつけるこの「プラン」に、多くの意見・批判が寄せられています。

 大阪市に寄せられた「パブリックコメント」は、過去最高の5倍以上、1万9854通にのぼりました。その94%以上が市民施策切り捨てに「反対」という声で占められています。橋下氏に投票した人でも「橋下氏がこんな人だとは思わなかった」

 「町のコミュニティも、全部壊すつもりか」などの声が広がりつつあります。

 こうした市民の声とたたかいが、大きな変化も生み出しつつあります。

 ――学童保育補助金廃止に反対する署名は34万筆をこえ、当面「継続」となりました。「子どもの家」事業も「施設を廃止することではない」と弁明をはじめています。大阪市議会では「公衆浴場への固定資産税減免の存続」陳情が全会一致で採択され、市民の声が市政を動かし始めています。

 ――市議会では、日本共産党がこのプランの撤回を主張していますが、他の野党も次々と異論や批判をつきつけ、「大阪維新の会」市議さえ批判や疑問を表明。公明党も、「敬老パス」問題などで市民のきびしい目にさらされています。

 ――橋下市長に大義も、道理もないことは、いよいようきぼりです。「敬老パスは維持する」(ダブル選法定ビラ)などといってきた公約違反問題に加え、わが党市議の追及にたいして、「高齢者は歩いた方が元気になる」と暴言を吐きました。また今度の「市政改革」で浮かしたお金をどこに使うかについても、市当局は回答できないでいます。

 景気の低迷に加え、消費税増税攻撃など、くらしと大阪経済が深刻な危機に直面している時、それに追い打ちをかける「市政改革プラン(素案)」が許されるでしょうか。断固として、撤回へ追い込もうではありませんか。

2、「財政改革」――市民のくらしをささえる財政へ、転換させる

「収支不足500億円」のウソとごまかし

 橋下市長は、「市政改革」の理由として、市の財政は毎年「500億円の収支不足」とあおり、「大阪市民はぜいたくしている」と攻撃します。しかし、それは本当でしょうか。

 橋下氏は、知事時代にも、大阪府は「破産会社」と危機をあおりたて、私学助成の大幅削減、障害者団体への補助金全廃、千里救命救急センターの補助金廃止などを強行しました。しかし、大阪市財政は、府と違って市債残高を毎年減らしており、橋下市長もさすがに「破産会社」などとはいえません。そこで今回もちだしたのが、「補てん財源に依存せずに、収入の範囲内で予算を組む」というものです。これは「収入」のなかから、「不用地売却代」(140億円)や「退職手当債の発行」(120億円)、公債償還基金剰余分(108億円)などを外すというものです。これによって昨年まで大阪市は「収支不足は100億円」としていたのに、突然5倍にふくれあがるというペテン的な手法がとられているのです。

 日本共産党は、こういうごまかしによるくらし破壊ではなく、市民のくらしをささえる財政のあり方を、次の4つの方向で大きく転換させることを主張します。

(1)「財政危機」の根本にメスをいれる

 第1は、大阪市が「財政危機」というなら、その根本原因にメスを入れ、おおもとからの転換をはかることです。

 大阪市の「財政危機」をつくりだしたのは、「市民のぜいたく」などではありません。

 ――大阪市財政に困難をもたらしたのは、97年の消費税増税を引き金にしたくらしと景気の深刻な冷え込みでした。それが市財政を直撃し、市の税収は96年(7776億円)をピークに、いまや6260億円(2010年決算)へ、1516億円も落ちこんでいます。

 ――成算のない巨大事業にのめりこんだツケもばく大です。ATC(アジア・太平洋トレードセンター)は288億円の「財務リスク」をかかえ、WTC(ワールド・トレード・センター)は424億円の損失補償を強いられ、阿倍野再開発は収支不足総額が2200億円にも及びます。

 ――国の地方財政しめつけも、「三位一体改革」の名で、大阪市への国庫補助金・交付税総額で5年間(2006~2010年)に347億円も減らされました。また国民健康保険にたいしては、7~30億円の調整交付金が「ペナルティ」として削られ、生活保護財政でも、本来国が負担すべきなのに大阪市が“超過負担”させられている額が150億円~180億円に及びます。

 こうした政治の流れを抜本的に転換してこそ、くらしをささえる市財政への大きな基盤がきずけます。

(2)福祉とくらしを予算の「主役」に

 第2は、市民の福祉とくらしをささえることを予算の「主役」にすえることです。

 橋下市長は「市政改革プラン(素案)」について、「かつてない市政改革やいろんな住民サービスの見直し」で「住民のみなさんに負担をかけるようなことをどんどんだしている」(6月4日、記者団に)と語ります。これでは、消費の冷え込み、景気悪化、税収減という悪循環の道をいくことになります。

 そもそも自治体の本来の使命は、憲法と地方自治法にもとづいて「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法第1条の2)ことにあります。

 非正規労働者が4割をこえるなど、大阪市民のくらしは、全国のなかでもとりわけひっ迫しています。こんな時こそ大阪市は、国の悪政から市民を守る防波堤をきずくために、政令市として持てる権限と財源を発揮しなければなりません。大阪市が築いてきた国民健康保険や上下水道の減免制度なども取り払い、国の悪政のうえにダブルパンチとなって市民を苦しめる「市政改革プラン」は撤回し、切実な国民健康保険料・介護保険料の軽減をはじめ、「市民のくらしと福祉をささえる社会保障再生プラン」を確立すべきです。

 市民の力で守り抜いてきた「敬老パス」は、大阪市の誇るべき制度です。市政が知恵と力を発揮すべきは、どうすればこの制度を維持できるかです。

 「現役世代への投資」などといいながら、橋下市長は、保育料の徴収を住民税非課税世帯まで広げ、1歳児保育の特別対策費(民間補助)を減らして国の基準通り保育士1人で子ども6人を見る体制に後退させ、新婚世帯向けの家賃補助の新規募集を停止しています。

 「豊かなコミュニティづくり」といいながら、もっとも身近な相談相手となってきた地域福祉活動推進事業や高齢者のふれあいの場となってきた食事サービス事業などの縮小をうたい、「男女共同参画」のセンターである「クレオ」をつぶすなどは、逆行以外の何ものでもありません。

 市民合意のない「大阪都」にあわせて、24区すべてにある「市民プール」と「スポーツセンター」を9カ所にすることは許されません。「二重行政」などといって、市民のための「市立病院つぶし」や「府立大学・市立大学統合」などの計画は即刻中止すべきです。

 かつて民生委員制度や学童保育は大阪で生みだされた制度として、全国にも広げられました。「大阪を全国モデル」(橋下市長)というのなら、こうした制度こそ、守り発展させるべきです。

(3)巨大開発頼み、大企業と外国企業依存の「成長戦略」の抜本的転換を

 第3は、巨大開発だのみ、大企業と外国企業依存の「成長戦略」を転換することです。

 橋下市長は「市政改革プラン(素案)」で市民犠牲をおしつける一方、「府市統合本部」で、不要不急の「なにわ筋線」「淀川左岸線延伸」から、果ては「関空リニア」「カジノ構想」までを「成長戦略」として叫びます。

 大企業や外国企業が大阪に進出し、「世界の人・物・金」が大阪に集中すれば、大阪は「稼げる都市」になるというものですが、これは破たんした「大阪湾ベイエリア開発」のうたい文句そっくりそのままです。「府市統合本部」の「特別顧問」には、かつて「テクノポート大阪」計画やATCづくりを提唱した人物も加わっています。

 しかし、それは何をもたらしたでしょう。関西国際空港開港後の18年、大阪の経済力(府内総生産)は年間4兆円以上も低下し、巨大開発で銀行・ゼネコンが大もうけする一方、府や大阪市に莫大な借金が残ったことをみれば明らかではありませんか。

 こんな道を二度とくりかえすことは許されません。

 何よりも正規労働者があたりまえというルールを立て直すこと、市の公契約条例をつくり、市の発注する仕事では労働者の賃金・労働条件をまともなものにすること、中小企業振興のために資金面はもとより、販路開拓、新事業開拓、中小企業間の連携などをはかること、太陽光発電をはじめ自然・再生可能エネルギーへの転換や震災・防災対策などで仕事と雇用を増やすことなど――労働者、市民、中小企業に温かい施策で大阪経済の立て直しに資する大阪市の役割を発揮するために力をつくすことが求められています。

(4)財源は国の財政改革、大企業の社会的役割を迫ることと一体に

 第4は、「財源」は、国と大企業に迫ることと一体につくりだすことです。

 ことし2月に、日本共産党は「消費税大増税ストップ! 社会保障充実・財政危機打開の提言」を発表しました。このなかでは、社会保障再生と景気回復を二本柱ですすめることや社会保障と財源づくりは段階的にすすめること、財源はムダの削減と応能負担で――などを提起しています。これをつらぬくなら、富裕層・大企業優遇の税制をただすことや景気回復による税収増が地方財政にも大きく反映し、大阪市財政にも数百億円の収支改善が展望できます。また、「国保料引き下げ」「就学前までの子どもの医療費助成」「保育待機児と特養ホーム待機者の解消」「介護保険料・利用料の減免・軽減」などを国の責任ではかることを主張しています。これが実現できれば、市独自の福祉策をさらに充実させる財源が生まれます。

 政令市としての力で、政府に直接意見も届け、260万市民の後押しのもとで実現の道をひらくべきです。

 大企業の社会的役割を発揮する上で、大阪府・市への「超過課税」を守るとともに、さらに巨大開発事業で大もうけしたゼネコン・大銀行が、その事業が破たんした場合には応分の負担を果たすルールを新たに確立すべきです。

 地下鉄民営化、柴島浄水場の売却など、市民共有財産の財界・大企業への切り売りは断じて許せません。

 こうした抜本策をとりながら、当面する緊急策として、公債償還基金剰余分などを補填財源として活用するなど、くらしをささえることと財政再建を両立させる財政運営をすすめるべきです。

「大阪都」づくりはストップし、大都市・大阪の自治拡充の方向へ転換を

 「大阪市政改革プラン(素案)」は、橋下市長がすすめる「大阪都」構想にあわせ、24区すべてにある施設を「9区」にあわせて減らす計画を盛り込んでいます。

 しかし、「大阪都」構想は、市民の合意を得たものではありません。そもそもこの構想は、大阪市や堺市を解体し、その権限・財源をすいあげて「一人の指揮官」のものにするという中身の点でも、また堺市が参加を拒否し、府内衛星都市が一つも参加しない「大阪にふさわしい大都市制度協議会」で構想作りをすすめるというやり方の点でも、「地方自治」「住民自治」とはあいいれないものです。

 「区長公選」は一つの問題提起ですが、それが「大阪市解体」の前提になってはなりません。

 「大阪にふさわしい大都市制度協議会」では、「はじめに大阪都ありき」ではなく、大阪のゆきづまりの真の要因を徹底分析し、大都市・大阪の市政のあり方について、さまざまな立場から市民的討論をおこす材料を提起すべきです。

 日本共産党は、「くらしを破壊し、大阪市解体に道をひらく市政改革プラン案は撤回を」――この一点での共同を大きく進めながら、真の大阪市政改革のあり方を広く示し、その討論と実践の先頭にたつものです。

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