政策・提言・声明

2013年10月18日

学校長の選考は子どもと教育の立場で ――学校教育での校長の役割を踏まえて

2013年10月18日
日本共産党大阪府委員会文教委員会

 「維新の会」代表の橋下徹大阪市長の導入方針のもと今年4月、公募により大阪市立小中学校11校に赴任した校長のうち、一人が「力を発揮できる場所とは違う」と3カ月で辞職し、一人が保護者へのセクハラ行為により懲戒処分(減給6カ月)をうけ更迭されるなどの問題が明らかになりました。公募校長の不祥事に保護者はじめ学校関係者、市民のあいだで不安が広がっています。
 ところが、問題が明らかになったなかでも、大阪市教育委員会は市立学校に35人、大阪府教育委員会は府立学校に20人程度、それぞれ来春に公募校長を大量採用する方針を変えていません。全国的には公募や推薦などによる民間人校長は125人(2011年度)ときわめて少数で、大阪府・市の採用(予定)数は突出しています。
 私たちは、学校教育での校長の役割と大阪府・市による校長公募制の問題点を示すとともに、校長選考のあり方などについて提案し、府民的討論と共同を呼び掛けます。

1 学校教育での校長の重要な役割について

(1)憲法と教育の条理にもとづく校長の役割

 憲法と教育の条理にもとづき校長は、子どもの成長・発達を保障するため、教育の自由・自主性を尊重し、①教育の専門家として学校教育に携わり、“教師のなかの教師”として、教職員への適切な指導・助言を行う、②子どもの教育を受ける権利を保障するため、必要な教育条件整備を行う、③学校の代表として保護者や地域との協力・連携を行うなど、今日の学校教育で重要な役割を担っています。
 学校教育法では、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」(第37条4項)と定めています。校務の内容としては、全校的な教育内容に関わる事項や教育活動そのもの、教育条件に関する事務があるとされています。
 教職員の「監督」について、ILO(国際労働機関)・ユネスコ(国連教育科学文化機関)による「教員の地位に関する勧告」(1966年)が、「いかなる監視または監督の制度も、教員の専門的な職務の遂行にあたって教員を励まし、かつ、援助するように計画されるものとし、また、教員の自由、創意および責任を減じないようなものとする」(63項)と述べていることは、今日も生かされるべき重要な指摘です。

(2)校長職には教育的な専門性が必要

 したがって、校長には、子どもと教育についての深い識見、教育課程や授業展開などについての教育的な専門性が必要です。これまで、教員が長年教職としての経験を積み、教頭などを経て校長に任用されてきたのは、校長職がこうした性格をもつからです。学校経営と管理はこうした教育的な専門性を土台にしてこそ成り立つものです。

2 大阪府・市の校長公募制の問題点について

(1)校長資格要件の基本は教員免許と教職経験に

 こうした学校教育で重要な役割をもつ校長の資格要件は、学校教育法施行規則第20条で、①教員免許状を有し、かつ、学校など「教育に関する職」に5年以上あったこと、②「教育に関する職」に10年以上あったことと定められています。自民党政権のもと2000年の同規則「改正」で、校長については、教員免許状をもっておらず、「教育に関する職」に就いたことがない人も任命・採用できるという「特例」(第22条)がおかれました。しかし、その後、教員出身でない校長(民間人校長)の任用は全国的には100人前後にとどまっています。
 校長の資格要件は、教員免許保持と教職経験が基本です。府立学校条例や市立学校活性化条例で、校長採用を原則公募としたことは、「特例」を大幅に広げることを可能とするもので、こうした教育関係法令の趣旨に反するものです。

(2)組織マネジメント重視の校長公募制

 大阪府・市による校長公募制は、松井知事と橋下市長が提案し昨年3月と7月に「維新」などが強行した府立学校条例と市立学校活性化条例の具体化です。両条例は「校長の採用は原則として公募により行う」と定めています。
 校長公募制は、2011年9月に「維新」が提案した教育基本条例案に示され、公募校長の能力として強調されたのは、学校をマネジメント(経営・管理)するということでした。同条例案では校長の任用にあたって「マネジメント能力の高さを基準」とすることを明記し、こうした考え方の基本は、府立学校条例と市立学校活性化条例に引き継がれています。
 「組織マネジメント」という企業経営の手法を学校教育に持ち込む問題については、すでに2000年12月、自民党政権のもと首相が開催した教育改革国民会議報告で、「学校や教育委員会に組織マネジメントの発想を取り入れる」とされていたことです。
 今春、市立学校に赴任した11人の公募校長の公表された経歴をみても、取締役や支店長など企業幹部出身者が多数を占め、学校出身者は一人だけです。校長選考において、組織マネジメント能力を極端に重視し、教育についての専門的な力量を軽く扱っていいのかが問われています。

3 校長選考は子どもと教育の立場で――日本共産党の提案

 日本共産党は、こうした学校教育での校長の重要な役割と大阪府・市の校長公募制の問題点を踏まえ、次の諸点を提案します。

(1)校長公募制は抜本的に見直す

 大阪府・市の校長公募制は、学校関係者の意見を聞き、抜本的に見直します。当面、来春の公募校長の大量採用は中止します。

(2)校長選考は憲法と教育の条理にもとづいて行う

 そのうえで、大阪府と大阪市教育委員会の教育長による校長選考は、憲法と教育の条理、教育関係法令を踏まえて行います。

(3)学校と校長への教育委員会の支援を強める

 大阪府・市教育委員会は、憲法が保障する教育の自由にもとづき学校の自主性を尊重し、「国旗・国歌」の扱いや教科書など教育内容に関する命令・強制をやめ、学校と校長に対して適切な指導・助言を行います。少人数学級や学校予算の拡充など教育条件整備を行い、学校と校長への支援を強めます。

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