政策・提言・声明

2014年10月28日

ひとり一人の子どもを大切にする高校教育へ
――憲法と子どもの権利条約を生かして

2014年10月24日
日本共産党大阪府委員会文教委員会

 

 子どもの成長にむけて、府民と保護者の高校教育への願いは切実です。いま、大阪の教育には、こうした願いに応えることが求められています。また、子どもが主権者として必要な教養などを身につける高校教育の役割は今日、いっそう重要になっています。政治の役割は、憲法と子どもの権利条約にもとづいて、子どもの成長・発達を保障するために、教育条件の整備を行うことなど教育を支えることにあります。

 ところが、安倍政権は「海外で戦争する国」づくりへ、「愛国心」押し付けを狙う「道徳の教科化」検討を行い、政治権力が教育に介入できる教育委員会改悪法を強行するなどの「教育再生」を進めています。一方で教育への公的支出は、国際水準を大きく下回っています。
 橋下・維新政治は安倍政権を先取りして、大阪の子どもと教育に「愛国心」教育や、ゆきすぎた競争教育を押し付ける「教育改革」を進め、子どもの成長・発達を妨げ教育をゆがめています。高校教育では、卒業式や入学式での「国旗・国歌」の強制や、公立高校学区の撤廃などが強行され、「大阪都」構想と一体に府立高校2校の廃校案が公表されました。

 こうしたなかで、府民と教育関係者の共同が広がり、橋下・維新による教育分野での暴走にストップをかけています。府教育委員会が特定教科書の記述に問題があると教育に介入するなかで、昨年に続いて今年も学校が選定した教科書が採択されました。高校入試制度では前・後期の2回から原則1回に戻す改善方針案が示されています。
 日本共産党は、安倍政権の「教育再生」、橋下・維新の「教育改革」と対決し、府民、学校関係者と共同して、切実な教育要求を実現するために力を尽くします。さらに、大阪の高校教育を良くするために、次のような提案を行い、府民的な討論と共同を呼びかけます。

子どもの成長・発達を保障する高校改革へ――日本共産党の提案

(1)すべての子どもにゆきとどいた教育を――教育条件を抜本的に改善します

府立高校廃校計画を撤回します

 府教育委員会は9月3日、府立高校2校の廃校案を発表しました。生徒数の減少や“定員割れ”などを理由としています。昨年11月に府・市教育委員会が策定した「再編整備計画」方針にもとづく廃校計画数は、府立・市立あわせて7校です。これは、橋下・維新が狙う「大阪都」構想と一体に進めようとするものです。
 憲法が保障する子どもの学習権を奪う高校つぶしは許されません。私たちは、府立池田北高校・咲洲高校の廃校計画撤回、両校を含む7校廃校計画撤回を強く求めます。
 高校の「再編整備」は、生徒や保護者の意見をよく聞き、学校関係者のあいだでの慎重な議論と合意が必要です。教育行政が高校に対して強権的に廃校を押し付けることは、教育の自由と学校の自主性を保障した憲法と教育の条理からみて許されません。
 学校は長い年月をかけて地域社会と深く結びつき、地域での文化的役割を担っています。
 保護者や卒業生をはじめとする学校関係者が強く反対する高校つぶしをやめさせ、高校を守るために力を合わせましょう。日本共産党は、学校関係者や地域住民、広範な府民・市民と共同し、高校つぶしをストップさせるために力を尽くします。

公立高校の受け入れ枠を拡大します

 大阪の公立中学校卒業者数の減少が廃校の理由とされますが、「再編整備計画」最終年度にあたる2018年度の卒業者数は、2009年度と同水準です。この10年間で見れば卒業者数は減っていません。当面する卒業者数の変動は大幅なものではなく、募集学級数を調整することで十分対応することができます。
 この間の公立高校への進学状況や進路希望を考慮し、公立高校の受け入れ枠を拡大して、全日制高校への進学率を引き上げます。

“3年連続定員割れの高校は再編整備”条項を撤廃します

 今回のように“定員割れ”を理由にした高校廃校計画は、維新流の極端な競争主義を学校に押し付けて、学校間の生徒獲得競争をあおり、教育をゆがめるものです。橋下・維新が強行した府立学校条例にある“3年連続定員割れの高校は再編整備”条項は高校教育にとって有害です。同条項を撤廃します。

少人数学級を小・中学校全学年、高校に広げます

 いまの時期に教育行政がやるべきは、高校を減らすことではなく、少人数学級の実施をはじめとする教育条件の拡充です。
 少人数学級・30人学級は、すべての子どもにゆきとどいた教育を行ううえで必要な教育条件で、府民と教育関係者の強い要求です。少人数学級の教育効果はすでに明らかです。
 現在小学校1・2年生まで実施されている35人学級を小学校・中学校全学年に広げ、高校に広げます。

大阪市立高校・特別支援学校の府への「移管」計画を撤回します

 橋下・維新による「大阪都」構想と一体に、府市統合本部が方針を示した大阪市立高校と市立特別支援学校の府への「移管」計画は、教育条件を後退させるものであり、学校関係者が強く反対しています。「移管」計画を撤回します。

私学助成を抜本的に拡充します

 私学助成は私学経営と教育条件に大きな影響を与えます。ところが、大阪府の私立高校への経常費助成(2014年度)は、生徒一人あたり単価で国基準を下回り、全国45位の低水準です。大阪の公教育を担う私学の役割を踏まえて、私学助成を抜本的に拡充します。

(2)教育費保護者負担の軽減へ――高校授業料無償化を継続・拡充します

公立高校授業料無償化の復活へ

 大阪府の公立高校授業料は、国の制度が改悪されるなか年収910万円未満の世帯で実質無償化されています。国に対して、全員を対象にした高校授業料無償制の復活・拡充を強く求めます。

私立高校授業料無償化を継続・拡充します

 私立高校の授業料は、大阪府では国の制度に上乗せされ、2011年度から年収610万円未満の世帯で実質無償化されています。授業料無償化にむけ、これを継続・拡充します。

高校奨学給付金制度を拡充します

 保護者は、授業料以外に入学金、制服・体育用具、学用品、生徒会・PTA会費、修学旅行費、通学定期代など多額の教育費を負担しています。
 2014年度から大阪府の公立・私立高校で、非課税世帯の生徒に奨学給付金を支給する制度が新設されました。「子どもの貧困」が広がるなか、教育費保護者負担の軽減・無償化にむけて、高校の奨学給付金制度を拡充します。

(3)「いじめ」・「体罰」問題の解決にむけて

「いじめ」のない学校と社会へ

 「いじめ」のない学校と社会にむけて、被害者や関係者の声を正面から受け止めて、目の前のいじめからかけがえのない子どもの命と心身を守る取り組みを進めます。根本的な対策として、いじめの深刻化を教育や社会の問題ととらえた改革が必要です。

学校教育から「体罰」を一掃するために

 学校教育から「体罰」・暴力を一掃するために、「体罰」の実態を調査し、学校での徹底した民主的議論と取り組みを進めます。「体罰」問題などへの相談と対応を行うセンターを設立します。背景にある「勝利至上主義」や競争主義を克服します。

(4)すべての希望する子どもに高校教育の機会を――競争主義から脱却します

 欧米では高校入試が基本的にないなど、日本のような競争的な制度はありません。国連・子どもの権利委員会も、日本政府に対して「高度に競争的な教育制度」が子どもにストレスを与え発達に障害をもたらしていることを厳しく指摘し、その改善をもとめています。
 ゆきすぎた競争教育は、自己肯定感が育まれず「成績上位」の子どもにも常にストレスがかかる、子どもどうしを分断して共同の力が育たない、競争と格差が学ぶ権利を脅かすなどの問題点があり、本当の意味での学びから遠ざけられると指摘されています。
 いま、競争主義の教育から脱却することが、子どもの成長・発達にとって切実に求められます。

高校入試制度の抜本的改善、高校進学希望者の全員入学へ

 府教育委員会は、これまで前期(2月)・後期(3月)の2回実施されてきた公立高校入試制度をあらため、2016年春から原則として1回(3月)にもどす改善方針案を示しました。これは、学校関係者の強い批判を受けたものです。
 改善方針案は一方で、調査書の評価(絶対評価)対象学年を1~3学年に拡大することや、受験生に自己申告書を提出させることなどの問題点を含んでおり、入試制度の改善は、学校関係者の意見を十分踏まえたものにすることが大切です。
 橋下・維新政治のもとで公立高校の学区撤廃が強行されましたが、もとの学区(4学区)の高校を志願する生徒の割合は94%前後です。公立高校の学区を復活します。
 高校入試制度を抜本的に改善するために、専門家、府民の検討の場をもうけ、改革に着手します。高校進学希望者の全員入学にむけた条件整備を行います。

高校「多様化・特色づくり」を抜本的に見直します

 高等学校の目的は、「中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すこと」(学校教育法第50条)とされています。
 こうした憲法にもとづく高校教育の理念に逆行して歴代の自民党政権は、1960年代頃から財界の要求にもとづき高校「多様化」を推進してきました。橋下・維新政治はこの路線を受け継ぎ、大阪の高校教育をいっそう競争主義的な内容にしています。
 学科や教育課程の設置・編成は、教育行政の押し付けではなく、学校関係者の議論と合意が必要です。高校「多様化・特色づくり」を抜本的に見直します。

高校生の進路相談はじめ条件整備を拡充します

 ひとり一人の高校生の進路について、十分な相談ができるように、学校での進路指導の充実など必要な条件整備を行います。
 高校生の大学進学にむけた経済上の負担を軽減するために、学費無償化・軽減への取り組みを進めるとともに、奨学金無利子化や返済方法改善、給付奨学金創設で、安心して使える奨学金制度をつくります。
 高校生の就職保障にむけて、経済団体への働きかけを行い、ブラック企業への規制を強化します。

(5)教育の自由・学校の自主性を尊重します――教育への政治介入を許しません

 憲法に保障された教育の自由が守られ、学校の自主性が尊重されてこそ、学校での教育活動が豊かに発展します。教育内容への不当な介入は、教育をゆがめ子どもの成長・発達を妨げます。
 政治権力が教育に介入することができる、大阪府・市の教育関係条例は廃止します。安倍政権が強行した教育委員会改悪法の具体化に反対し、教育委員会を活性化、改革する取り組みを進めます。

教科書は学校が自主的に選びます

 子どもたちが学ぶ教科書は、学校教育法などにもとづき、学校が子どもと地域の実情を踏まえた教育課程を編成するなかで、教育の専門家である教師が調査・研究し、保護者の意見も聞き、選定・採択されることが大切です。
 教科書採択の制度は、子どもの意見表明も尊重し、学校関係者の意見を踏まえて充実をはかります。
 教育行政は教科書問題で教育に介入せず、教科書選定にあたる学校と教師の調査・研究活動を支援し、学校の選定結果を尊重します。

学校が自主的に行う校内人事や職員会議を尊重します

 学校では教務や学年主任、生徒指導や進路指導主事、学科主任などの校務分掌(校内人事)は、校長の責任と権限のもと自主的に行われています。校内に人事委員会を設置することや、教職員の意向を投票で反映することなど、校務分掌を決定する過程を民主的に行うことも、学校の自主性、校長の権限に属することです。
 教務や学年主任などを選ぶことは教育内容に深くかかわることです。教職員が校務分掌にさいして校長に自らの意見を述べ、意思表示することは、教育の条理や学校運営のあり方からみて当然のことです。
 学校が自主的に行う校内人事に関わって、教育行政が校内選挙などを禁止することは、憲法が保障する学校の自治、自主性を侵害する、教育への不当な介入です。学校による自主的な校内人事を尊重します。
 また、職員会議は学校での合意形成の場として大切です。このなかで校長が教育のリーダーとしての役割を果たすことが期待されます。

「国旗・国歌」の強制をやめます

 卒業式・入学式は、子どもにとって最善のものにするため、教職員、子ども、保護者で話し合って行えるようにします。「国歌」斉唱がある場合でも、アメリカのように斉唱を拒否する自由が、生徒にも教職員にもあることを明確にして、内心の自由を守ります。
 「愛国心」を府民と学校に押し付ける、憲法違反の大阪府・市の「国旗・国歌」強制条例は廃止します。

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