連載

大阪市廃止=「都」構想 住民投票の焦点

4.二重行政のウソ 鮮明

  「二重行政が解消できるなら賛成」―大阪市廃止=「都」構想をめぐってよく聞かれる声です。大阪府や、大阪市が抱えてきたムダをなくすならいいこと、との思いでしょう。ムダを省くことは当然です。しかし、これまで病院も、大学も、図書館も、体育館も、「府立」と「市立」があり、市民の暮らしにかかわって困るような「二重行政」や、「大阪市廃止」でなければ解決できない「二重行政」はありませんでした。

 維新がよくとりあげる「旧WTC(ワールドトレードセンター)ビル」と「りんくうゲートタワービル」は、「府市対立」のせいではなく、「府」も「市」も一体となって国の「ゼネコン浪費・巨大開発」にのめりこみ、失敗したものです。逆に、維新がすすめた「住吉市民病院廃止」は「二重行政廃止」の名による政策の失敗が明白です。

政策でこそ解決

 この政策の転換を図らなければ、今後、特別区でも、同じ失敗を犯しかねません。巨大ビル建設について、府も、大阪市も、「特別区で実施することはできないというものではございません」と答えています。特別区制度の東京でも都と特別区で長い対立が起きたことがあります。

 ムダ遣いをなくす課題は、制度いじりではなく政策によってこそ解決できます。

 松井一郎大阪市長は「今は二重行政はない」(8月21日、大阪市議会本会議)と言い切ります。では、何のための「大阪市廃止」なのか。「大がかりな制度変更を行うメリットが、いまだ判然としない」と指摘されています。

 松井市長の言う「司令塔の一本化」は、住民の意思を無視して府が大型開発をすすめるためです。

 「カジノは『大阪都』の試金石」と述べていた橋下徹元大阪市長は、カジノは「『大阪都』の話だ」「権限も用途地域のところは『都』が持つことになっている」と特別区長が反対しても推進できると公言しています。

必要なら手厚く

 維新は、二重行政のムダとして、病院、公衆衛生研究所、産業振興などを挙げ、住吉市民病院を廃止しました。とんでもない話で、くらしと経営を良くする施策は、二重、三重にやることこそ大事です。

 実際、こどもの医療費助成は、府が小学校就学前まで行っていますが、市町村は、それに加えて「18歳まで」などにしています。新型コロナ対策でも都道府県の対策に上乗せした支援が多くの市町村で実施されています。

 二重行政=すべて悪ではなく、くらし・経営の支援は、国、都道府県、市町村が二重、三重にやるべきです。

特別区でもできる

 大阪府市大都市局理事(阿形公基君) これら(旧WTCビルなど)の施設整備は、法令に定められた事務ではございませんので、制度として特別区で実施することができないというものではございません。

 (2015年2月27日、大阪府議会本会議の議事録)

しんぶん赤旗 2020年9月24日付