大阪市廃止=「都」構想 住民投票の焦点
3.矛盾と破綻あらわ
大阪市廃止=「都」構想は破綻があらわです。
大阪市を廃止し、特別区をつくるコストは、1300億円(15年分)もかかります。
加えて、1市が四つの小さな自治体になるため経費が増えますが、国からの手当てはありません。その額は毎年、200億円にもなると試算されています。18歳までの医療費助成の所要一般財源は77億円、敬老パスは50億円、学校給食費の無償化は77億円ですから、その大きさは歴然です。
膨大なコスト、経費増で、特別区になれば、前回みたように市民サービスの切り捨て、後退は必至です。
施設を大幅削減
しかも、設計図には、プール、スポーツセンター、老人福祉センター、子育てプラザの大幅削減が盛り込まれています。(表)
松井一郎大阪市長、吉村洋文知事は「今回の都構想では『現在の住民サービスのレベルを一歩も後退させない』ということを明確に約束」(『大阪から日本は変わる』)などといいますが、「協定書」にあるのは「維持するよう努める」だけです。「向上」どころか、「維持」の保証もありません。
コストを抑制するとして、特別区の庁舎はつくらないとしたため、新たにできる「淀川区」や「天王寺区」の職員は、いまの大阪市役所の「中之島庁舎」に間借りします。区域外に「本庁」があるのは離島くらいという異常なものです。災害時に対応できなくなるなどの批判が相次ぎましたが、見直しはしないままです。
大阪市と24区役所に設置することができる災害対策本部は、4特別区に設置されるだけです。大阪市の災害対策本部には消防局や水道局が入っていますが、消防も水道も府の事務になるため、府知事のコントロール下におかれます。
介護も保育所も
全国一高い介護保険料の軽減は切実な願いです。大阪市のままなら一般会計からの繰り入れや、介護予防事業の充実などで値下げは可能です。ところが、大阪市廃止=「都」構想では、四つの特別区でつくる一部事務組合での事務になるため、特別区だけで値下げすることはできなくなります。
今は、大阪市内の保育所にはどの区にあっても入所できます。四つの特別区になると、待機児が多数いるなかでは、特別区間で調整制度をつくったとしても区を超えての入所は困難になります。
“大阪市廃止=「都」構想は、百害あって一利なし”の姿が鮮明です。
■財政試算に大幅削減が盛り込まれている施設
市民プール 24カ所⇒9カ所
スポーツセンター 24カ所⇒18カ所
老人福祉センター 26カ所⇒18カ所
子育て支援活動 24カ所⇒18カ所
しんぶん赤旗 2020年9月23日付