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民意に逆らう「大阪都」構想論議(上) 日本共産党大阪府委員会政策委員会

2013年12月22日

 橋下・「維新の会」が狙う「大阪都」づくりへ、「大阪府・大阪市 特別区設置協議会」(以下、「法定協議会」)が急ピッチで会合を重ねています。

 「大阪都」は、2010年1月に橋下知事(当時)が突然かかげたものでした。一口にいえば、政令市である大阪市・堺市をつぶし、その権限と財源を「大阪都」(府)に吸い上げ、「一人の指揮官」によってやりたい放題できる仕組みをつくるものです。橋下氏は、2011年の知事・大阪市長ダブル選挙で「大阪市はつぶしません」と虚偽のビラをまき、勝利するや、「『大阪都』は民意を得た」と、ゴリ押ししてきました。  しかし、それから2年、「大阪都」をめぐる状況は、一変しています。  「大阪都」構想論議がいかに民意に逆らうものか。2回にわけて問題点を探ります。

1、堺市長選挙に示された民意――「大阪都ノー」

 「大阪都」をめぐる「民意」を、誰の目にも鮮やかにしたのは秋の堺市長選挙でした。

「大阪都」論戦は勝負あり

 橋下氏は、堺市をつぶさなければ「大阪都」はできない、「今回は質の違う総力戦」と叫び、全国から国会議員、地方議員総動員で市長選に臨みました。
 しかし、橋下氏らの「大阪都」論戦はたいへん稚拙なものでした。
 ――すでに「大阪都」の「制度設計(パッケージ案)」をだしていながら、市長選では一言もふれませんでした。語ればボロがでるとみたのでしょう。逆に、橋下氏は、「メリット・デメリットがわからないのだから、市長選に負けても『都構想が悪い』とならない」と初めから逃げを打っていました。
 ――「大阪都」の理由づけはコロコロかわりました。「政令市はもうダメ」論に始まって、「オリンピックを呼べる大阪に」「『大阪都』に入らないと、堺が孤立する」「堺に『都庁』をもってくれば発展する」。その一つ一つが論破されていきました。
 ――最終盤、「大阪都は最後は『住民投票』で決まります」といいだしました。しかし、橋下氏がタウンミーティングでクルクル説明を変えたことや、昨夏住民投票は「区割り」を問うだけ。「大阪都」の是非は問われない≠ニのべたことが暴露され、吹き飛びました。
 堺市民の良識の前にペテンは通用せず、「維新」は大差で敗れました。「大阪都ノー」の「民意」は鮮明でした。

堺市長選ショックで戦略変更へ

 市長選惨敗を受け、「維新」は「大阪都」戦略を手直しします。
 「毎日」の報道などによると、10月に開いた「都構想推進本部会議」にだされた内部文書では、橋下代表に対する市民の評価は「権力への挑戦者(大阪人好み)」から「権力者へ(大阪人嫌い)」に変わったとあります。
 そして、「大阪都」の「住民投票」に「敗北すれば大阪維新壊滅」だと危機感をあらわにして、こんな手をうちだします。
 ――これからは、「維新色をできるだけ排除」して、経済界や著名人で「任意団体」をつくり、「非維新、政治無関心層も巻き込む」。
 ――「都構想そのもの」ではなく、「再編の向こう側」にある「夢」を訴える。
 ――そのため24区ごとに運動をおこす。
 目先を変え、どんな策を弄しても「大阪都」はやりぬく構えを見せています。

2、府民的にも「大阪都」は「反対」が「賛成」を上回る

 大阪府民の世論も大きく変化しています。11月の「朝日」調査では、「大阪都」にたいする「反対」が初めて「賛成」を上回りました。これと軌を一に橋下市長の支持率も、知事時代79%、ことし2月の61%から、今回は49%と初めて5割を割りました。
 橋下・「維新」と「大阪都」の正体が見抜かれつつあることのあらわれです。

橋下・維新のもとで、大阪のくらしと経済はより悪化した

 第1に、「大阪都」は、府民のくらしを立て直すものではまったくありません。
 橋下氏が知事就任以来5年半、「大阪都」の提起から3年近く、府民所得の落ち込み、失業者数、非正規労働者の増大などがいずれも全国ワーストクラスになるなど、くらしと大阪経済はより悪化しています。「市政改革プラン」による市民サービス削減が強行され、公明党の大阪市会議員ですら、「橋下さんのおかげで、生活が良くなったと感じている大阪市民はいるのか。みんな『派手なサーカスはもういい。パンをくれ』と思い始めている」と語りました(「産経」昨年9月30日付)。
 日本政策投資銀行関西支店は2月、「大阪における百貨店業界の展望」で、梅田をはじめ大阪の百貨店の店舗面積が2年間で1・5倍に増えたのに、売上高が増えない。その主因は「消費者の給与水準が上昇せず、消費性向も低下」にあると分析しました。
 賃金が上がらず、福祉は切り捨てられ、庶民のくらしは悪化し、それが「商都大阪」を冷え込ませている。ところが、橋下氏も、「大阪都」構想も、ここにはメスをいれません。逆に、福祉はさらに削り、官民の賃金引き下げ競争をあおりたてるばかりです。

りんくうゲートタワービルとWTCの失政を「二重行政」に求めるペテン

 第2に、「二重行政」論のペテンです。橋下氏は、「二重行政」のムダの典型として、りんくうゲートタワービル(府)とWTCビル(大阪市)の失敗をあげます。しかし、これは実態とかけ離れています。
 ――りんくうゲートタワービルも、WTCも、もとは関西財界・大企業による企画が行政にもちこまれたものでした。
 ――両者とも、当時の「大阪湾ベイエリア開発計画」のなかに位置づけられました。その背景には、「10年間に630兆円」を国内公共事業に使うという「日米構造協議」があり、需要見込みのない巨大プロジェクトが次々と計画され、破たんしていきました。
 ――この巨額のムダと浪費に、「なんでも賛成」してきたのが「オール与党」です。
 メスをいれるべきは、こうした政治の歪みこそです。ところが、「大阪都」構想は、それらがすべて「しくみ」の問題だとすりかえ、真の責任と原因を帳消しにするのです。

「大阪都」の名による「なんでも民営化」「市民財産切り売り」論への批判

 第3に、橋下・「維新」が「大阪都」の名によって「なんでも民営化」と「市民財産切り売り」を狙っていることです。
 「維新」の顧問、堺屋太一氏によれば、彼らのいう「ニア・イズ・ベター」とは、「特別区」づくりで完結せず、「官より民」に行き着かせるもので、その先取りが「大阪都」だといいます(『「維新」する覚悟』)。それを地でいくように、橋下市長は「地下鉄民営化」案につづいて、市立幼稚園19園の廃止・民営化案を12月議会に出し、うち14園は否決されました。今度は松井知事が泉北高速鉄道の株を米ファンド(投資会社)に売却する案をだし、橋下市長は「これぞ錬金術」とのべました。しかし、この案は16日の府議会本会議において、「維新」からも4人が反対。否決されました。府民の良識が暴走を打ち破ったのです。

3、法定協議会――「大阪都」の破たんとごり押しぶりがくっきりと

 「法定協議会」では、橋下市長と松井知事の「意をくんで」だされた「制度設計(パッケージ案)」の論議がすすめられています。これは大阪市をつぶし、「特別区」を5つ、あるいは7つ設置する案とそれぞれ「北区・中央区分離案」「合体案」の計4案をだし、「事務分担」「職員体制」「財政調整」など8項目で、「大阪都」の設計図を示したものです。
 法定協議会は、わが党から山中智子大阪市議団幹事長が参加し、橋下市長、松井知事、各会派の府議・市議ら20人の構成です。
 そこでの議論の特徴を一口でいえば、「破たん」と「ゴリ押し」です。
「制度設計案」のボロが次々と

 「パッケージ案」がだされた直後から、ボロが次々とでてきます。
 マスメディアで日本共産党の質問を大きくとりあげたのが、「大阪都」による「節約効果」をめぐるウソでした。「大阪都」をつくったら「二重行政解消」で「4000億円が浮く」(松井知事)としていたのが、「パッケージ案」では、「700億円」とされました。しかし、ここには「二重行政解消」に何の関係もない「地下鉄民営化」による「効果額」なども含まれていました。市議団がそれらを除いて計算すれば、「9億4000万円」にすぎないことを試算して追及したのです。
 他にうかびあがっている問題は、主な点だけをあげても重大、かつ深刻です。
 ・国保も、介護も、情報システムも「特別区」には分けず、76事業を束ねた「一部事務組合」で担う――「区民」の声は届かず、議会のチェックもあいまいです。そもそもこれでは一体何のための「特別区」づくりなのか、根幹にかかわります。
 ・「財源」のない「特別区」――財源不足は深刻で、橋下市長が「使うべきでない」としていた「土地売却」によってやっと予算が組めるものです。
 さらに「財政調整」は「都区協議会」でやるといいますが、結局は「都」のいいなりになる危険性が強いものです。
 ・「特別区」は職員も、庁舎も不足する――「パッケージ案」では、「5区案」で500人、「7区案」で2200人もの職員が不足するとしました。庁舎も「民間ビルを借り上げる」とされ、10以上のタコ足庁舎となるところもあり、住民は右往左往します。
 ・大阪府が「財政再生団体」に転落する――府(都)に大阪市の借金を移すと残高8兆円に。国が計算方法の変更を認めないと、府は新たな借り入れが制限され、福祉やくらし切り捨てが国に迫られる危機に直面します。
 ――126本の法令改正がなければ、「大阪都」ができない――地方交付税の算定基準変更や「一部事務組合」についての「特例」設置など、総務省の回答でも、大きな疑問符が投げかけられています。

すべて小手先でとりつくい、「5区案」論議に流し込む

 しかも、「法定協議会」の議論の進め方のひどさです。
 毎回の「法定協議会」では、自民、民主からも「大阪都」そのものへの異論、批判があいつぎます。しかし、会長の浅田氏(維新・大阪府議会議長)は、それは「済んだ問題」「協議の対象外」と封殺します。
 また、「節約効果」額が問題にされると、「大阪都」で長期的に経済効果があることを「有識者会議」をつくって検討してもらうと、新たなペテン策をだす。「特別区」間での「財産」格差が問題にされると、「財産管理」も「特別区全体でやる」といいだす。「法改正」が間に合わないと指摘されると、「事務処理特例条例でも対応できる」(橋下氏)といいだす――あらゆる問題を小手先の「修正」でのりきろうとしています。
 こうした乱暴な議論のうえに、12月6日の法定協議会では「財政シミュレーション」が出されました。狙いは「7区案」より、「5区案」の方がマシという数字をはじきだすためのものですが、橋下氏は、「そろそろ5区案にまとめて論議を」と、何が何でも「住民投票」へこぎつけようと必死です。

府民丸ごとにかかわる大問題なのに「住民投票」は大阪市民だけという矛盾

 さらに、「大阪都」構想論議の大問題は、ことは大阪府民丸ごとにふりかかる重大な制度変更なのに、いまの大阪府政と府財政がどう変質するのか。正面から議論されないこと。また大阪市民以外は、はじめから「住民投票」のらち外に置かれていることです。(続く)

次回は新年1月12日付――「制度設計(パッケージ案)」「5区案」の問題点をさらに掘り下げます(2013年12月22日付「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2013年12月22日

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