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府政の実態から考える橋下・維新の反動性 最終回 日本共産党大阪府議会議員団.宮原威

2012年11月25日

全壊の危険のある旧WTCへの全面移転に固執

「最悪『全壊』も」との見出しが躍った咲洲庁舎

 「咲洲庁舎は最悪『全壊』も」。10月15日付の週刊誌「AERA」に、こんな見出しがおどった。
 咲洲庁舎とは、もちろん橋下前知事時代に、大阪府が買収した旧WTCビルで、つい先日までは、西日本一の高さを誇った超高層ビルである。ビルの建設者は、大阪市や関西の銀行団などがつくった第3セクターだったが、2008年7月に平松邦夫大阪市長(当時)が、この三セク会社の再建断念を公表していた。1100億円を超える巨額の建設費がかかっていただけに、一時は銀行団も一定の損失を覚悟していた。
 そこに「救世主」のように登場したのが橋下知事(当時)である。彼は、「明石の方向に、大阪再生の光が見えた」と、旧WTCビルへの大阪府庁舎の全面移転を計画した。府議会では2008年9月、09年2月の2回にわたって反対の意見が強く、09年2月府議会では、府庁舎移転・ビル買収の両議案とも否決された。
 当時、銀行団の中心は三井住友であった。三井住友の副頭取の中野建二郎氏は、関西経済同友会の代表幹事に就いていたが、関西経済同友会名で全府会議員に、WTCビルへの府庁移転に、賛成か反対かを問うアンケートを送った。

震度3で360カ所損傷し支出はすでに132億円

 府議会内部では、自民党が分裂し、「自民党維新の会」という新しい会派がつくられ、地方選での報復を、ちらつかせる橋下氏の脅しに自民・民主・公明の各党が屈した形で、09年10月、大阪府庁舎の移転は否決されたが、ビルの買収は可決されるという“ねじれ現象”が起こった。当時、橋下氏はWTCビルを中心とした咲洲地区を、「関西の宝石箱」と言ったが、大阪府職員2千人が入ったのに、一般のテナントは撤退し、空床面積は1万6700平方bも増加した(表1)。
 その後、3・11の東日本大震災では、震度3にもかかわらず、最大2・7bも揺れ、それは10分以上、続いた。天井や床など360カ所が損傷し、この補修も含め、大阪府の支出はすでに132億円にのぼっている。ビルの揺れは、周期がゆっくりした長周期地震動によるものだが、これは、日本共産党府議団が、当初から指摘していた。
 ビルの耐震性についてつくられた専門家会議の委員をつとめた、福和伸夫・名古屋大学院教授は、昨年8月、「最悪の場合、全壊する可能性」を指摘し、一時は橋下氏も「全面撤退も考える」と言わざるを得なかったが、その後、発言は撤回され、庁舎全面移転の意図を松井知事も引き継いでいる。

国の補助金に頼り、借金増やして「黒字」に

 橋下氏は、「大阪府を黒字にした」と思われている。確かに、08年度104億円、09年度311億円、10年度257億円、11年度105億円と、4年間で777億円の黒字になっている。
 しかし、表2を見ていただきたい。橋下・松井府政の4年間と、前太田府政の4年間を比較すると、年平均647億円、4年間で2588億円も収入は増えている。特に、国からの交付税と国庫支出金は、4年間でなんと、6560億円も増えている。
 橋下氏が、「財政非常事態宣言」をして、第3次の救命救急予算、小学校の警備員予算など、府民施策を削減したのが、4年間で約1125億円である。その上に、国からの地方交付税と国庫支出(補助)金が6500億円以上増えて、777億円の黒字を出して、どこが自慢できるだろうか。
 表3で見るように、リーマンショック前は大阪の総生産の伸び率は全国より低く、リーマンショック後の落ち込みは、全国より大きい。これが表2の実質税収の8%の落ち込みとなって現われている。
 この連載のA(11月4日付)、B(同18日付)で書いたように、大型開発や大企業誘致では、大阪経済は活性化しないし、府財政も好転しない。
 大阪府の借金は、太田府政最終年の5兆8288億円(2007年度末)から6兆378億円(11年度末)へと、2090億円増えている。
 橋下・「維新の会」が国政のっとりを狙っている今、この4年間の橋下・松井府政の罪を、国民に知らせるのは急務である。
(みやはら・たけし)(2012年11月25日付「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2012年11月25日

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