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シリーズ これが自治体のやることか 橋下「改革」の現場から C新婚家賃補助制度廃止 都市問題解決へ拡充すべきなのに

2012年07月14日

 問答無用で市民いじめと暮らし破壊を進める大阪市の市政改革プラン。すでに4月から新規募集が停止されていた新婚世帯向け家賃補助は現行制度が事実上廃止され、分譲住宅購入者に対する住宅ローンの利子補給の制度を導入する方向が示されました。「大阪市が誇る新婚家賃補助事業を守れ」と復活を求めていた関係者に怒りの声が広がっています。

事実上の廃止あまりに早く

 「こんなに早く廃止が決まるなんて…」。大阪市淀川区内で美容院を営む小倉悟さん(35)=仮名=と妻の香奈さん(25)が言葉を詰まらせます
 今年1月に区役所に婚姻届けを出したものの、「まだ間に合うから」と手続きが遅れ、気が付いたら時すでに遅し、申請締め切りの3月末が過ぎていました。
 「補助が受けられれば生活の足しになり、貯金にも回せるねと喜んでいました」と香奈さん。「いまは高い家賃を払うために働いているようなもの。消費税が増税されればかなりきついです。補助が受けられないと本当に困る」と悟さんは悔しさをにじませます。

子育て世代苦しめるやり方

 新婚家賃補助事業は橋下市長の方針で、「若年層に対するより有効な施策に転換する」とされ、今年4月に新規募集が停止。先月まとめた「市政改革プラン案」によると、現受給者への補助支給が終わる2018年に制度終了、今後は分譲住宅購入者へのローン金利補給制度へと変わってしまいます。
 「共働きでも若い世代は非正規雇用が増え不安定な家計状態です。一番弱い部分を狙い打ちするようなやり方だ」。若年世帯ですぐに住宅購入できる人はほんの一握りと厳しく批判するのは大阪市内の不動産仲介業者の声です。同補助事業は新婚夫婦にとってだけでなく、市内不動産業者にとっても大きな役割を果たしてきたと指摘。「公営住宅への入居は倍率が高くて到底無理。住宅購入資金もない若年層にとって、家賃が収入に占める割合は大きい。“子どもが笑う大阪に“というのに子育て世代を苦しめるやり方はあんまりです」と語ります。
市内定着の事実を無視して

 市が家賃補助を廃止する理由に挙げたのが「家賃を補助しても若者は定着しない」などというもの。しかし大阪市都市整備局がまとめた新婚家賃補助制度についての分析によると、▽受給者の4割以上が市外からの転入▽6年間補助を受けた世帯の約9割が継続して市内に居住―などの結果が明らかに(右グラフ)。

 同整備局は「若年層の市内定住促進に効果があると認められる」と市の廃止方針が示された下でも同制度の継続が必要との認識を示し、市政改革プラン(素案)に対するパブリックコメントでは、補助廃止方針に対して寄せられた411件の市民意見のうち反対が372件と90%が反対でした。


 日本共産党の寺戸月美議員は6月の市議会計画消防委員協議会で、新婚世帯向け家賃補助制度を取り上げ、同制度が若年世代の定着に効果があることを強調。00年から10年までに子育て世代の年間可処分所得が29歳以下で25万円、30〜39歳で22万円減少していると指摘、「新婚家庭家賃補助制度は現役世代への有効な施策」と述べ、制度の継続と新規募集を直ちに開始するよう求めました。

制度があったから転入した

 結婚5年目のある主婦(32)は、「補助制度があったから結婚と同時に大阪市へ転入しました。子育てを通じて地域につながりもできずっと住み続けたいと思っています。若者を応援する素晴らしい制度をなくさないで」と訴えます。
 「新婚家賃補助制度は利用者が増加しているように、確実に若者の住居の安定に貢献しています」。大阪府借地借家人組合の船越康亘さんはそう指摘し、「人口減少は大阪市にとって新たな都市問題。とりわけ子どもを増やすことは世代のアンバランスを解消する上でも重要です。家賃補助制度は廃止どころかさらに拡充すべきです」

大阪市の新婚家賃補助制度
 大阪市の新婚家賃補助制度は1991年、人口減少が続く若年層の定着と活気あるまちづくりを進めることを目的に創設。民間賃貸住宅に居住する新婚世帯に対し、初期の住居負担軽減するためのもので、満40歳未満の新婚世帯(所得制限あり)に対し、月額2万円を上限に最長で6年間家賃の一部を助成します。年間約3万世帯が補助を受けています。(2012年7月15日付「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2012年07月14日

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