>>>ひとつ前のページへトップページへ

主人公は子どもたち 大阪の教育良くする共同を

2012年06月02日

日本共産党大阪府委員会
「教育改革提言」で懇談会

 日本共産党大阪府委員会は19日、大阪市西区民センターで「子どもの成長と教育を語り合う懇談会」を開きました。橋下徹大阪市長が率いる維新の会の「教育基本条例」への対案として同府委員会が4月に発表した「教育改革提言」(別項)に基づく対話と共同を広げる一歩にしようと開かれたもので、教育関係者や市民、同党の小選挙区候補や地方議員など約140人が参加。大阪電気通信大学名誉教授の野中一也さんがゲスト発言しました。

「子どもの最善の利益」から反撃を
宮本衆院議員が国会報告

 主催者あいさつした勝田保広副委員長は、「提言」発表の前後に教育・法律・福祉など各分野関係者、労働組合、自治体関係者との対話を重ねてきたことを紹介。柳利昭書記長が「教育改革提言」の内容を報告し、「教育基本条例案」「職員基本条例案」の制定や具体化を許さない取り組みを呼び掛け。維新の会大阪市議会議員団が提出を撤回した「家庭教育支援条例案」、橋下大阪市長や松井一郎知事が近現代史を学ぶ「学習教育施設」の設置を打ち出していることを批判しました。
 国会報告した宮本岳志衆院議員(文部科学委員)は、橋下・維新の会の「教育基本条例」について、まず、「子どもの権利条約が定めた『子どもたちの最善の利益』にとってどうなのか」と問い掛け、「条例はさまざまな問題を教職員に持ち込むが、なによりの被害者は子どもたち。そこから反撃に転じるのが提言の立場」と語りました。

願いに逆行する市政改革プラン

 宮本氏は、国連子どもの権利委員会が繰り返し勧告してきたように、日本では貧困が子どもたちの教育を受ける権利を大きく阻害し、過度な競争教育が子どもたちを傷つけ、安心していられない場所に学校がなっていると指摘。「この問題の解決こそ大切なのに、条例はまったく逆行している」と述べ、橋下大阪市政の「市政改革プラン(素案)」は勉学条件切り下げのオンパレードで、子どもや市民の願いに応えようという姿勢がないと批判しました。

発達障害を親の責任と押し付け

 維新の会大阪市議団の「家庭教育支援条例案」は、発達障害を親の責任だとする非科学的なもので、国民的非難を受けて撤回を余儀なくしたが、背景には大きな動きがあると宮本氏は指摘しました。
 同条例案の土台にあるのは「親学」で、その推進へ、超党派の議員連盟(会長・安倍晋三元首相)が結成され、公明党の山口那津男代表も参加していることや、民主党の平野博文文部科学大臣も自民党の推進派議員の質問に、「できることでバックアップしていきたい」と答弁していることを紹介しました。

少人数学級推進や正規教員増を

 議会報告で朽原亮府議は、「貧困と格差が学力格差を生む悪循環を断つためにも、基礎的な学力を身に付けていくことが必要」で、少人数学級の拡大、正規教員の増員を求めました。4月施行の「学校教育基本条例」「府立学校条例」を具体化させないために奮闘する決意を表明しました。
 井上浩大阪市議は、教育関係2条例案をめぐる論戦や各会派の態度などを報告し、「首長に職務権限を超えて教育振興基本計画をつくる権限に当たるもので、政治介入が本質」と報告。「撤回を求めて頑張る」と語りました。
 城勝行堺市議団長は、「教育基本条例案」「職員基本条例案」を否決した論戦などを紹介し、堺市議会での維新の会の策動を許さない取り組みを強めたいと述べました。


親の願いは教育環境の向上
教育に穴をあける°エ下氏
参加者意見交換

 意見交換では、「提言」を歓迎するとともに、子どもと教育を守る運動を府民との共同でさらに進める大切さを訴える発言などが相次ぎました。
 新婦人府本部の杉本和事務局長は、2条例案に反対する運動が若い子育て世代にも広がったと述べ、「競争教育が何を生み出していくのか、どこに歪みがあるのか、共に話し合い、育ち合っていきたい。親の所得や状況に左右される社会であってはならない」として引き続き運動を強めると発言。大阪市東成区在住の母親は、「学校選択制と中学校給食についての教育フォーラムに参加したが、なぜ選択制にするのか説明がない。親が学校を選ぶのではなく、勉強が分かる授業を学校でやるべき。子どもの教育環境を良くしてもらうのが一番の願い」と語りました。
 大阪教育文化センターの柚木健一事務局長は、「つながりあう」をキーワードにした10年の「子ども調査」を紹介しながら、「受け入れられているという受容感情があれば、子どもたちは積極的に生きていく。貧困、競争が不登校や中退にもつながっている。子どもの生存権を正面にすえて考えることが大切」と語りました。
 大阪教職員組合の田中康寛委員長は、「橋下府政は教育予算を924億円削減し、音楽や美術、社会の授業で講師が足りないなど『教育に穴があく』事態が広がっている。教育基本法は改悪されたが、憲法は厳然と存在している。教育の条理を無視した、とんでもない教育をはね返す力にしたい」と話しました。
 橋下氏らが打ち出した近現代史の「学習教育施設」について大阪歴史教育者協議会委員長の小牧薫さんは、「『両論併記』というが、本来博物館は歴史研究で吟味されたものを展示し、見た者が自らの認識を高めるものであり、両論併記はありえない。科学的な認識に基づくものなのか、検証して暴走やめさせたい」と発言しました。


「子どもたちの全面発達こそ」
「もろ手挙げて『提言』に賛成」
野中大阪電気通信大学名誉教授の発言(大要)

 私の教え子が大阪にいっぱいいて、卒業式や入学式になると「胃が痛い」と言います。でも、子どもには夢とロマンを語って頑張っています。私は78歳ですが、そんな彼らに共感しています。
 「提言」の特徴の第一は、教育の条理、教育学の原理に基づいて書かれていることです。橋下さんや維新の会の考えは片面発達観≠ナ、子どもたちを型にはめて競争させる。これは必ず破たんします。
 教育は全面発達です。「提言」は、教育の主人公は子どもであり、一人一人がかけがえのない個性を持っています。同じ形に伸びるのではありません。一人一人に働き掛けて可能性を伸ばすという、全面発達観に基づいた「提言」であり、現場の先生に勇気を与えています。
 さらに、みんなで力を合わせて子どもを人間として大切にする教育という「提言」の提案は教育の条理です。人間は競争して一人一人になるのではありません。つながり合って、つながりの中で力を得て全面発達していくのです。人間はつながりあって生きる存在です。競争で子どもは伸びるという維新の会の教育観には、つながり合う、助け合うということがありません。現場では競争させられ、卒業式・入学式になると周りから監視され、口元までチェックされる。橋下さんには良心があるのでしょうか。厳しくただしたいと思います。
 二つ目に、「民意を反映する教育委員会制度」という提案です。これは非常に大事です。戦前は天皇の命令で教育行政がやられ、戦争に協力しました。戦後、自分たちがつくった教科書に墨を塗りました。恥ずかしくないでしょうか。このことを恥と感じない人がいまの政治の中心になっています。
 こういうことをやらないためには教育は政治から独立して、政治的中立性を持たなければなりません。一般行政から独立して教育委員会制度をもつ。これを中心的に進めた南原繁は、彼は戦争中にものが言えなかったことに良心的な痛みを持って、戦後、発言を続けました。教育委員会公選制を提案するなど、真理と理性を追い求めた結実が、教育委員会制度です。その民主的伝統は歪められてきましたが、本流はまだ生きています。そのことを想起し、いろんな知恵を出し、日常的につながりを広げていくことが大事です。
 この「提言」で、大阪の教育で子どもたちに未来が見えるという提案をしています。3年連続で定員割れの府立高校を廃校にするといいますが、かつて府知事だった黒田了一さんは、「十五の春は泣かせない」を掲げ、地域の子どもは地域の高校に行き、そこで切磋琢磨して大阪の未来をつくってきました。あらためて「十五の春を泣かせない」高校制度をつくり、未来を少しでも広げることが大事だと思います。
 教室の中、ぎすぎすして監視されるのではなく、ユーモアが生まれ、笑いが出てくる。子どもたちがこんな川柳をつくったことがあります。「親を見りゃ僕の将来知れたもの」。でも、それを聞いて親も反省する。子どもと、隣近所の人と語り合って、子どもに未来を託そうではありませんか。私は「提言」にもろ手をあげて賛成します。


維新2条例の具体化許さず
すべての子に学力の保障を
日本共産党府委員会の「教育改革提言」

 日本共産党大阪府委員会が4月17日発表した「教育改革提言」は「教育の主人公は子どもたち――みんなで力をあわせて、子どもを人間として大切にする教育を」と題しています。
 「提言」は、橋下・維新の会の「教育基本条例」について3点を指摘。@国連・子どもの権利委員会が「高度に競争的な教育制度のストレスなどが子どもの発達を歪めている」と繰り返し是正勧告を求めている中で、子どもたちを行き過ぎた競争教育に追いやるものA教職員を処分の濫用で脅して支配・統制し、首長への絶対服従を迫るものB首長と議会が「教育振興基本計画」を制定する権限を握るなど、教育に無制限に介入できるようにするもの――と明らかにしています。
 その上で具体的な提言として、@2条例の具体化を許さないAすべての子どもに学力を保障する学校をつくるB経済的な理由で学業を断念する子どもをつくらないC子どもを真ん中に教職員らが力を合わせる学校改革を進めるD民意を反映する教育委員会へ教育委員選挙と教育会議を行うE卒業式・入学式での「国旗・国歌ルール」をつくり、国旗・国歌の扱いは各学校で決め、国歌斉唱を決めても「歌わない自由」を保障することを提案しています。
(2012年6月3日付け「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2012年06月02日

トップページへ ひとつ前のページへ ページ最上部へ
ご意見・ご要望はこちらから